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第4章
※安志編※ 太陽の欠片 2
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「定刻通りだな」
時計を見ながら、自然と口元が綻んだ。もうすぐ涼が日本にやってくる。俺の休みに合わせてくれたので、空港まで迎えに来ることが出来た。
涼に会ったのは、ほんの一カ月だ。あっという間に恋に堕ちてしまった。だがまだ始まったばかりの関係だ。涼がどうして俺なんかを好きになってくれたのか、まだ自信が持てない危うい気持ちを奮い立たせようと、ポケットに忍ばせた贈り物の箱をぎゅっと握りしめた。
やがて……ブルーの大きなスーツケースを押しながら、ジーンズにオフホワイトのTシャツ、細い腰にトレーナーを巻き付けた涼の姿をガラス越しに捉えた。
あれ? なんだ?
俺のことには気が付かず白人の男性と親しそうに、その可愛い笑顔を振りまいているじゃないか。
おいおい一体誰だ?
出口で手を振ってその男性とは別れ、そのままこちらへキョロキョロしながら近づいてくる。そして俺と目が合うと、ニコっと微笑んだ。
「安志さん!」
そのまま涼は羽が生えたみたいに、ふわりと俺に抱き付いて来た。
クスクスー
周りは子供が俺に抱き付いているように見えたのだろう。通りすがりの人達は温かい微笑を浮かべて通り過ぎていた。
「おっおい! こんな所で! 」
「あっごめん、だって嬉しくて」
「本当か」
「当たり前だよ。なんで? 」
「いや……その……さっき白人の男性とご機嫌に喋っていたから」
「あぁ、飛行機で隣の席だったから、仲良くなったんだ」
「仲良くって? 」
「沢山喋って面白かったよ」
屈託のない笑みを浮かべる涼にやましい心はないだろが心配になる。普通飛行機の席が隣になっただけで、そんなに喋るか。
「それって、お前に気があるからだろう」
「えっ」
涼が途端にショックを受けたような表情になってしまった。
「そんなことないよ。日本についていろいろ聞かれたから、僕の知っていることを教えてあげただけだ。観光で来たみたいだから、ただの親切心だ」
「まさか連絡先とかもらってないよな」
「うっ……」
案の定、涼の手には小さなメモが握られていた。大方、日本での連絡先だろう。
「はぁ……涼、気を付けてくれよ。心配で眠れなくなる」
「ごめんなさい」
シュンとしてしまった涼がなんだかいじらしく見えて、俺はその頭をクシャッと撫でてやった。
「まぁいいよ。これから気を付けろよ」
「わかった。安志さんも僕の腕の強さ知っているよね?」
「まぁな、向こうでは助けてもらったし」
「ふふっ」
「まずはお前の暮らす家に荷物を置きに行くか? 車を取ってくるからここで待っていろ」
「うん」
駐車場からスーツケースの横にすっと立つ涼の方へ車を走らせていくと、夕日に照らされた涼の横顔は美しい陰影を生んでいた。
さっきまでの幼い顔ではなく、少し大人びた色気を感じる。
あまりに美しく感じ、思わずじっとその様子を観察してしまった。
だがその横顔は、何故か酷く寂しそうに見えた。何かに堪えるような切ない表情を浮かべていることに、ふと違和感を覚えた。
アメリカで会った涼はもっと自信に満ち溢れていたのに、会わない一カ月間に何かあったのか心配になるぞ。なぁそんな顔するなよ。
メールは高校の友人と夏のサマーキャンプに行っていた一週間は途絶えていたが、それ以外は毎日のようにして、変わった所なんて感じなかったのに。
「涼、待たせたな!」
車を近づけても気が付かずぼんやりとしている涼に声を掛けると、途端に表情を引き締め、いつもの涼に戻った。
「ごめん、ちょっと時差でぼんやりしていた」
夕日を背にした涼の表情は、儚げな洋とそっくりに感じてしまった。あの高校時代の洋に似ている。一体何があった? そんな表情する子ではなかったのに。
時計を見ながら、自然と口元が綻んだ。もうすぐ涼が日本にやってくる。俺の休みに合わせてくれたので、空港まで迎えに来ることが出来た。
涼に会ったのは、ほんの一カ月だ。あっという間に恋に堕ちてしまった。だがまだ始まったばかりの関係だ。涼がどうして俺なんかを好きになってくれたのか、まだ自信が持てない危うい気持ちを奮い立たせようと、ポケットに忍ばせた贈り物の箱をぎゅっと握りしめた。
やがて……ブルーの大きなスーツケースを押しながら、ジーンズにオフホワイトのTシャツ、細い腰にトレーナーを巻き付けた涼の姿をガラス越しに捉えた。
あれ? なんだ?
