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第6章
新しい一歩 1
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「洋どうした? 松本さん、かなり酔っていたみたいだが、大丈夫だったか」
「うん、Kaiがついてるから大丈夫そうだ」
一階に戻ると丈がパーティーの片づけをしていた。散々四人で飲んで食べて、テーブルの上がぐちゃぐちゃだ。
「俺も手伝うよ」
「ありがとう。洋は酔っ払っていないのか」
「酷いな。今日は大丈夫だ」
丈の横に立って一緒に皿を洗う。こんな当たり前の日常が、あの当時どれほど恋しかったか。きっと松本さんも日本で何かくじけそうな程嫌なことがあって、ソウルに逃避してきたような気がする。
最初は分からなかった。何故そんな目で俺のことを見るのか……でも羨ましそうでありながら寂しそうな目には見覚えがあった。ああいう目を俺もしていたから、分かった。
「やっと泣けたんだよ……松本さんは」
「そうか.……よかったな」
「うん……涙を流すことが出来て良かった、本当に哀しい時は、涙も凍ってしまうからね」
「そうだな」
俺は今まで自分のことに精一杯で周りを見る余裕なんてこれっぽっちもなかった。だが丈と一緒にいると凪のような穏やかな時間を感じられ今まで出来なかったことが出来るよ。
日本へ帰ったらこの時間はどうなるのか……一抹の不安があるが、丈さえ傍にいてくれれば乗り越えられると思っている。
「どうした?」
「いや……あっそういえばKaiと松本さんには泊まってもらうつもりで部屋を用意したから、伝えてくるね」
そう言いながら二階へあがろうとすると、丈が怪訝な顔をした。
「何? 」
「今行くのは、お邪魔じゃないのか」
「えっどういうこと? 」
「洋も二人のことを、そのつもりで引き合わせたのだろう? 」
「えっえ……?」
「洋は鈍感だな、気が付かなかったのか」
「あっそうなのか! Kaiはもしかして松本さんのことが好きなのか」
なんだかパズルのピースが当てはまったようにストンと考えがまとまった。だからKaiはさっきからずっと松本さんのことを意識していたのか。
さっきなんでKaiが突然二階に来たのか分からなかったし、いつものKaiらしくない真面目な顔だったから不思議だった。
なるほど。そうか……そうなのか。
Kai……とうとう君に本気で好きな人が出来たのか。
「でも松本さんは、同性相手なんてどうだろうか」
「くくっおいで、洋は可愛いな。それに……彼もまんざらでもないようだが」
丈が俺の手を掴み部屋に引き戻した。そして、そのまま丈の腕の中にすっぽり抱かれた。
「えっ……そうなの? 」
「まぁ今日すぐには何もないと思うが、今行くのはかなりお邪魔だろう」
「うっ……うん」
「だから洋はここでじっとしてろ」
そう言いながら丈が俺を背後から抱きしめ、俺のうなじに口づけをしてくる。温かい温もりを感じれば、すぐに躰に熱が帯びるのを感じる。
「丈、やめろよ。くすぐったい……」
「ふっ……気持ちいいの間違いだろう? 」
「丈、上の階に二人がいるし……今日は駄目だ」
「だが今日はクリスマスじゃないか。去年のクリスマスは出張が入ってしまって、一緒にいれなくて洋はいじけていたじゃないか」
「な、なんでまたその話を……」
そう言いながら、丈が俺の躰をゆっくりと服の上から愛撫し始めると、指が通った所が火照ってくるのを感じる。
「んっ……」
次第にセーター越しに触られるのがもどかしくなってきてしまう。丈は素知らぬふりをしているので、思わず丈の指をセーターの裾に案内してしまった。
「洋……誘ってるのか」
「意地悪だ」
「流石にここじゃまずいな。バスルームへ行こう」
「えっ? うん……」
そのまま丈に手を引かれて、バスルームへ連れていかれる。
パタンー
ガチャンー
ドアを閉める音と共に扉の鍵をかける音がした。
「これで誰も入って来られない。洋……声を出すなよ」
男っぽい丈の声に躰がゾクゾク震える。俺もさっきから丈が欲しくなってしまってしょうがない。
丈に抱かれることに慣れた俺の躰は、一度疼きだしてしまうと、その熱がなかなか収まらない。こんな躰にしたのは俺の丈だ。
