重なる月

志生帆 海

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第6章

逸る気持ち 3

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【R18】

 ドアを閉めるなり丈にぎゅっと抱きしめられキスをされた。丈の腕の中にすっぽりと収まって、温かい唇がぴったり合わさると途端に胸が熱くなる。日本でも幸せで満たされた気分だったのに、この温かさは格別だ。

「んっ……ふっ…」

 もしかして俺と少しの間でも離れているのが、丈も寂しかったのか。空港で再会してからずっとそんな少し逸る丈の熱い気持ちを感じていた。

「丈も、寂しかった? 」
「ふっそうだな……私も洋が隣にいることに慣れすぎたようだ」
「たった三日間だよ? 俺がいなかったのは」
「あぁでも何かが足りないような、そんな日々だった」
「俺もだ、もう俺の隣には丈がいることが当たり前になってしまったよ」

 喋りながら丈がどんどん俺の服を脱がす。シャツのボタンもいつの間にかすべて外れ、開かれた素肌に丈の温かい手が潜り込んでくる。手のひらでまさぐるように躰に触れられると、頬がどんどん火照ってくるのが自分でも分かった。

「んっ……丈、まだ昼だよ? 」
「駄目か」
「……駄目じゃない、俺もそういう気分だ」

 そのまま口づけを深めながらベッドに二人で雪崩れ込んだ。丈の首筋に抱きつくように顔を寄せると、ふわっとシャワージェルの良い香りが漂ってきた。

「あれ? 朝、シャワー浴びたのか」
「あぁ昨日は酔ってそのまま寝てしまったからな」
「そうか、いい香りするな」

 丈が欲しい。今日は無性にそんな気分だ。履いていたズボンもあっという間に脱がされ裸になった俺に丈が覆い被さろうとして来たので、やんわりと手で停めた。

「待って」
「洋? 」
「……今日は俺が」
「分かった」

 丈の躰を枕の方へ押し倒し、そのまま俺が丈の躰に跨った。それから丈が自分のシャツを脱いでいる間に、丈の下半身に顔を近づけた。ズボンのベルトを外し、もう高まってきているものを取り出して、そっと口先に含んだ。こんな風に普段は積極的に出来ないのに、今日は何故だろう。

「うっ……洋? 」
「何? 」
「珍しいな。洋がこんなに積極的なのは」
「駄目か……そういう気分なんだ」
「ふっ」
「何だよ? 」
「洋も寂しかったんだな……ということは、安志くんと涼くんにちゃんと会えたのだな。そしてあてられたのか? 」
「会えたは会えたけど……別に…そんなんじゃないっ」

 全く丈はいつも冷静に嫌な所を突いてくる。でも丈の指が優しく頭を撫でてくれると、その仕草にほっとして甘えたくなってしまう。そうだよ……本当は仲睦まじい安志と涼の様子に、ちょっとだけ寂しくなってしまった。日本で幸せだった頃の両親の話や思い出の品に触れたせいなのか、俺の大事な丈と、この人生の一分一秒でも長く共に過ごしたいと思ってしまったのは。

 だから早く丈に会いたくなったんだ。

 丈の指先が後ろに伸びてくる。

「あぁっ」
「少し慣らすから待て」
「んっ……くっ…」

 潤滑剤をつけた丈の指が入り込んでくると、ぞくぞくとした期待と快感が躰の隅々にまで駆け巡っていく。いつもと違う体勢のせいで、指が躰の奥深くに入り込んでくるようで躰がぶるっと震える。

「んっ……行く前もしたのに」
「そうだな……この印、まだ残っていたな」

 丈の指が鎖骨の下あたりに付けられたキスマークに触れた。日本へ旅立つ前に抱き合った時のものだ。

「あっこれ……そういえば涼に見つかってしまって恥ずかしかったんだぞっ」

 文句を言いたくてつい口を滑らせてしまった。

「んっ? こんな場所見せたのか」
「あっ…………銭湯で」
「銭湯? 涼くんと二人でか」
「えっと……その」

 まずい。これ以上話すと、丈が不機嫌になりそうだと焦った。
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