重なる月

志生帆 海

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第5章

プロローグ

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 ー太陽と月ー


 ある日

 船上で太陽のような君と出会った。

 その笑顔は俺にとって眩しい位に明るくて、思わず顔を背けたくなった。帽子を目深にかぶり人目を避けるように影を歩く俺と、両親と手をつなぎ明るい笑顔の君とでは……別世界だと自分を卑下してしまった。

 そう思って冷たく突き放したのに、君は何度も何度も俺にその小さな手を差し伸べてくれた。


 ある日

 小さな君の手を握ってみたら、陽だまりのように暖かかった。
 その暖かさに、濃い血のつながりと縁を実感した。

 俺の小さな従兄弟……君はまるで俺の分身のようだ。

 太陽のような涼

 その光が輝きを失わないように。俺が穢されてしまった人生……君にはそんなことが起きないように。

 月のようにひっそりと陰ながら見守っていきたい。そして俺も今度君に会うときは、笑顔で向かい合いたい。




****

『重なる月』の第五章に入ります。第五章の主人公は洋と涼です。もちろん丈も安志くんも出てきます。安志編と本編が重なり合っていくイメージで、お話しを進めようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
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