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第4章
※安志編※ 太陽の欠片 9
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summer camp 4
俺の名前はBilly。
背は190cm以上ありハイスクールではアメフト部の主将だった。自分で言うのもなんだが金髪碧眼の容姿は端麗で、未だかつて女に困ったことはない。
今の彼女はチアリーディング部で俺達を応援してくれていたLisaだ。明るいブラウンの髪と眼のエキゾチックな顔立ちの美人で、周りにも公認のステディな仲だ。
俺は秋から地元のニューヨーク大学へ進学する。一応世界大学ランキングでも30位に入る優秀な大学で、いずれは「スポーツビジネス」など専門分野の経営を学ぶ修士課程を目指し、勉学にも励むつもりだ。
ところが!
こんな順風満帆だった俺の人生を刺激する、どうしても気になってしまう、つい目で追ってしまう奴がいる。
そいつは告白されることに慣れきっていた俺に、自分から惚れるということを初めて教えてくれた。それは男で、日本人のRyo(涼)だ。Ryoは日本人といっても幼い頃からこっちで過ごしているネイティブで、考え方も溌剌として明るい。何よりRyoはハイスクールでは、ちょっとした有名人だった。
陸上部で、その走る姿がカモシカのようにしなやかで美しいと評判だった。風を斬って走るRyoの姿を一度見たら、女も男も目が離せなくなると噂されているほどだ。
実際、俺もアメフト部に入ったばかりの一年生の夏に、グランドで走るRyoを垣間見て一気に心を奪われた一人だからな。
日本人ならではの線の細さに加えて、しっとりとした象牙色の滑らかな肌。日本人にしては少し明るめの黒髪は、太陽の光を浴びると栗毛色に輝いていた。そしてその顔立ちがなんとも優し気で憂いを帯びていて、目が離せなくなる。
男のくせに長い睫毛、滑らかな肌に、綺麗な形の唇……本当に整った綺麗な顔立ちだった。
そうだな。まるでギリシャ神話とかに出てきそうな美少年のようだ。同じ男でも……こんなに綺麗な奴がいるなんてと驚いたものだ。
ただしRyoは俊足の上、空手も嗜んでいるので動きも俊敏で、女みたいな綺麗な顔のくせに、女っぽいところなんて微塵もなく男らしかった。
その証拠にRyoに手を出そうとしてコテンパにされた奴がごまんといたからな。
そんなRyoがハイスクール卒業後は日本へ戻ってしまうと聞いたのは、かなりショックだった。俺と同じようにショックを受けた連中が多かったのだろう。プロムでRyoは、夏休みの誘いを山のように受けていた。
プロムで女装したRyoの美しさは抜群だった。余興だったから他にも大勢女装した奴がいたのに、Ryoの周りだけは爽やかな空気が吹き抜けていた。
湖のような深い水色のドレスに漆黒のストレートのロングヘアのウィッグをつけたRyoに、みんな釘づけだったな。あれはまさにオリエンタルビューティーだ。
そんなRyoが数ある夏のヴァカンスの誘いの中からアメフト仲間で企画した俺達のキャンプに来てくれると聞いて勝ち誇った気分になったよ。
「Ryo、来てくれて嬉しいよ」
車でRyoの家に迎えに行く約束をした。バスで行くと遠慮するRyoを途中からガールフレンドのLisaも同乗することで説き伏せたんだ。役得だなと皆にも羨ましがられたものだ。
「悪いな、わざわざ」
「いや、ついでだし。気にするな」
ニコっと笑って助手席に乗ってくるRyoに思わず見惚れてしまう。
可愛い!平静を装い運転しながら、ちらっと助手席に座ったRyoを見てしまう。
まっすぐ伸びた細い脚に濃い色のジーンズが良く似合っている。象牙色の肌を引き立てる濃紺のTシャツも、細い腰に巻きつけた白いリネンのシャツも清楚な雰囲気でいっぱいだ。
Ryoには付き合っている奴はいないのだろうか。女の子と仲良さそうにいつも話してはいるが、ステディなガールフレンドがいるという噂は聞いたことがない。
でも最近のRyoは以前と違う。
プロムの後、久しぶりに会ったRyoはふとした瞬間、切なそうな表情が艶めいていて、まるで誰かに恋しているような雰囲気になっていた。
一体誰なんだよ。Ryoの心を捉えたのは。
「Hi!Ryo~」
「ビリー、俺は後ろに移動するからLisaに助手席に座ってもらって」
「いいよ、このままで」
「いや、Lisaは君の大事に相手だろう。ちゃんと優先しないと怒られるぞ」
途中Lisaが乗って来たので、Ryoは後部座席に移動した。
助手席からRyoが消えてしまい寂しく感じた俺は、バックミラーでRyoをちらちらと確認してしまった。車の揺れが心地よいのか、最初はLisaと俺の会話に相槌を打っていた声は小さくなって、やがて寝息に変わって行った。
「Billy、ねっRyoってば可愛い。小さい子供みたいに寝ちゃったみたい。ねっキスして」
「今運転中だからあとでな」
「もーケチっ!」
Lisaには悪いがそれどころじゃない。Ryoの奴、あんなに気持ち良さそうに、まるで天使が羽を休めているような無防備な寝顔を見せるなんて……いくらLisaが同乗したからって油断しすぎじゃないか。
ずっと見つめていたい美しい寝顔だ。あの形のよい唇にキスをしたら嫌がるだろうか。きつく抱きしめたら怒るだろうか。
そんなことを考えていると下半身がムラムラしてきてしまった。
「Billyってば、もう~Ryoもいるのにここじゃ駄目よ」
Lisaは勘違いして頬を赤らめていた。
俺の名前はBilly。
背は190cm以上ありハイスクールではアメフト部の主将だった。自分で言うのもなんだが金髪碧眼の容姿は端麗で、未だかつて女に困ったことはない。
今の彼女はチアリーディング部で俺達を応援してくれていたLisaだ。明るいブラウンの髪と眼のエキゾチックな顔立ちの美人で、周りにも公認のステディな仲だ。
俺は秋から地元のニューヨーク大学へ進学する。一応世界大学ランキングでも30位に入る優秀な大学で、いずれは「スポーツビジネス」など専門分野の経営を学ぶ修士課程を目指し、勉学にも励むつもりだ。
ところが!
こんな順風満帆だった俺の人生を刺激する、どうしても気になってしまう、つい目で追ってしまう奴がいる。
そいつは告白されることに慣れきっていた俺に、自分から惚れるということを初めて教えてくれた。それは男で、日本人のRyo(涼)だ。Ryoは日本人といっても幼い頃からこっちで過ごしているネイティブで、考え方も溌剌として明るい。何よりRyoはハイスクールでは、ちょっとした有名人だった。
陸上部で、その走る姿がカモシカのようにしなやかで美しいと評判だった。風を斬って走るRyoの姿を一度見たら、女も男も目が離せなくなると噂されているほどだ。
実際、俺もアメフト部に入ったばかりの一年生の夏に、グランドで走るRyoを垣間見て一気に心を奪われた一人だからな。
日本人ならではの線の細さに加えて、しっとりとした象牙色の滑らかな肌。日本人にしては少し明るめの黒髪は、太陽の光を浴びると栗毛色に輝いていた。そしてその顔立ちがなんとも優し気で憂いを帯びていて、目が離せなくなる。
男のくせに長い睫毛、滑らかな肌に、綺麗な形の唇……本当に整った綺麗な顔立ちだった。
そうだな。まるでギリシャ神話とかに出てきそうな美少年のようだ。同じ男でも……こんなに綺麗な奴がいるなんてと驚いたものだ。
ただしRyoは俊足の上、空手も嗜んでいるので動きも俊敏で、女みたいな綺麗な顔のくせに、女っぽいところなんて微塵もなく男らしかった。
その証拠にRyoに手を出そうとしてコテンパにされた奴がごまんといたからな。
そんなRyoがハイスクール卒業後は日本へ戻ってしまうと聞いたのは、かなりショックだった。俺と同じようにショックを受けた連中が多かったのだろう。プロムでRyoは、夏休みの誘いを山のように受けていた。
プロムで女装したRyoの美しさは抜群だった。余興だったから他にも大勢女装した奴がいたのに、Ryoの周りだけは爽やかな空気が吹き抜けていた。
湖のような深い水色のドレスに漆黒のストレートのロングヘアのウィッグをつけたRyoに、みんな釘づけだったな。あれはまさにオリエンタルビューティーだ。
そんなRyoが数ある夏のヴァカンスの誘いの中からアメフト仲間で企画した俺達のキャンプに来てくれると聞いて勝ち誇った気分になったよ。
「Ryo、来てくれて嬉しいよ」
車でRyoの家に迎えに行く約束をした。バスで行くと遠慮するRyoを途中からガールフレンドのLisaも同乗することで説き伏せたんだ。役得だなと皆にも羨ましがられたものだ。
「悪いな、わざわざ」
「いや、ついでだし。気にするな」
ニコっと笑って助手席に乗ってくるRyoに思わず見惚れてしまう。
可愛い!平静を装い運転しながら、ちらっと助手席に座ったRyoを見てしまう。
まっすぐ伸びた細い脚に濃い色のジーンズが良く似合っている。象牙色の肌を引き立てる濃紺のTシャツも、細い腰に巻きつけた白いリネンのシャツも清楚な雰囲気でいっぱいだ。
Ryoには付き合っている奴はいないのだろうか。女の子と仲良さそうにいつも話してはいるが、ステディなガールフレンドがいるという噂は聞いたことがない。
でも最近のRyoは以前と違う。
プロムの後、久しぶりに会ったRyoはふとした瞬間、切なそうな表情が艶めいていて、まるで誰かに恋しているような雰囲気になっていた。
一体誰なんだよ。Ryoの心を捉えたのは。
「Hi!Ryo~」
「ビリー、俺は後ろに移動するからLisaに助手席に座ってもらって」
「いいよ、このままで」
「いや、Lisaは君の大事に相手だろう。ちゃんと優先しないと怒られるぞ」
途中Lisaが乗って来たので、Ryoは後部座席に移動した。
助手席からRyoが消えてしまい寂しく感じた俺は、バックミラーでRyoをちらちらと確認してしまった。車の揺れが心地よいのか、最初はLisaと俺の会話に相槌を打っていた声は小さくなって、やがて寝息に変わって行った。
「Billy、ねっRyoってば可愛い。小さい子供みたいに寝ちゃったみたい。ねっキスして」
「今運転中だからあとでな」
「もーケチっ!」
Lisaには悪いがそれどころじゃない。Ryoの奴、あんなに気持ち良さそうに、まるで天使が羽を休めているような無防備な寝顔を見せるなんて……いくらLisaが同乗したからって油断しすぎじゃないか。
ずっと見つめていたい美しい寝顔だ。あの形のよい唇にキスをしたら嫌がるだろうか。きつく抱きしめたら怒るだろうか。
そんなことを考えていると下半身がムラムラしてきてしまった。
「Billyってば、もう~Ryoもいるのにここじゃ駄目よ」
Lisaは勘違いして頬を赤らめていた。
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