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第8章
陸編 『陸と空の鼓動』2
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「空、待たせたな」
ぱっと顔をあげた空は、もういつもの顔になっていた。優しく見守るようないつもの笑顔だ。そうか俺はずっとこの笑顔に癒されていたのだ。いつも当たり前のように傍にいてくれたから意識していなかった。
「陸……」
さっきまでの不安そうな表情はもう消えていたので、いつもの俺なら見過ごしていただろう。
「空、悪かったな」
「えっ何? 改まって」
空は意外そうな表情を浮かべていた。あんまり不思議そうに見るもんだから分が悪くなってぶっきらぼうになってしまう。
「なんだよ」
「いや……だって……陸がそんな風に殊勝に謝るなんて珍しいから」
そういってクスっと首を竦めて笑う笑顔が可愛かった。
あれ?こんな表情でいつも笑っていたのか……一体今まで俺は空の何を見ていたのか。
「いや、空が元気ないから、気になっただけだ」
「そんなことないよ。空きっ腹にワインを飲んだから、ぼんやりしていたんだ」
違うと思った。今日の俺は一体どうしたのだろう?
空に対してもっともっと踏み込んでみたくなっていた。
「空……そうじゃないよ。いつも言いたいことを隠して、俺にばかり合わせることないんだよ」
「陸?」
空にとって酷だったかもしれないが、図星だったらしく顔色がさっと曇った。
「何が心配だった? 俺ならちゃんと来たぞ。その……遅れたことは悪かったが」
「陸……」
「話してみろよ。たまには俺だってお前の役に立ちたい」
「ははっ陸がそんなこと言うなんて」
「茶化すなよ。本気で心配してる」
そこまで言うと流石に空も観念したのか、ため息交じりに話し出した。
「あ……うん、陸がさ……もう帰ってこなかったらどうしようって考えていた」
「え? なんだよそれっ」
「だって洋くんのこと……気に入っていたし」
空はしまったという表情を浮かべて再び俯いてしまった。テーブルの上に置かれた手が小刻みに震えていた。
この時になって急に俺の方も気が付いたことがあった。
「もしかして……洋に嫉妬していたのか」
「ちっ違うよっ! もう気にするなっ、忘れてくれ、ほら早く注文しようよ」
慌ててバタバタとメニューを取り出す空の仕草が、妙に可愛い。
いつも落ち着いて穏やかで優しい空が、俺の一言にこんなにも動揺して頬を赤らめ頭を振っている様子に、なぜか俺の頬までかっと熱くなり、胸の奥がドキッと騒めいてきた。
なんだ……これは。この感情は……
ぱっと顔をあげた空は、もういつもの顔になっていた。優しく見守るようないつもの笑顔だ。そうか俺はずっとこの笑顔に癒されていたのだ。いつも当たり前のように傍にいてくれたから意識していなかった。
「陸……」
さっきまでの不安そうな表情はもう消えていたので、いつもの俺なら見過ごしていただろう。
「空、悪かったな」
「えっ何? 改まって」
空は意外そうな表情を浮かべていた。あんまり不思議そうに見るもんだから分が悪くなってぶっきらぼうになってしまう。
「なんだよ」
「いや……だって……陸がそんな風に殊勝に謝るなんて珍しいから」
そういってクスっと首を竦めて笑う笑顔が可愛かった。
あれ?こんな表情でいつも笑っていたのか……一体今まで俺は空の何を見ていたのか。
「いや、空が元気ないから、気になっただけだ」
「そんなことないよ。空きっ腹にワインを飲んだから、ぼんやりしていたんだ」
違うと思った。今日の俺は一体どうしたのだろう?
空に対してもっともっと踏み込んでみたくなっていた。
「空……そうじゃないよ。いつも言いたいことを隠して、俺にばかり合わせることないんだよ」
「陸?」
空にとって酷だったかもしれないが、図星だったらしく顔色がさっと曇った。
「何が心配だった? 俺ならちゃんと来たぞ。その……遅れたことは悪かったが」
「陸……」
「話してみろよ。たまには俺だってお前の役に立ちたい」
「ははっ陸がそんなこと言うなんて」
「茶化すなよ。本気で心配してる」
そこまで言うと流石に空も観念したのか、ため息交じりに話し出した。
「あ……うん、陸がさ……もう帰ってこなかったらどうしようって考えていた」
「え? なんだよそれっ」
「だって洋くんのこと……気に入っていたし」
空はしまったという表情を浮かべて再び俯いてしまった。テーブルの上に置かれた手が小刻みに震えていた。
この時になって急に俺の方も気が付いたことがあった。
「もしかして……洋に嫉妬していたのか」
「ちっ違うよっ! もう気にするなっ、忘れてくれ、ほら早く注文しようよ」
慌ててバタバタとメニューを取り出す空の仕草が、妙に可愛い。
いつも落ち着いて穏やかで優しい空が、俺の一言にこんなにも動揺して頬を赤らめ頭を振っている様子に、なぜか俺の頬までかっと熱くなり、胸の奥がドキッと騒めいてきた。
なんだ……これは。この感情は……
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