234 / 1,657
第4章
※安志編※ 太陽の欠片 12
しおりを挟む
summer camp 7
真夜中にふと目が覚めた。こんな変な時間に目覚めるなんて……
そうか……バンガローでBilly達とビールを飲んで、かなり酔ったんだ。そのまま酔いつぶれて気が付いたらBillyのベッドを占領してしまったから後で謝らないと。
バンガローの中は食い散らかしたスナックとアルコールの匂い、それに若い男の汗臭さが充満して空気が澱んでいたので、無性に外の空気が吸いたくなった。
こんな時間に外に出ても大丈夫かと思ったが、我慢できずに飛び出してしまった。
そっとドアを開けると、夏の夜なのにひんやりと涼しく心地良かった。見上げれば漆黒の空に※月が白いかさをかぶって、ぽっかりと浮かんでいた。
※月がかさをかぶると雨
月の周りを淡い光の輪が囲むことを月傘と言います。 原理は虹の現象とよく似ていて、月が見える空には薄い雲が広がっています。その雲は氷の結晶でできていて月の光を浴びて、ある角度に限定して光が広がったり、屈折したりします。その光が集まり輪のように見えるのが月暈です。 ◆ 天気のことわざより引用◆
見上げた月は、孤独そのものだった。
月は不安げに黒い世界に浮かび、足元の草は夜露に濡れて涙のようだ。こんな時間に一人こんな場所で孤独に空を見上げていると、例えようのない程の不安に押しつぶされそうになってしまう。頭をブルッと振り嫌な考えを打ち消そうとした。
どうも……おかしい、何かが不安だ。ここに来てからずっと誰かに見られているような視線を感じていた。一体誰だ? 何なのか……僕のことを撫でまわすように絡みついてくるあの視線。
それはこの家からだ。あの池で釣りをしていた時、視線を感じ辿って行くと、カーテンの影に隠れる人影を見つけた。
この家は誰のものだ?
やっぱり別荘のようだな。それにこんな時間なのにまだ灯りが付いている。確かにこの家にいる奴が僕のことをじっと見つめていた。危険なのか、それとも何か別の理由でもあるのか。気になってしょうがない。
ぐるぐると定まらない思考。
そんな時ふっと安志さんの顔を思い出した。
そして出発前に、安志さんからの返信メールの文章を。
「涼、こんなこと書くと怒るかもしれないがキャンプではなるべく一人になるなよ。お前が護身術にも長けていて強いのは知っているが、一人で大勢に囲まれたりでもしたら強くても抵抗できないんだよ。洋がそうだったように俺は心配なんだ。くれぐれも無理はするなよ。じゃあ楽しんでこい」
ふっ確かに安志さんの言う通りだよな。こんな時間にこんな場所に一人で……まだ酔いが冷めきらないふらつく躰で歩き回るのは危険だ。
もう帰ろう。安志さんに心配かけたくない。
そう思い躰を翻し、歩き出した時だった。暗闇の茂みがガサッと揺れたのは。
真夜中にふと目が覚めた。こんな変な時間に目覚めるなんて……
そうか……バンガローでBilly達とビールを飲んで、かなり酔ったんだ。そのまま酔いつぶれて気が付いたらBillyのベッドを占領してしまったから後で謝らないと。
バンガローの中は食い散らかしたスナックとアルコールの匂い、それに若い男の汗臭さが充満して空気が澱んでいたので、無性に外の空気が吸いたくなった。
こんな時間に外に出ても大丈夫かと思ったが、我慢できずに飛び出してしまった。
そっとドアを開けると、夏の夜なのにひんやりと涼しく心地良かった。見上げれば漆黒の空に※月が白いかさをかぶって、ぽっかりと浮かんでいた。
※月がかさをかぶると雨
月の周りを淡い光の輪が囲むことを月傘と言います。 原理は虹の現象とよく似ていて、月が見える空には薄い雲が広がっています。その雲は氷の結晶でできていて月の光を浴びて、ある角度に限定して光が広がったり、屈折したりします。その光が集まり輪のように見えるのが月暈です。 ◆ 天気のことわざより引用◆
見上げた月は、孤独そのものだった。
月は不安げに黒い世界に浮かび、足元の草は夜露に濡れて涙のようだ。こんな時間に一人こんな場所で孤独に空を見上げていると、例えようのない程の不安に押しつぶされそうになってしまう。頭をブルッと振り嫌な考えを打ち消そうとした。
どうも……おかしい、何かが不安だ。ここに来てからずっと誰かに見られているような視線を感じていた。一体誰だ? 何なのか……僕のことを撫でまわすように絡みついてくるあの視線。
それはこの家からだ。あの池で釣りをしていた時、視線を感じ辿って行くと、カーテンの影に隠れる人影を見つけた。
この家は誰のものだ?
やっぱり別荘のようだな。それにこんな時間なのにまだ灯りが付いている。確かにこの家にいる奴が僕のことをじっと見つめていた。危険なのか、それとも何か別の理由でもあるのか。気になってしょうがない。
ぐるぐると定まらない思考。
そんな時ふっと安志さんの顔を思い出した。
そして出発前に、安志さんからの返信メールの文章を。
「涼、こんなこと書くと怒るかもしれないがキャンプではなるべく一人になるなよ。お前が護身術にも長けていて強いのは知っているが、一人で大勢に囲まれたりでもしたら強くても抵抗できないんだよ。洋がそうだったように俺は心配なんだ。くれぐれも無理はするなよ。じゃあ楽しんでこい」
ふっ確かに安志さんの言う通りだよな。こんな時間にこんな場所に一人で……まだ酔いが冷めきらないふらつく躰で歩き回るのは危険だ。
もう帰ろう。安志さんに心配かけたくない。
そう思い躰を翻し、歩き出した時だった。暗闇の茂みがガサッと揺れたのは。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる