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第6章
穏やかな時間 2
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今……俺は銭湯の中で涼と約五年ぶり向き合っている。溺れそうになった川からドタバタで、まだちゃんと再会の喜びを分かち合えていない。それになんだか照れくさくて。
「涼、外の風呂も気持ち良さそうだよ。行かないか」
「いいね、銭湯って気持ちがいい所だね」
古びた銭湯だが露天風呂になっていたので、涼を誘ってそこに浸かってみた。ふぅ……やっと二人きりだ。
「涼、やっと会えたな。五年ぶりかな。君に会うの」
「洋兄さん、うん……日本にいると思って必死に探したんだよ。僕」
「そうかごめん。あの後、いろいろあって今ソウルで暮らしているんだよ」
「うん……安志さんから聞いた」
「でもまさか涼が俺より先に安志と会っているなんて驚いたよ。それに……あっ……」
ちらっと湯の中で揺らいでいる涼の躰を見て、思わず赤面してしまった。どうやら安志と涼はもう深い仲になったようだ。涼の健康的な若々しい躰に数か所、散りばめられた跡があった。
安志の奴、涼の躰のあんな場所に……あんなに。鮮やかさから推測するとおそらく昨夜だろう。二人に起きた出来事を想像するとのぼせそうだ。
「洋兄さん? 顔……真っ赤だよ。大丈夫? 」
「あっああ、その安志と……涼は」
俺が聞こうとしていることを察したらしく、今度は涼の顔がポンっと火が付いたように赤くなった。面映ゆさそうにもごもごとしている。
「洋兄さん……僕……その」
「うん、涼は安志と付き合っているんだね。安志から聞いたよ」
「う……うん、その……」
「涼で良かった。あいつの幸せそうな顔みていたら分かるよ。二人がどんなに幸せなのか」
「洋兄さんの大事な幼馴染なのに、ごめんなさい」
「涼……なんで謝る? 俺は嬉しいのに、俺も涼に話さないとな」
「洋兄さんの恋人のこと?」
「んっ……ソウルで俺と暮らしているんだ。丈というんだ。」
「丈さん……」
「そのうち会えるよ。きっと」
「あっ」
涼が俺の躰を見つめてはっとした表情を浮かべた。
「何?」
「あの……洋兄さん、ここ丈さんにつけてもらったの? 」
そういって指さされた首筋。
「あっ……」
そこは旅立つ前に丈と抱き合った時、首筋にピリッと痛みを感じた場所だ。
きつく吸われた場所は、あとで花びらのように俺の躰に鮮やかに咲くだろうと思ったが、やはり痕になってしまっていたのか。なんだか涼に見られて恥ずかしくなった。
「涼もついているからお互い様だよ」
「えっ!?」
慌てて、涼が自分の躰を見つめて、キスマークを発見して驚いていた。
「わぁ……こっこんな所にまで!いっ…いつの間に」
「ふふっ」
「もう!洋兄さん意地悪だな」
「お互い様だよ。そして俺達……同じ道だな。まさか涼が……とちょと複雑だけど」
「そうだね、でも後悔していない。すごく自然に好きになっていたから」
「涼、安志と深く結ばれて良かったな。涼と安志の幸せそうな顔を見ることが出来てよかったよ。日本に戻ってみて良かった」
「洋兄さん……ありがとう、日本に会いに来てくれて」
いつも寂しかった俺なのに、今は離れていても近くに感じる丈という存在のお陰で、こうして幼馴染と従兄弟のカップルの幸せそうな様子を見ることが出来た。これ以上いると幸せにのぼせそうだ。
「おいっ。そろそろあがろうぜ! 」
その時、安志の少し怒ったような声が露天風呂の入り口から響いた。
あ……すっかり忘れていた。
「悪い! 今行くよ! 」
