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第7章
期待と不安 3
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「安志、俺達……日本に戻るよ」
「えっ本当か」
そんな予感はあった。なんとなくもうすぐ洋がまた近くに戻って来るんじゃないかって。
「いつだ? 」
「一週間後だ。あれから丈と相談して日本で暮らすことになったんだ」
「良かったな」
「ありがとう。うん、良かったと思う」
「また詳しく飛行機の時間とか決まったら連絡してくれ」
「分かった、朝からごめんな。涼によろしくな、そろそろ起こせよ」
「ははっ」
やっぱり涼が傍にいることお見通しか。でも涼もこのニュースを聴いたら喜ぶだろう。涼にとって洋は双子の兄弟みたいな関係だから。十歳も歳は離れているが、洋はすごく若く見えるし涼は年よりは大人びているから、本当に双子のように見えるよ。
でも色気は洋の方かな。いやいや涼もこれから俺が開拓して……なんてニヤニヤしていると、涼に声を掛けられた。
「安志さんいい知らせ? ニヤニヤしちゃって」
寝起きでぼんやりしている涼が、甘い笑顔で微笑みかけて来た。
「起きたのか。躰は大丈夫か。どこか痛いところはないか」
「ふふっ安志さんって過保護だな」
そう言いながら涼は大きく伸びをした。両腕を頭上に伸ばして、しなやかな躰がしなるように……そんな姿が豹みたいで色っぽい。
「んーよく眠ったらすっきりしたよ、それで誰から? 」
「洋だよ」
「えっ洋兄さん、なんて? 」
「来週、日本に戻って来るそうだ」
途端にぱーっと涼が破顔した。
「やった! 嬉しい! それでどこに住むの? 丈さんと一緒? 」
興奮した様子でベッドから身を乗り出していた。
涼の心から歓迎している様子にほっとする。洋があの日逃げるようにソウルへ行った時からは考えられない程、俺も洋も幸せになったな。洋の唯一の肉親とも呼べる涼が、笑顔で迎えてくれることに感謝した。洋はもう一人きりじゃない。本当に良かった。
****
一週間後の日曜日。あと少しで丈と洋が帰国する。
俺と涼は出迎えのために、また羽田空港国際ターミナルへやってきた。
「ねぇ丈さんってどんな人だろう。洋兄さんの相手だから、きっと凄くカッコイイ人だろうね」
「ん? あっ……そうだな」
男同士褒め合ってもなぁと思いつつ、丈がいなかったら今頃洋はどうなっていたか分からない。洋を全面的にサポートしてくれる丈の存在はやっぱり大きいことを実感している。
「で、今日は洋兄さんが僕の家、丈さんが安志さんの家に泊まるってことでいいよね」
「うーむ、なぁやっぱり変じゃないか。それって」
「そう? いいんだよ。二人はいつも一緒なんだから、たまには僕が洋兄さんを独り占めしても」
いやいや、それはいいが……何で俺の家に丈がと思うんだが、涼の決定には逆らえないもんだと苦笑してしまった。俺は本当に涼に甘い。でも可愛くてつい言うことを聞いてしまう自分が好きだったりもして……参ったな。こんなデレデレで示しがつかないだろ。
「涼、ほら、あの飛行機だろ、到着ゲートに行くぞ」
二人で見上げた雲ひとつない青空には、真っ白な機体が輝いていた。
あの日、身も心もボロボロで逃げるように旅立った洋を、俺は一人で見送った。
今日は涼と二人で、洋の帰国を待ち遠しく思っている。
あの飛行機には洋と丈が乗っている。
そう思うと眩しいくらい輝いて見えたんだ。
冬の澄んだ空気を胸一杯に吸い込んでから、心の中でそっと呟いた。
お帰り……洋。やっと帰って来られたな。
「えっ本当か」
そんな予感はあった。なんとなくもうすぐ洋がまた近くに戻って来るんじゃないかって。
「いつだ? 」
「一週間後だ。あれから丈と相談して日本で暮らすことになったんだ」
「良かったな」
「ありがとう。うん、良かったと思う」
「また詳しく飛行機の時間とか決まったら連絡してくれ」
「分かった、朝からごめんな。涼によろしくな、そろそろ起こせよ」
「ははっ」
やっぱり涼が傍にいることお見通しか。でも涼もこのニュースを聴いたら喜ぶだろう。涼にとって洋は双子の兄弟みたいな関係だから。十歳も歳は離れているが、洋はすごく若く見えるし涼は年よりは大人びているから、本当に双子のように見えるよ。
でも色気は洋の方かな。いやいや涼もこれから俺が開拓して……なんてニヤニヤしていると、涼に声を掛けられた。
「安志さんいい知らせ? ニヤニヤしちゃって」
寝起きでぼんやりしている涼が、甘い笑顔で微笑みかけて来た。
「起きたのか。躰は大丈夫か。どこか痛いところはないか」
「ふふっ安志さんって過保護だな」
そう言いながら涼は大きく伸びをした。両腕を頭上に伸ばして、しなやかな躰がしなるように……そんな姿が豹みたいで色っぽい。
「んーよく眠ったらすっきりしたよ、それで誰から? 」
「洋だよ」
「えっ洋兄さん、なんて? 」
「来週、日本に戻って来るそうだ」
途端にぱーっと涼が破顔した。
「やった! 嬉しい! それでどこに住むの? 丈さんと一緒? 」
興奮した様子でベッドから身を乗り出していた。
涼の心から歓迎している様子にほっとする。洋があの日逃げるようにソウルへ行った時からは考えられない程、俺も洋も幸せになったな。洋の唯一の肉親とも呼べる涼が、笑顔で迎えてくれることに感謝した。洋はもう一人きりじゃない。本当に良かった。
****
一週間後の日曜日。あと少しで丈と洋が帰国する。
俺と涼は出迎えのために、また羽田空港国際ターミナルへやってきた。
「ねぇ丈さんってどんな人だろう。洋兄さんの相手だから、きっと凄くカッコイイ人だろうね」
「ん? あっ……そうだな」
男同士褒め合ってもなぁと思いつつ、丈がいなかったら今頃洋はどうなっていたか分からない。洋を全面的にサポートしてくれる丈の存在はやっぱり大きいことを実感している。
「で、今日は洋兄さんが僕の家、丈さんが安志さんの家に泊まるってことでいいよね」
「うーむ、なぁやっぱり変じゃないか。それって」
「そう? いいんだよ。二人はいつも一緒なんだから、たまには僕が洋兄さんを独り占めしても」
いやいや、それはいいが……何で俺の家に丈がと思うんだが、涼の決定には逆らえないもんだと苦笑してしまった。俺は本当に涼に甘い。でも可愛くてつい言うことを聞いてしまう自分が好きだったりもして……参ったな。こんなデレデレで示しがつかないだろ。
「涼、ほら、あの飛行機だろ、到着ゲートに行くぞ」
二人で見上げた雲ひとつない青空には、真っ白な機体が輝いていた。
あの日、身も心もボロボロで逃げるように旅立った洋を、俺は一人で見送った。
今日は涼と二人で、洋の帰国を待ち遠しく思っている。
あの飛行機には洋と丈が乗っている。
そう思うと眩しいくらい輝いて見えたんだ。
冬の澄んだ空気を胸一杯に吸い込んでから、心の中でそっと呟いた。
お帰り……洋。やっと帰って来られたな。
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