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第4章
※安志編※ 太陽の欠片 3
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「涼……大丈夫か」
「えっ何が」
助手席にもたれてそっと溜息を漏らした涼に声をかけると、涼は不思議そうに茶色の瞳を潤ませ、じっと俺のことを見つめ返して来た。
「いや……さっきなんだか寂しそうに見えたから」
「気のせいだよ。そう見えたのなら、やっと洋兄さんの国に来たって感慨に耽っていたからかな」
「そうか。ならいいが」
「洋兄さん一体何処にいるのかな。早く会いたい」
「あぁきっと会えるさ」
「安志さん、本当に洋兄さんの行方を知らないの?」
「……ああ」
洋に会いたくてたまらない切ない表情を見ていると心が痛んだ。俺は洋が今はもう日本にいないことを、きちんと話せないでいた。何故ならその話をするには、洋と親父さんとのあの忌まわしい事件について触れないといけないから。
あれは洋にとって辛く重たいプライバシーだ。守ってやらないと……たとえ相手が従弟の涼でもだ。
あの時見た洋のスマホの画像がふと脳裏に浮かび嫌な気分になった。そして同時に涼にはあのような災難が降りかからないように、俺が必ず守ってやりたいと強く誓った。
「さぁ着いたぞ。ここでいいか」
涼の新居は駅からそう遠くない築浅の綺麗なマンションだった。女の子が好きそうな雑貨店やカフェなどが点在するお洒落な街にあるので、気おくれしてしまう。
「えっと4階だな」
「うん!日本に来た時、この街の雰囲気が気に入ってすぐに決めたんだよ」
「そうか。駅にも近いし、安全そうだな」
「ふふっそうだね」
スーツケースを持って部屋に入ると、真っ白な壁にパイン材の床が開放的な空間だった。日当たりも良く女の子の独り暮らしが似合いそうな雰囲気だ。
「あれ? なんか妙に可愛い部屋だな」
「あぁ女子が喜びそうな雰囲気だ」
「内装までチェックしてなかったよ。参ったな」
「涼には合ってるよ。爽やかな部屋でいいじゃないか」
「そうかな」
「あぁ俺は気に入った」
「良かった! 安志さんが気に入ってくれたなら何処でもいいんだ」
「お前なぁあんまり可愛いこと言うなよ。我慢できなくなるだろ」
「安志さんっ」
そう呼ばれて振り返ると、涼の方から首に手を回し口づけして来た。随分と可愛いキスだった。チュっと一瞬俺の唇を啄んで、すぐに離れて行った。だが俺はこれじゃ我慢出来ない。
この一か月飢えていた。涼の味に……だから思わず離れて行く涼の頭を後ろから抑え込み、今度は俺の方からキスを仕掛けてしまった。さっきみたいな触れたか触れないかの浅いキスではなく、もっともっと深いものをしてやると、涼の若々しい竹のような爽快な香りが俺の鼻をかすめて行く。
酔って、溺れそうだ。
あのセントラルパークでの初めての口づけを思い出す。深い口づけに酔ってしまうと、この先も望んでしまう自分をとめられない。もう片方の手を涼の腰から下半身へゆっくりと這わしてしまう。
「んっ……ん」
躰をビクッとさせ怯えた雰囲気が伝わって来たので、すぐに拘束していた手を離してやる。
「はぁ……はぁ、息が止まるかと思ったよ」
涼は少し放心したような照れたような表情で壁にもたれながら、俺のことを見つめて来た。
「悪い、激しくしすぎたな」
「いや……大丈夫……ここまで……なら」
「……ここまで? 」
「あっなんでもない」
涼はどことなく元気なふりをしているような気がした。空港から感じていることを問いただそうとも思ったが、様子を見ることにした。
「涼、まずは必要なものを買いに行くんだろ?付き合うよ」
「本当? 嬉しいよ」
気まずい雰囲気を変えようと買い物に行くことを提案してやると、涼はほっと安堵の表情を浮かべた。まだ相手は十八歳だ。ついこの前高校を卒業したばかりだ。
