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第8章
光線 1
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ホテルの一室で林さんに僕の躰を渡した。
「あっ……あ…」
「辰起くん……今日は随分乱れているな」
林さんが欲望を満たし、途端に僕の上に突っ伏して来た。
「んっちょっと重たい。ねぇ、ねぇまだイケル? 」
「おいおい……俺をいくつだと? もう無理だよ」
「なんだつまらないの。もっと乱れたい気分なのに」
「何かあったのか。さっき洋くんと話してから少し変だぞ? 」
「なんでもないよっ! 」
バーのパウダールームでの出来事、思い返すのも腹が立つ。
あいつ……涼よりもムカツク奴だ。なんだよ。あんな風に父親に大事そうに守ってもらって、きっと今までもあんな調子で、周りから宝物のように大切にされてきたんだろう。
穢れを知らないあの躰、それを武器に。
僕みたいに男に抱かれるなんてこと、きっとあいつには想像も出来ない世界なんだろう。そう思うと、あの穢れを知らない躰を滅茶苦茶にしてやりたくなってくるものだ。
「ねぇ林さんは、洋のことも抱きたいって思ってる? 」
「えっ何言ってんの? あの子はそういう対象じゃないよ。なんていうかもっと高いところにいるっていうか。確かにヌードを撮りたいとは言ったけど、それは犯したいってことじゃないんだよ。本当に芸術的的にそそられるんだよ。彼は儚げに見えてそうじゃない……人を惹きつけてやまない何か強い光のようなものを持っているんだよ。そういう意味でそそられるってわけ」
「……もういいよ。あいつの話なんて」
全くもって、林さんにも幻滅だ。
僕の躰はこんな風に簡単に抱く癖に、あいつは崇高だっていいたいの? 本当に酷い、酷い。それというのも全部あいつのせいだ。あいつを傷つけるのは、林さんには出来ない。この役立たず!
「もういいから、シャワーでも浴びて、早く帰ってよ」
「おいおい……辰起くんそれはないだろう。少しは労わってくれよ」
****
ホテルのロビーに身を潜めるように僕は立っていた。
あいつが今日の夕方の便で帰国するということは事前に調べて分かっていた。ホテルの部屋はあのままあいつの名義で借りられたままになっていたから、ここに再び現れるとしたら今日しかない。荷物がまだそのままになっているだろうから、きっとここにやってくる。そう確信していた。
「ははっ来た……ほら見ろっ! やっぱり来たじゃないか」
早朝から何杯目のコーヒーを飲んだだろう。そんな中、ホテルのロビーにあいつが舞い戻って来た。
「眩しい……」
朝日を背負ったその背中には、何故か天使の羽が生えているような気がして、眩しくて凝視できなかった。同時にそんな幻想をしてしまう自分自身に激しく嫌悪感を覚えた。
「くそっ! 絶対に穢してやる! メチャクチャにしてやるからな」
「あっ……あ…」
「辰起くん……今日は随分乱れているな」
林さんが欲望を満たし、途端に僕の上に突っ伏して来た。
「んっちょっと重たい。ねぇ、ねぇまだイケル? 」
「おいおい……俺をいくつだと? もう無理だよ」
「なんだつまらないの。もっと乱れたい気分なのに」
「何かあったのか。さっき洋くんと話してから少し変だぞ? 」
「なんでもないよっ! 」
バーのパウダールームでの出来事、思い返すのも腹が立つ。
あいつ……涼よりもムカツク奴だ。なんだよ。あんな風に父親に大事そうに守ってもらって、きっと今までもあんな調子で、周りから宝物のように大切にされてきたんだろう。
穢れを知らないあの躰、それを武器に。
僕みたいに男に抱かれるなんてこと、きっとあいつには想像も出来ない世界なんだろう。そう思うと、あの穢れを知らない躰を滅茶苦茶にしてやりたくなってくるものだ。
「ねぇ林さんは、洋のことも抱きたいって思ってる? 」
「えっ何言ってんの? あの子はそういう対象じゃないよ。なんていうかもっと高いところにいるっていうか。確かにヌードを撮りたいとは言ったけど、それは犯したいってことじゃないんだよ。本当に芸術的的にそそられるんだよ。彼は儚げに見えてそうじゃない……人を惹きつけてやまない何か強い光のようなものを持っているんだよ。そういう意味でそそられるってわけ」
「……もういいよ。あいつの話なんて」
全くもって、林さんにも幻滅だ。
僕の躰はこんな風に簡単に抱く癖に、あいつは崇高だっていいたいの? 本当に酷い、酷い。それというのも全部あいつのせいだ。あいつを傷つけるのは、林さんには出来ない。この役立たず!
「もういいから、シャワーでも浴びて、早く帰ってよ」
「おいおい……辰起くんそれはないだろう。少しは労わってくれよ」
****
ホテルのロビーに身を潜めるように僕は立っていた。
あいつが今日の夕方の便で帰国するということは事前に調べて分かっていた。ホテルの部屋はあのままあいつの名義で借りられたままになっていたから、ここに再び現れるとしたら今日しかない。荷物がまだそのままになっているだろうから、きっとここにやってくる。そう確信していた。
「ははっ来た……ほら見ろっ! やっぱり来たじゃないか」
早朝から何杯目のコーヒーを飲んだだろう。そんな中、ホテルのロビーにあいつが舞い戻って来た。
「眩しい……」
朝日を背負ったその背中には、何故か天使の羽が生えているような気がして、眩しくて凝視できなかった。同時にそんな幻想をしてしまう自分自身に激しく嫌悪感を覚えた。
「くそっ! 絶対に穢してやる! メチャクチャにしてやるからな」
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