丈だから、丈にだけ……俺も躰を開いていく。
「うん、Kaiがついてるから大丈夫そうだ」
一階に戻ると丈がパーティーの片づけをしていた。散々四人で飲んで食べて、テーブルの上がぐちゃぐちゃだ。
「俺も手伝うよ」
「ありがとう。洋は酔っ払っていないのか」
「酷いな。今日は大丈夫だ」
丈の横に立って一緒に皿を洗う。こんな当たり前の日常が、あの当時どれほど恋しかったか。きっと松本さんも日本で何かくじけそうな程嫌なことがあって、ソウルに逃避してきたような気がする。
最初は分からなかった。何故そんな目で俺のことを見るのか……でも羨ましそうでありながら寂しそうな目には見覚えがあった。ああいう目を俺もしていたから、分かった。
「やっと泣けたんだよ……松本さんは」
「そうか.……よかったな」
「うん……涙を流すことが出来て良かった、本当に哀しい時は、涙も凍ってしまうからね」
「そうだな」
俺は今まで自分のことに精一杯で周りを見る余裕なんてこれっぽっちもなかった。だが丈と一緒にいると凪のような穏やかな時間を感じられ今まで出来なかったことが出来るよ。
日本へ帰ったらこの時間はどうなるのか……一抹の不安があるが、丈さえ傍にいてくれれば乗り越えられると思っている。
「どうした?」
「いや……あっそういえばKaiと松本さんには泊まってもらうつもりで部屋を用意したから、伝えてくるね」
そう言いながら二階へあがろうとすると、丈が怪訝な顔をした。
「何? 」
「今行くのは、お邪魔じゃないのか」
「えっどういうこと? 」
「洋も二人のことを、そのつもりで引き合わせたのだろう? 」
「えっえ……?」
「洋は鈍感だな、気が付かなかったのか」
「あっそうなのか! Kaiはもしかして松本さんのことが好きなのか」
なんだかパズルのピースが当てはまったようにストンと考えがまとまった。だからKaiはさっきからずっと松本さんのことを意識していたのか。
さっきなんでKaiが突然二階に来たのか分からなかったし、いつものKaiらしくない真面目な顔だったから不思議だった。
なるほど。そうか……そうなのか。
Kai……とうとう君に本気で好きな人が出来たのか。
「でも松本さんは、同性相手なんてどうだろうか」
「くくっおいで、洋は可愛いな。それに……彼もまんざらでもないようだが」
丈が俺の手を掴み部屋に引き戻した。そして、そのまま丈の腕の中にすっぽり抱かれた。
「えっ……そうなの? 」
「まぁ今日すぐには何もないと思うが、今行くのはかなりお邪魔だろう」
「うっ……うん」
「だから洋はここでじっとしてろ」
そう言いながら丈が俺を背後から抱きしめ、俺のうなじに口づけをしてくる。温かい温もりを感じれば、すぐに躰に熱が帯びるのを感じる。
「丈、やめろよ。くすぐったい……」
「ふっ……気持ちいいの間違いだろう? 」
「丈、上の階に二人がいるし……今日は駄目だ」
「だが今日はクリスマスじゃないか。去年のクリスマスは出張が入ってしまって、一緒にいれなくて洋はいじけていたじゃないか」
「な、なんでまたその話を……」
そう言いながら、丈が俺の躰をゆっくりと服の上から愛撫し始めると、指が通った所が火照ってくるのを感じる。
「んっ……」
次第にセーター越しに触られるのがもどかしくなってきてしまう。丈は素知らぬふりをしているので、思わず丈の指をセーターの裾に案内してしまった。
「洋……誘ってるのか」
「意地悪だ」
「流石にここじゃまずいな。バスルームへ行こう」
「えっ? うん……」
そのまま丈に手を引かれて、バスルームへ連れていかれる。
パタンー
ガチャンー
ドアを閉める音と共に扉の鍵をかける音がした。
「これで誰も入って来られない。洋……声を出すなよ」
男っぽい丈の声に躰がゾクゾク震える。俺もさっきから丈が欲しくなってしまってしょうがない。
丈に抱かれることに慣れた俺の躰は、一度疼きだしてしまうと、その熱がなかなか収まらない。こんな躰にしたのは俺の丈だ。
丈だから、丈にだけ……俺も躰を開いていく。
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