俺のことには気が付かず白人の男性と親しそうに、その可愛い笑顔を振りまいているじゃないか。
おいおい一体誰だ?
出口で手を振ってその男性とは別れ、そのままこちらへキョロキョロしながら近づいてくる。そして俺と目が合うと、ニコっと微笑んだ。
「安志さん!」
そのまま涼は羽が生えたみたいに、ふわりと俺に抱き付いて来た。
クスクスー
周りは子供が俺に抱き付いているように見えたのだろう。通りすがりの人達は温かい微笑を浮かべて通り過ぎていた。
「おっおい! こんな所で! 」
「あっごめん、だって嬉しくて」
「本当か」
「当たり前だよ。なんで? 」
「いや……その……さっき白人の男性とご機嫌に喋っていたから」
「あぁ、飛行機で隣の席だったから、仲良くなったんだ」
「仲良くって? 」
「沢山喋って面白かったよ」
屈託のない笑みを浮かべる涼にやましい心はないだろが心配になる。普通飛行機の席が隣になっただけで、そんなに喋るか。
「それって、お前に気があるからだろう」
「えっ」
涼が途端にショックを受けたような表情になってしまった。
「そんなことないよ。日本についていろいろ聞かれたから、僕の知っていることを教えてあげただけだ。観光で来たみたいだから、ただの親切心だ」
「まさか連絡先とかもらってないよな」
「うっ……」
案の定、涼の手には小さなメモが握られていた。大方、日本での連絡先だろう。
「はぁ……涼、気を付けてくれよ。心配で眠れなくなる」
「ごめんなさい」
シュンとしてしまった涼がなんだかいじらしく見えて、俺はその頭をクシャッと撫でてやった。
「まぁいいよ。これから気を付けろよ」
「わかった。安志さんも僕の腕の強さ知っているよね?」
「まぁな、向こうでは助けてもらったし」
「ふふっ」
「まずはお前の暮らす家に荷物を置きに行くか? 車を取ってくるからここで待っていろ」
「うん」
駐車場からスーツケースの横にすっと立つ涼の方へ車を走らせていくと、夕日に照らされた涼の横顔は美しい陰影を生んでいた。
さっきまでの幼い顔ではなく、少し大人びた色気を感じる。
あまりに美しく感じ、思わずじっとその様子を観察してしまった。
だがその横顔は、何故か酷く寂しそうに見えた。何かに堪えるような切ない表情を浮かべていることに、ふと違和感を覚えた。
アメリカで会った涼はもっと自信に満ち溢れていたのに、会わない一カ月間に何かあったのか心配になるぞ。なぁそんな顔するなよ。
メールは高校の友人と夏のサマーキャンプに行っていた一週間は途絶えていたが、それ以外は毎日のようにして、変わった所なんて感じなかったのに。
「涼、待たせたな!」
車を近づけても気が付かずぼんやりとしている涼に声を掛けると、途端に表情を引き締め、いつもの涼に戻った。
「ごめん、ちょっと時差でぼんやりしていた」
夕日を背にした涼の表情は、儚げな洋とそっくりに感じてしまった。あの高校時代の洋に似ている。一体何があった? そんな表情する子ではなかったのに。
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