230 / 1,657
第4章
※安志編※ 太陽の欠片 8
しおりを挟む
summer camp 3
まただ……
僕のことを見つめる視線を感じる。
これは邪なものなのか否か、分からない。
バンガロー近くの小さな池で釣りをしていると、ふと俺を射抜くような熱い視線を感じた。あたりを見回しても、釣りに夢中になっているビリー達以外いない。
一体誰だ?
「Ryo、何キョロキョロしてるんだよ。どうした?」
隣にいたビリーが不思議そうに声を掛けてくれたが、何か分からない不安な視線を感じたなんて、またあらぬ誤解を受けそうだから、僕は適当に話を逸らした。
「いや、そういえば、この池の向こうにあるのは立派な家だな」
「あー本当だ。個人の別荘っぽいな」
「優雅だな、こんな場所にあんなに大きな別荘を構えるなんて」
「そうだな。俺もいつかそんな身分になりたいぜ」
「そうだな!その時はヴァカンスに招待してくれ。ビリーはその頃にはRisaと結婚しているのかもな」
「Ryoっよしてくれよ。まだまだ俺の人生は終わってない」
「ビリーお前な~Lisaに失礼じゃないか。完璧な彼女じゃないか」
「なんだよRyo? もしかしてLisaのことが気になっているのか」
「そういうことじゃなくてっ、はぁ全く……」
変な所をビリーに突っ込まれて、焦ってしまう。今、僕が気になっているのは安志さんだけだ。
偶然乗りあわせた飛行機の中で、懐かしさ溢れる恋するような目で見つめてきたかと思ったら、その後凄く落胆してしまった安志さんの表情が、今でも頭から離れない。
あんなに実直そうな人が酷く暗い表情をするなんて、その理由を知りたくてしょうがなかった。
幼い頃からアメリカ育ちの僕の周りにはいなかった控えめで、自分のことよりも相手のことを優先させてしまうお人好しの安志さん。そんな風に相手の幸せを一番に考える安志さんのことが好きだ。知れば知る程、その人柄に惹かれてしまった。
それがまさか僕の大好きな洋兄さんの幼馴染だったなんて、縁を感じずにいられない。
安志さんは僕の……誰にも見せていなかった弱い部分をそっと撫でてくれるような優しい人なんだ。
安志さん……
「会いたいな…」
頭の中に募る想いが、ぽろりと口から漏れてしまった。それをビリーが聴き漏らすはずもなく。
「Ryo、お前は今誰と付き合ってるんだ?」
「えっ!なんで」
「プロムでエスコートしたJuneは、このキャンプには来なかったじゃないか、もう別れたのか」
「いや彼女とは、そもそも付き合ってないし…… Juneもステディな相手がいなかったから、エスコートしたただけさ」
「ふーん、じゃあこのキャンプに連れて来たLisaの友達の子はどうだ? 胸も大きくて可愛いタイプじゃないか。Ryoの好みそうなおしとやかそうな女の子を探したんだぜ」
「ははっ……ありがとう。でも今は僕はいいよ。来月には日本に行くし」
「もしかして日本で誰か待っているのか」
「えっ!いないよ、そんな彼女なんて…」
全くビリーの奴は相変わらず鋭いな。でも絶対悟られたくない。
安志さんとのことは大切にしたい。まだ始まったばかりの僕の淡い恋。これから大切に育んでいきたい想いなのだから。
安志さんが僕の到着を日本で待っていてくれる。僕も早く安志さんの待っている場所に行きたいよ。
二人同じ場所で並んで、全てはそこからスタートさせたい。
まただ……
僕のことを見つめる視線を感じる。
これは邪なものなのか否か、分からない。
バンガロー近くの小さな池で釣りをしていると、ふと俺を射抜くような熱い視線を感じた。あたりを見回しても、釣りに夢中になっているビリー達以外いない。
一体誰だ?
「Ryo、何キョロキョロしてるんだよ。どうした?」
隣にいたビリーが不思議そうに声を掛けてくれたが、何か分からない不安な視線を感じたなんて、またあらぬ誤解を受けそうだから、僕は適当に話を逸らした。
「いや、そういえば、この池の向こうにあるのは立派な家だな」
「あー本当だ。個人の別荘っぽいな」
「優雅だな、こんな場所にあんなに大きな別荘を構えるなんて」
「そうだな。俺もいつかそんな身分になりたいぜ」
「そうだな!その時はヴァカンスに招待してくれ。ビリーはその頃にはRisaと結婚しているのかもな」
「Ryoっよしてくれよ。まだまだ俺の人生は終わってない」
「ビリーお前な~Lisaに失礼じゃないか。完璧な彼女じゃないか」
「なんだよRyo? もしかしてLisaのことが気になっているのか」
「そういうことじゃなくてっ、はぁ全く……」
変な所をビリーに突っ込まれて、焦ってしまう。今、僕が気になっているのは安志さんだけだ。
偶然乗りあわせた飛行機の中で、懐かしさ溢れる恋するような目で見つめてきたかと思ったら、その後凄く落胆してしまった安志さんの表情が、今でも頭から離れない。
あんなに実直そうな人が酷く暗い表情をするなんて、その理由を知りたくてしょうがなかった。
幼い頃からアメリカ育ちの僕の周りにはいなかった控えめで、自分のことよりも相手のことを優先させてしまうお人好しの安志さん。そんな風に相手の幸せを一番に考える安志さんのことが好きだ。知れば知る程、その人柄に惹かれてしまった。
それがまさか僕の大好きな洋兄さんの幼馴染だったなんて、縁を感じずにいられない。
安志さんは僕の……誰にも見せていなかった弱い部分をそっと撫でてくれるような優しい人なんだ。
安志さん……
「会いたいな…」
頭の中に募る想いが、ぽろりと口から漏れてしまった。それをビリーが聴き漏らすはずもなく。
「Ryo、お前は今誰と付き合ってるんだ?」
「えっ!なんで」
「プロムでエスコートしたJuneは、このキャンプには来なかったじゃないか、もう別れたのか」
「いや彼女とは、そもそも付き合ってないし…… Juneもステディな相手がいなかったから、エスコートしたただけさ」
「ふーん、じゃあこのキャンプに連れて来たLisaの友達の子はどうだ? 胸も大きくて可愛いタイプじゃないか。Ryoの好みそうなおしとやかそうな女の子を探したんだぜ」
「ははっ……ありがとう。でも今は僕はいいよ。来月には日本に行くし」
「もしかして日本で誰か待っているのか」
「えっ!いないよ、そんな彼女なんて…」
全くビリーの奴は相変わらず鋭いな。でも絶対悟られたくない。
安志さんとのことは大切にしたい。まだ始まったばかりの僕の淡い恋。これから大切に育んでいきたい想いなのだから。
安志さんが僕の到着を日本で待っていてくれる。僕も早く安志さんの待っている場所に行きたいよ。
二人同じ場所で並んで、全てはそこからスタートさせたい。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる