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第7章
プロローグ
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五年ぶりに戻る日本──
緊張していないといったら嘘になる。
俺の両親はもう……とうの昔にこの世を去ってしまったので、待ってくれている肉親がいるわけではないが、大事な友と可愛い従兄弟。そしてまだ会わぬ丈の両親や兄弟が暮らす場所だ。
丈は俺を自分の家に連れて行くと言っているが、それが吉と出るか凶と出るか分からない。俺と丈の関係は世間で認められるようなものではない。特に日本ではまだまだ偏見の目で見られることの方が多いだろう。まして丈の家は由緒正しい寺だと知って、怯んでいるのも事実だ。とにかくいろいろな期待と不安が混ざった心境の帰国となった。
「洋、大丈夫だ。そんなに緊張するな」
「そうだね……」
飛行機の座席で窓から広がる空を一心に見つめる俺のことを、丈はしっかりと掴まえてくれる。
もう絶対に丈から離れない。
そう思えるから、丈が行きたい場所へ俺も一緒に行く。
いつももらってばかりの愛だったから、少しづつでも与える愛を持ってみたい。そう思っている。
新しい一歩には、常に勇気が伴う。
だから自分を信じて……丈を信じて真っすぐに歩むだけだ。
俺とお前の未来のためにも。
硬く握りしめて強張った手を、ブランケットの下で丈が優しく解してくれる。
「そのままの洋でいい。だから何も心配するな」
そんな力強い一言が、俺をいつも勇気づけてくれる。
緊張していないといったら嘘になる。
俺の両親はもう……とうの昔にこの世を去ってしまったので、待ってくれている肉親がいるわけではないが、大事な友と可愛い従兄弟。そしてまだ会わぬ丈の両親や兄弟が暮らす場所だ。
丈は俺を自分の家に連れて行くと言っているが、それが吉と出るか凶と出るか分からない。俺と丈の関係は世間で認められるようなものではない。特に日本ではまだまだ偏見の目で見られることの方が多いだろう。まして丈の家は由緒正しい寺だと知って、怯んでいるのも事実だ。とにかくいろいろな期待と不安が混ざった心境の帰国となった。
「洋、大丈夫だ。そんなに緊張するな」
「そうだね……」
飛行機の座席で窓から広がる空を一心に見つめる俺のことを、丈はしっかりと掴まえてくれる。
もう絶対に丈から離れない。
そう思えるから、丈が行きたい場所へ俺も一緒に行く。
いつももらってばかりの愛だったから、少しづつでも与える愛を持ってみたい。そう思っている。
新しい一歩には、常に勇気が伴う。
だから自分を信じて……丈を信じて真っすぐに歩むだけだ。
俺とお前の未来のためにも。
硬く握りしめて強張った手を、ブランケットの下で丈が優しく解してくれる。
「そのままの洋でいい。だから何も心配するな」
そんな力強い一言が、俺をいつも勇気づけてくれる。
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