重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
233 / 1,657
第4章

※安志編※ 太陽の欠片 11

しおりを挟む
summer camp 6

「おい誰だよ!ビールなんて持ってきたの」
「大丈夫だよ、Ryoも飲もうぜ! 」
「だが……まずくないか」
「Ryoの壮行会だよ。少しだけならいいだろ? 」

 気が付いたらバンガローでこっそりと宴会が始まっていた。飲酒していい年齢に達してないから不安が過ったが、気のいい奴らから誘われてつい口を付けてしまった。

※アメリカではアルコールについては、全ての州が21歳未満のアルコールの購入や所持を禁じてはいるものの、飲酒行為自体の合法性となると州によって違うようです。

 僕がこのメンバーでの旅行を決めたのは、メンバーの男3人にステディな彼女がいることを知っていたから。

 洋兄さんに忠告された通り、変な色目で見られることが年齢を重ねるごとに増え、危ない目にあうことも多々あったので、それに伴い警戒心も芽生えて来た。でもこのメンバーは、彼女の話で盛り上がることも多く、僕のことをただの男友達として接してくれていてほっとする。だからキャンプ自体を満喫出来ていた。そんな気の緩みもあって飲みなれない酒でほろ酔いになってしまった。

 僕は酒を飲むと眠くなるたちだったのか。とにかく目が開けられない程の眠気だ。 気が付くと隣で酒を飲んでいたBillyの肩にもたれてしまっていた。

「あれRyoどうした? 酔っちゃったのか」
「んーーBilly……僕……眠い」
「しょうがないな、もうベッドで寝ろよ」
「……そうさせてもらうよ…痛っ」

 ところが足がもつれて2段ベッドの上に思うように上がれない。階段を踏み外して足をぶつけてしまった。そんな僕のことをBillyが見かねたようで、グイッと腕を引っ張られて下のベッドにドスンっと寝かされた。

「ったく、見てられないぞ。危ないから今日は下で寝ろよ」
「……ありがとう。君は優しいな」
「なんだよBilly~ 抜け駆けか。Ryoとお熱いな~」
「そんなんじゃないよ」

 他の奴らが僕達を揶揄う声が遠くに聴こえるが睡魔に襲われ、あっという間にまどろみの世界へ誘われて行ってしまった。

****

 くそっRyoの奴、こんな所でこんな風に無防備に寝るなよ。

 俺のベッドで仰向けに寝ているRyoの姿から目が離せない。酔っぱらって少し赤らんだ頬、血行が良くなったのか唇の色もいつもより赤い。伏せた睫毛は黒く長く、Ryoの滑らかな象牙色の健康的な肌に艶めいた妖しげな影を落としている。

「んっ……暑い……」

 寝言のようにRyoが苦し気にいうので、俺は躊躇したが、Ryoのシャツのボタンを上から一つ……二つと外してやった。三つ目も外してやろうかと、手が彷徨った。

「ふぅ……楽になった」

 ほっとしたRyoが深呼吸した息がふわっと俺にかかった。

 うっ……なんて甘い吐息なんだな。
 Ryo……これ以上刺激するな!

 その薄く開いた唇を舐めたら、どんな味がする? ぐっと堪えきれない衝動に任せ顔を近づけたとき、ルームメイトに声を掛けられた。

「おいBilly、そろそろ寝るか。お前はRyoにベッドを譲ったから上に行けよ」
「あっああ」

 電気を消して俺は暗闇を睨む。

 朝のプールでのRyoの姿が脳裏にふわっと浮かんでくる。

 ツンと立った小さな乳首。
 水に濡れたしなやかな裸体。
 細い首に濡れて張りついた髪の毛。
 先ほどの酔って上気した薔薇色の頬。
 俺にかかった甘い吐息。

 俺を誘うように見つめてくるRyoの姿が幻想のように浮かんでは消えて行く。

 あああっもう駄目だ。俺ってマジで男が好きだったのか。それともRyoだからなのか、こんな気持ちになるのは?

 不毛過ぎるよな~はぁ……Ryoは俺のこ友達として信頼してくれているのに。

 俺は布団を頭まで被り、下のベッドのRyoに今すぐ襲いかかりたい、獣のように興奮した気持ちを必死に抑え込んだ。

 ちっ──しょうがないな。一度抜くか。

 自分のものに手を触れ皆に気が付かれない様に、頭の中で俺の下で喘ぐRyoの淫らな姿を想像しながら一気に抜いて、そのまま脱力したように眠ってしまった。

 コトっー

 何時だろうか。物音がしてふと目が覚めた。耳を澄ますと、そっとドアが開く音がして誰かが外に出ていたようだ。その後ろ姿をみて、はっとする。

 Ryo……?

 こんな時間に何処へ行くのか。

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

物語のその後

キサラギムツキ
BL
勇者パーティーの賢者が、たった1つ望んだものは……… 1話受け視点。2話攻め視点。 2日に分けて投稿予約済み ほぼバッドエンドよりのメリバ

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

処理中です...