焦るなと、自分に言い聞かせた。当然……さっきのキスで俺の下半身はかなり辛かったが。
「えっ何が」
助手席にもたれてそっと溜息を漏らした涼に声をかけると、涼は不思議そうに茶色の瞳を潤ませ、じっと俺のことを見つめ返して来た。
「いや……さっきなんだか寂しそうに見えたから」
「気のせいだよ。そう見えたのなら、やっと洋兄さんの国に来たって感慨に耽っていたからかな」
「そうか。ならいいが」
「洋兄さん一体何処にいるのかな。早く会いたい」
「あぁきっと会えるさ」
「安志さん、本当に洋兄さんの行方を知らないの?」
「……ああ」
洋に会いたくてたまらない切ない表情を見ていると心が痛んだ。俺は洋が今はもう日本にいないことを、きちんと話せないでいた。何故ならその話をするには、洋と親父さんとのあの忌まわしい事件について触れないといけないから。
あれは洋にとって辛く重たいプライバシーだ。守ってやらないと……たとえ相手が従弟の涼でもだ。
あの時見た洋のスマホの画像がふと脳裏に浮かび嫌な気分になった。そして同時に涼にはあのような災難が降りかからないように、俺が必ず守ってやりたいと強く誓った。
「さぁ着いたぞ。ここでいいか」
涼の新居は駅からそう遠くない築浅の綺麗なマンションだった。女の子が好きそうな雑貨店やカフェなどが点在するお洒落な街にあるので、気おくれしてしまう。
「えっと4階だな」
「うん!日本に来た時、この街の雰囲気が気に入ってすぐに決めたんだよ」
「そうか。駅にも近いし、安全そうだな」
「ふふっそうだね」
スーツケースを持って部屋に入ると、真っ白な壁にパイン材の床が開放的な空間だった。日当たりも良く女の子の独り暮らしが似合いそうな雰囲気だ。
「あれ? なんか妙に可愛い部屋だな」
「あぁ女子が喜びそうな雰囲気だ」
「内装までチェックしてなかったよ。参ったな」
「涼には合ってるよ。爽やかな部屋でいいじゃないか」
「そうかな」
「あぁ俺は気に入った」
「良かった! 安志さんが気に入ってくれたなら何処でもいいんだ」
「お前なぁあんまり可愛いこと言うなよ。我慢できなくなるだろ」
「安志さんっ」
そう呼ばれて振り返ると、涼の方から首に手を回し口づけして来た。随分と可愛いキスだった。チュっと一瞬俺の唇を啄んで、すぐに離れて行った。だが俺はこれじゃ我慢出来ない。
この一か月飢えていた。涼の味に……だから思わず離れて行く涼の頭を後ろから抑え込み、今度は俺の方からキスを仕掛けてしまった。さっきみたいな触れたか触れないかの浅いキスではなく、もっともっと深いものをしてやると、涼の若々しい竹のような爽快な香りが俺の鼻をかすめて行く。
酔って、溺れそうだ。
あのセントラルパークでの初めての口づけを思い出す。深い口づけに酔ってしまうと、この先も望んでしまう自分をとめられない。もう片方の手を涼の腰から下半身へゆっくりと這わしてしまう。
「んっ……ん」
躰をビクッとさせ怯えた雰囲気が伝わって来たので、すぐに拘束していた手を離してやる。
「はぁ……はぁ、息が止まるかと思ったよ」
涼は少し放心したような照れたような表情で壁にもたれながら、俺のことを見つめて来た。
「悪い、激しくしすぎたな」
「いや……大丈夫……ここまで……なら」
「……ここまで? 」
「あっなんでもない」
涼はどことなく元気なふりをしているような気がした。空港から感じていることを問いただそうとも思ったが、様子を見ることにした。
「涼、まずは必要なものを買いに行くんだろ?付き合うよ」
「本当? 嬉しいよ」
気まずい雰囲気を変えようと買い物に行くことを提案してやると、涼はほっと安堵の表情を浮かべた。まだ相手は十八歳だ。ついこの前高校を卒業したばかりだ。
焦るなと、自分に言い聞かせた。当然……さっきのキスで俺の下半身はかなり辛かったが。
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