これでいい。自然の流れ、俺を幸せへと導いてくれるようになった。もう抗わなくていい。この流れに乗って行けばいい。そう思うとお湯で温まったこともあり、心までしっかりほぐされた気分になった。
「涼、外の風呂も気持ち良さそうだよ。行かないか」
「いいね、銭湯って気持ちがいい所だね」
古びた銭湯だが露天風呂になっていたので、涼を誘ってそこに浸かってみた。ふぅ……やっと二人きりだ。
「涼、やっと会えたな。五年ぶりかな。君に会うの」
「洋兄さん、うん……日本にいると思って必死に探したんだよ。僕」
「そうかごめん。あの後、いろいろあって今ソウルで暮らしているんだよ」
「うん……安志さんから聞いた」
「でもまさか涼が俺より先に安志と会っているなんて驚いたよ。それに……あっ……」
ちらっと湯の中で揺らいでいる涼の躰を見て、思わず赤面してしまった。どうやら安志と涼はもう深い仲になったようだ。涼の健康的な若々しい躰に数か所、散りばめられた跡があった。
安志の奴、涼の躰のあんな場所に……あんなに。鮮やかさから推測するとおそらく昨夜だろう。二人に起きた出来事を想像するとのぼせそうだ。
「洋兄さん? 顔……真っ赤だよ。大丈夫? 」
「あっああ、その安志と……涼は」
俺が聞こうとしていることを察したらしく、今度は涼の顔がポンっと火が付いたように赤くなった。面映ゆさそうにもごもごとしている。
「洋兄さん……僕……その」
「うん、涼は安志と付き合っているんだね。安志から聞いたよ」
「う……うん、その……」
「涼で良かった。あいつの幸せそうな顔みていたら分かるよ。二人がどんなに幸せなのか」
「洋兄さんの大事な幼馴染なのに、ごめんなさい」
「涼……なんで謝る? 俺は嬉しいのに、俺も涼に話さないとな」
「洋兄さんの恋人のこと?」
「んっ……ソウルで俺と暮らしているんだ。丈というんだ。」
「丈さん……」
「そのうち会えるよ。きっと」
「あっ」
涼が俺の躰を見つめてはっとした表情を浮かべた。
「何?」
「あの……洋兄さん、ここ丈さんにつけてもらったの? 」
そういって指さされた首筋。
「あっ……」
そこは旅立つ前に丈と抱き合った時、首筋にピリッと痛みを感じた場所だ。
きつく吸われた場所は、あとで花びらのように俺の躰に鮮やかに咲くだろうと思ったが、やはり痕になってしまっていたのか。なんだか涼に見られて恥ずかしくなった。
「涼もついているからお互い様だよ」
「えっ!?」
慌てて、涼が自分の躰を見つめて、キスマークを発見して驚いていた。
「わぁ……こっこんな所にまで!いっ…いつの間に」
「ふふっ」
「もう!洋兄さん意地悪だな」
「お互い様だよ。そして俺達……同じ道だな。まさか涼が……とちょと複雑だけど」
「そうだね、でも後悔していない。すごく自然に好きになっていたから」
「涼、安志と深く結ばれて良かったな。涼と安志の幸せそうな顔を見ることが出来てよかったよ。日本に戻ってみて良かった」
「洋兄さん……ありがとう、日本に会いに来てくれて」
いつも寂しかった俺なのに、今は離れていても近くに感じる丈という存在のお陰で、こうして幼馴染と従兄弟のカップルの幸せそうな様子を見ることが出来た。これ以上いると幸せにのぼせそうだ。
「おいっ。そろそろあがろうぜ! 」
その時、安志の少し怒ったような声が露天風呂の入り口から響いた。
あ……すっかり忘れていた。
「悪い! 今行くよ! 」
これでいい。自然の流れ、俺を幸せへと導いてくれるようになった。もう抗わなくていい。この流れに乗って行けばいい。そう思うとお湯で温まったこともあり、心までしっかりほぐされた気分になった。
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