重なる月

志生帆 海

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第6章

贈り物 9

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【R18】

「涼のこと大事にする。なぁもう動いてもいいか」
「……うん」

 躰をぴったりと結合させたまま、安志さんが腰を揺らしだした。次第にその揺れは大きくなり、次に入り口ぎりぎりまで引き抜かれ、またぐっと押し入れることを繰り返し始めた。

「うっ……はっ…あぁ……」

 抜き差しのたびに息があがってしまう。溢れる快楽についていくのに必死だ。

 もう溺れそうだ。

 先ほど指で見つけられてしまった僕の感じるスポット目指して、安志さんのものが擦るように強くあてられると、もう泣けてくるほど気持ちが良くて苦しい!

「あ……そこは、いやだ。もう……」
「もう? 」
「……いっちゃう……」

 涙目になって必死に訴えると、安志さんが優しく口づけしてくれる。

「涼、可愛い……」

 僕の脚を肩にかけて、より一層結合が深まる姿勢を取らされる。

「あぁっ! こんな格好……もう無理っ」

 深く強く……僕の内側に入り込んだそれはもう熱くて熱くて、一緒に燃えてしまいそうだ。甘い快感が躰の中心から次々と湧き上がって指先まで支配する。自分の躰なのに自分のものではないようだ。気が付くと必死に震える手でシーツを握りしめていた。どこかに掴まっていないと飛ばされそうだ。

 何度かの揺さぶりと抜き挿しの後……

「すごいっ! 涼の締めつけてくる……俺ももうっ……くっ」

 安志さんが今までで一番気持ち良さそうな表情を浮かべてくれた。その瞬間躰の奥で熱いものがドクドクと弾けたのを感じた。そして、それは僕の躰の最奥へと押され入り込んで来た。

「うっ……」

 安志さんがそれを自身でかき混ぜるかのように腰を揺らすと、ぐちゅっと卑猥な音がした。

「あっ…」

 強すぎる刺激に身悶えた。もうおかしくなってしまう。これ以上は……

「もうっもう……無理だっ」

 ほっとしたのか一気に躰が脱力してベッドへ深く沈みこんでしまった。途端に安志さんのものが慌てて引き抜かれ、かかっていた体重も遠のいていった。

「ごめん! 夢中になって……中で出すなんて……無理させたっ」

 心配そうにのぞき込んでくる安志さんを見ると、息が乱れてかなり汗ばんでいた。

 お互い必死だったんだな。
 僕も汗びっしょりだ。

 なんだか、そのことがすごく嬉しかった。
 安志さんも同性を抱くのは初めてだったんだ。

「涼、大丈夫か」
「……んっ…ちょっと疲れて、ぼんやりしてた」
「そうか、心配した」
 
 もう一度ふわりと安志さんの温かい胸に抱かれる。安志さんもほっとした表情を浮かべていた。

「今日が涼のはじめてだったな」

 今更ながら、そうしみじみと言われると恥ずかしい。

「うっ……うん。安志さんしか知らない」
「涼、ごめんな」
「……なんで謝るの?」
「本当は、涼とこうなるのもっともっと先のつもりだった。まだ知り合って三か月足らずなのに。涼はまだ十八歳なのに……俺、こんなことしてしまって。でももう止まらなかった」

「安志さん、これを僕も望んでいたことだよ。安志さんが良かったから」
「嬉しいこと言ってくれるんだな。涼はいつもいつも」
「安志さんしか知りたくない。安志さんが好きだから!」
「好きだよ……涼」
「うん僕も好き」

 もう躰も限界だったのか……そんなことを何度か呟きながら、僕は深い眠りへと落ちて行った。

「おやすみ、涼」


****

 カーテンの隙間から射し込んでくる朝日に起こされた。まだ眠い。そう思って寝返りと打とうとした時、僕は昨日脱がされたはずのリネンのパジャマを着て、清潔なベッドに眠っていることに気が付いた。それに昨日汗でどろどろになったはずの躰も、今は石鹸の香がして、さらさらと気持ちいい。

「あれっどうして?」

 だるい躰と眠気に勝てずに再び瞼が閉じていく。ただとても幸せな朝だということだけは分かった。

「涼……涼」

 遠くで呼ぶ声がする。

「んっ……まだ眠い」
「そんなに眠れるって若い証拠だな。もう昼になってしまうよ」
「えっ」

 昼……?さっき朝日を浴びたはずなのに二度寝しちゃったのか。驚いてぱっと目を開けると安志さんが嬉しそうに笑っていた。

「おはよう。涼」

 爽やかな笑顔が素敵だな。

 この人に昨日僕は抱かれた。思い返すと恥ずかしさでぶわっと顔が赤くなったのを感じ、思わず布団で顔を隠してしまった。

「ふっ可愛い奴」
「安志さん……あの、その……おはよう」

 布団の中から、もごもごと朝の挨拶をする。

「涼、今日行きたいところあるか。せっかくの休日だ。涼の行きたい所へ付き合うよ。それとも、このままここで寝る?」

 ドキッとすることを提案されて、昨日の今日で無理だと頭をぶんぶん振ってしまった。あれ? 僕のこういう対応ってお子様なのかな。そうだ! 行きたいところならある。安志さんなら連れて行ってくれるだろうか。

「安志さん、僕どうしても行きたい所があるんだ」
「いいよ。どこだ?」
「あのね、洋兄さんのお母さんのお墓なんだ。僕の伯母さんになるからお参りしたくて」
「洋のお母さんのお墓? 」
「母からも頼まれているし……場所分かる?」
「うーん、俺もまだあの時中学生だったからな」
「そうなんだ……困ったな。」
「あっそうだ!実家に行って母に聞こう、ついでに涼のことも紹介したいし」
「ええっ?」

 安志さんの実家!?いきなり?

 思わずベッドから落ちそうになった。

 深い意味はないと思うのに、焦ってしまった。
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