重なる月

志生帆 海

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第7章 

下弦の月 4

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 涼の唇はとても美味しかった。
 俺はこれが欲しかった。ずっと飢えていた。

 最近ゆっくり会えていなかったので、こんな風に触れるのは久しぶりだ。まずいな、こんな病室で……くそっ止まらなくなる。

 誰が来るかも分からない場所で、これ以上キスをしたら俺の気持ちが制御出来なくなってしまうのは、分かりきっていた。

「涼、もう離れろ」

 涼の両肩に手をかけて躰を離そうとすると、逆に涼は俺の背にしがみつくように手をまわして来た。しかも、その肩が小刻みに震えていた。様子が少し変だ。泣いてるのか……何故?

「涼、どうした?」
「ん……ごめん。なんか……どうしていいのか分からなくなって」
「うん?」
「今回のこと……洋兄さんが苦しんでいるのが痛いほど分かるんだ。僕のここに共鳴するように響いて来る。でも、僕はどうしたらいいのかわからない。Soilさんは洋兄さんのこと恨んでいるようだし……僕たちはどうしてこんな風に絡まってしまったのだろう。洋兄さんもSoilさんのことも大事なのに……」

 胸に拳をあてながら、涼が必死に涙を堪えて訴えてくる。

 本当に涼の言う通りだ。

 涼にとって陸さんは良き先輩で、涼が思わず怪我を庇ってしまう程、信頼している人物だ。
俺が妬いてしまうほど信頼していた。

 そして洋もだ。陸さんから憎まれることを受け入れ、その上で彼を庇って、俺に殴られて……全くこの従兄弟たちは、顔だけじゃなく、考え方まで似ている。

「なぁ……涼はあまり心配するな。まずは自分の躰を治すことを考えろ。洋には丈さんがついているし…それに俺も頑張るよ。今もキスですごく元気もらったから前向きな気持ちでいっぱいだよ」
「え……」
「さっきの涼からのキス、凄く嬉しかった」

 そう涼の耳元で囁いてやると、途端に涼が頬を真っ赤に染めていく。そんな涼が愛おしくて可愛くて、今度は俺からキスをしようと思って、涼の躰を引き寄せ顎を掴んで上を向かせた。

 怪我が痛々しいが、この傷が治るまでは俺だけの涼でいてくれると思うと、涼には申し訳ないが少し嬉しくもあった。そんな気持ちを込めて深いキスを重ねた。涼の方も薄く唇を開いて受け入れてくれる。

 それだけじゃやっぱり物足りなくて、涼のパジャマの上から可愛い小さな粒を探すように、手で撫でてやった。擦るように緩やかな刺激の後は、その部分をきゅっと指先で摘まむようにして緩急つけて薄い胸をもみほぐして行く。

「あっ……」

 あぁ……俺だけにこんな姿見せてくれているんだ。そう思うと嬉しさが込み上げてくる。舌を涼の口腔内にいれて、撫でるようにかき混ぜていく。

「んっ……」

 涼の甘い声が俺のなんとか保っていた理性を簡単に破壊してしまう。

 涼にキスしながら横目で病室のカーテンがしっかり閉まっていることを確認し、涼をもう一度深く抱きしめる。そしてその可愛い小振りな尻に手をまわし、両手で揉みこんでいく。程よく筋肉がついて、でも揉めばほぐれて柔らかくなっていく可愛いヒップだ。

「あっ……あ、安志さん」
「涼、馬鹿だな。さっきキスなんてしてくれるから、俺……止まらない」
「でも……ここじゃ……」
「少しだけでいい。もう少しだけ触れてもいいか……躰痛いか」
「いや……躰は大丈夫だよ……でも病室だし」
「ごめん。涼にもう少しだけ触れたい」

 自分でも驚くほど強引に、涼を真っ白な糊のきいたシーツの上に押し倒した。少しでいいんだ。猛烈に涼が不足している。俺は水を求めるように涼の唇を夢中で吸った。

 それから涼のパジャマの裾をまくりあげ、上半身を剥き出しにして、刺激でぷっくりと尖りつつある乳首に舌を這わせた。

「んっー」

 涼が顎をカクンと逸らし切なげな声を上げた。そのまま細い腰を浮き上がるほど抱き上げ、胸に顔を埋める。程よく筋肉のついたしなやかな肢体をかき抱けば、男なのにまろやかな甘い香りが立ち込めるような気がした。

 まずい……もうやめなくては……そう思うのに甘美な魅惑は俺を虜にしてしまう。

 躰を反らされてツンと立ち上がった乳首に吸い付いて舌先で捏ねまわし、薄いパジャマ姿の涼の下半身に手を降ろし股間をまさぐれば、涼のものは外から見てもすぐに分かるほどになっていた。俺の方ももう限界近くになってしまっていた。

「涼のここ、勃ってるな」
「あっあ……んっ…」

 涼がもう堪らないといった乱れて切なげな甘い声を上げた時だった。

「……入っていいか」

 ドアをノックする音と共に男性の低い声がしたので、冷や汗が一気に吹き出し、躰をガバッと大きく離して飛び起きた。

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