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第7章
重なれば満月に 3
しおりを挟む「んあっ……」
安志さんの逞しい手が僕を背後から抑えつけ、僕の胸をまさぐって来る。何度も触れられたそこは、指先が霞めるだけで尖り出してしまう。
男なのに、こんな風になってしまうなんて……変だ。でも安志さんにならいい。安志さんにだったら、僕のすべてを差し出したくなる。
なんでなんだろう。こんな気持ち……今まで誰にも抱かなかったのに。
「あっ……あっ」
尖った乳首を反らす度に、小さく細切れに喘ぎ声が出てしまう。
「涼、すごく感じてくれているんだな。嬉しいよ」
耳元に熱い息と共に安志さんの吐息が届けば、脳まで痺れるように朦朧としてしまう。その手が胸板から脇腹に降り下半身にまで到達する頃には、僕のものも、これ以上ないほど高まってしまっていた。
そして背後から僕の尻に、安志さんの力強いものがぴたりとあたっているのを感じる。
安志さんも僕も今日は余裕がない。だって病室で二回もじらされてしまった方から。
安志さんが指で輪を作り、お湯の中で僕のものを扱いていく。お湯の心地よさと相まって、とてつもなく気持ち良い。
「涼、挿れてもいいか」
「ここで?」
「んっ我慢できそうにもない」
「でもお湯が入りそうで怖いよ」
お湯の中でやるのは未体験だ。お湯が一緒に入ってきてしまいそうで、少し怖いのが本音だ。そう正直告げると、安志さんの両手で腰をふわりと浮かされた。
「分かった。じゃあこうしよう」
「あぁっ」
思わず倒れそうになってバスタブに両手をついた。なんて卑猥な姿勢なんだ。でも、もう何がなんだかわけがわからないほど、ただ安志さんが欲しくて仕方がなくなっていた。
尻を付き出すようなあられもない姿が浴室の曇った鏡に映っているのが、ひどく恥ずかしい。
お湯とソープで開かれた窄まりに、安志さんの逞しいものをあてられると、思わずぶるっと震えてしまった。
久しぶりだ。
安志さんとつながるの。
「ん……んっ」
すぐに一つになるために、安志さんのものがじわじわと僕の躰の中に入って来る。僕はそれを力を抜いて受けいれていく。安志さんが好きだから、一つに重なりたいのは僕の望みでもある。
胸にいくつも散らされた赤い花弁が、白く曇った浴室内で、まるで雪の中に咲く花のようだ。
それからすぐに何度も何度も繰り返される挿入。僕はバスタブに手をつき、そのすべてを呑み込むように受け入れていく。
逞しいものを抜き差しされるたびに、僕の内壁はずるずると擦られ、それがひどく感じるポイントにあたっていくので、脚が震えるほど気持ちが良くて、困ってしまう。
徐々に挿入が早くなり、一気に共に、上へ上へと登りつめていく。
「はっ……はっ」
「涼っ」
「安志さん……んっ…あっ…んっ…」
息継ぎもままならないほど、険しく一気に高められていく。もう理性なんて飛んで行ってしまって、僕もその挿入にあわせて腰を揺らしてしまった。
そうして温かいものが体の奥深くに広がっていくのを感じた瞬間、僕も安志さんの手の中で、大きく弾けた。
「はー」
息が苦しくて深呼吸していると、安志さんが倒れそうな躰をがしっと抱き留めてくれる。
もう……もう、のぼせそうだ。
お湯に……いや、安志さんに!
今日の安志さん、いつもより激しくて、すごく熱かった。こんな風に激しく求められるのは悪くない。僕も同じ気持ちだから。
「安志さん……キスして」
じんじんとした名残を感じながらも、内部に入り込んでいたものを抜かれると、ぽたぽたと白い液体が内股を濡らした。
「涼、無理させたな……大丈夫か」
もう一度湯船に二人で浸かった。もう僕は疲れ果て、安志さんの胸に顔を埋めもたれてしまった。今……安志さんも僕もきっと熱病にかかったかのように、赤い顔をしていることだろう。
「躰も髪も俺が洗ってやるから、涼はもたれていろ」
「ん……」
安心できる。ここは……もたれながら安志さんの胸に耳をあてると、ドクドクと逞しい心音が聴こえて来て、心地よい疲れを感じた僕は、ついうとうととしてしまう。
こんな昼下がりに、二人で風呂に入って思う存分抱き合って、本当に幸せだ。
好きな人と躰を重ねるということの意味。
幸せを作り分かち合う行為ということなのか。
本当に男同士だからとか、恥じることなんてない。
何も恥じることはない。これでいい。これが、僕の選んだ道だ。
夢の中でいつも泣いている洋兄さんにも、僕のことを教えてあげよう。
洋兄さん……
もしも誰かに無理矢理抱かれてしまった辛い体験があったとしても、どうか過去の出来事に負けないで。
今の洋兄さんには、丈さんという大切な人がいるのだから。
幸せも悲しみも深く分けあいたい人がいるということ……
それは洋兄さんが自分の力で生きている証でもあるのだから。
洋兄さん……ずっと鏡の向こうの世界にいたけれども、僕たちはもう一緒だよ。僕は安志さんに抱かれ、幸せをもらい作っていく。
だから…
僕が幸せなら、洋兄さんも幸せになれるといい。
洋兄さんが幸せなら、僕も幸せになれる。
双子のように似すぎているのに、性格や雰囲気が正反対でもある僕達は、そうやって二人共に生きて行けばいい。
想いは一つ。
『この世で幸せになりたい』
ただそれだけのことなのだから。
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