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第5章
暁の星 2
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涼……そんな甘く潤んだ眼で見つめるなよ。断り切れないじゃないか。はぁ~参ったな。
俺は覚悟を決めて、涼のベッドに腰かけた。
「どうした? 涼」
「ん……ここに横になって」
涼はベッドの片方に身体を寄せ、俺が寝る空間を作り、ポンポンっと手でシーツを叩いた。
「あっああ」
観念して涼の言う通り、添い寝するような形で横になった。
「安志さんっ」
その途端、涼が俺にしがみついてくる。小さな子供のように、俺の腕をぎゅっと掴んでくっついてくる。
「どっどうした? 」
「さっき……なんの夢見ていたの? 」
「えっ? なんで」
「幸せそうだったから。安志さん……僕に見せたことがない笑顔だった」
「俺がそんな顔を? 参ったな……寝ながら笑うなんて、カッコ悪いなっ」
夢……?
さっきまで見ていた夢か。
もう細かい部分はおぼろげだが、船の上に立つ二人は確かに洋と丈さんだった。見つめ合いキスをしていたような気がする。そんな幸せそうな二人を見て、俺も夢の中で自然と頬が綻んだ。まさか現実にも笑っていたとはな。
「安志さんあんな顔するなんて……とろけるように幸せそうだった」
「な、なんか誤解しているのか。涼? 」
「違うっでも……僕は安志さんに我慢ばかりさせてるから」
涼の吐息が切なく甘い。
あぁそうか、甘えてるんだな。
「馬鹿だな、涼。俺がそれでいいって言ってるんだよ。涼とはこれからゆっくり涼のペースで進めればいいと思ってる。最初にそう言ったじゃないか」
しがみついてくる涼の躰をきゅっと抱きしめ、背中を撫でてやりながら、落ち着かせてやる。
「それからさ、さっきは実は洋の夢見ていたんだよ」
「洋兄さんの? 」
「あぁ恋人と幸せそうに船の上で笑っていて……それで俺もつられて」
「なんだ、そうだったのか。船の上か……僕が洋兄さんに最後に会ったのも船の上だった。頬に痛々しい青痣をつけ、寂し気に笑っていたあの洋兄さんの悲しい眼が忘れられないよ」
「あぁそうだったな」
「安志さん、洋兄さんはね、僕に『いつか涼くんが日本に来たら、その時はきっと会えるよ。きっと強い縁でもう一度会えると思うから。君がもっと大人になったらまた会おう』って言ったんだよ。そう言った癖にもう日本にいないなんて、ずるいよ」
感情が高まった涼の両目からぽろぽろと透明な滴が溢れてくるので、俺はオロオロしてしまう。これじゃまるで俺が泣かせたみたいじゃないか。
「おいっ涼っ泣くなよ」
「僕だけが……僕だけが」
「どうした?」
「洋兄さんは今本当に幸せにしているの? 僕だけが安志さんと幸せになるのが申し訳ない気がして前に進めないんだ! 僕だって、進みたいんだよっ」
ずっと燻っていた言いたいこと、思うことを言い切ったようで、涼は肩で息を荒くしていた。
涼が同じ気持ちでいてくれる。そのことが分かって、とても満ち足りた気持ちになった。同じ方向を向いている。それが嬉しい。
「涼は本当に優しいな。そうだな。俺も洋の大事な従兄弟の涼をもらうんなら、洋に一言断っておかないと後で怒られそうだな」
そんな風に口に出したら、なんだかすごく照れ臭かった。
「安志さん」
「分かったよ。少し調べてみる。現在の洋のこと」
「ほんと? 」
「あぁ仕事柄得意だから任せろっ」
「ありがとう、安志さん! 」
涼が途端に天使のような甘い笑顔になって、俺の胸に飛びついてきた。そして甘い甘い砂糖菓子のようなキスをしてくれた。
俺は覚悟を決めて、涼のベッドに腰かけた。
「どうした? 涼」
「ん……ここに横になって」
涼はベッドの片方に身体を寄せ、俺が寝る空間を作り、ポンポンっと手でシーツを叩いた。
「あっああ」
観念して涼の言う通り、添い寝するような形で横になった。
「安志さんっ」
その途端、涼が俺にしがみついてくる。小さな子供のように、俺の腕をぎゅっと掴んでくっついてくる。
「どっどうした? 」
「さっき……なんの夢見ていたの? 」
「えっ? なんで」
「幸せそうだったから。安志さん……僕に見せたことがない笑顔だった」
「俺がそんな顔を? 参ったな……寝ながら笑うなんて、カッコ悪いなっ」
夢……?
さっきまで見ていた夢か。
もう細かい部分はおぼろげだが、船の上に立つ二人は確かに洋と丈さんだった。見つめ合いキスをしていたような気がする。そんな幸せそうな二人を見て、俺も夢の中で自然と頬が綻んだ。まさか現実にも笑っていたとはな。
「安志さんあんな顔するなんて……とろけるように幸せそうだった」
「な、なんか誤解しているのか。涼? 」
「違うっでも……僕は安志さんに我慢ばかりさせてるから」
涼の吐息が切なく甘い。
あぁそうか、甘えてるんだな。
「馬鹿だな、涼。俺がそれでいいって言ってるんだよ。涼とはこれからゆっくり涼のペースで進めればいいと思ってる。最初にそう言ったじゃないか」
しがみついてくる涼の躰をきゅっと抱きしめ、背中を撫でてやりながら、落ち着かせてやる。
「それからさ、さっきは実は洋の夢見ていたんだよ」
「洋兄さんの? 」
「あぁ恋人と幸せそうに船の上で笑っていて……それで俺もつられて」
「なんだ、そうだったのか。船の上か……僕が洋兄さんに最後に会ったのも船の上だった。頬に痛々しい青痣をつけ、寂し気に笑っていたあの洋兄さんの悲しい眼が忘れられないよ」
「あぁそうだったな」
「安志さん、洋兄さんはね、僕に『いつか涼くんが日本に来たら、その時はきっと会えるよ。きっと強い縁でもう一度会えると思うから。君がもっと大人になったらまた会おう』って言ったんだよ。そう言った癖にもう日本にいないなんて、ずるいよ」
感情が高まった涼の両目からぽろぽろと透明な滴が溢れてくるので、俺はオロオロしてしまう。これじゃまるで俺が泣かせたみたいじゃないか。
「おいっ涼っ泣くなよ」
「僕だけが……僕だけが」
「どうした?」
「洋兄さんは今本当に幸せにしているの? 僕だけが安志さんと幸せになるのが申し訳ない気がして前に進めないんだ! 僕だって、進みたいんだよっ」
ずっと燻っていた言いたいこと、思うことを言い切ったようで、涼は肩で息を荒くしていた。
涼が同じ気持ちでいてくれる。そのことが分かって、とても満ち足りた気持ちになった。同じ方向を向いている。それが嬉しい。
「涼は本当に優しいな。そうだな。俺も洋の大事な従兄弟の涼をもらうんなら、洋に一言断っておかないと後で怒られそうだな」
そんな風に口に出したら、なんだかすごく照れ臭かった。
「安志さん」
「分かったよ。少し調べてみる。現在の洋のこと」
「ほんと? 」
「あぁ仕事柄得意だから任せろっ」
「ありがとう、安志さん! 」
涼が途端に天使のような甘い笑顔になって、俺の胸に飛びついてきた。そして甘い甘い砂糖菓子のようなキスをしてくれた。
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