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第4章
重なる出会い 5
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未だ眠りから覚めない洋を抱いて、院内の長く暗い廊下を歩く。
その時雲に隠れていた月が姿を現したのか、長い廊下に月明かりがそっと届いた。廊下が白く輝き、まるで道案内をしてくれているような光景だった。
その真っすぐな道はどこか非現実的な不思議なものだったが、確実に私たちが歩むべき道だということが伝わって来た。
もう迷わない。
洋と共に進むべき道が今ここにある。
****
私専用の研究室の仮眠ベッドに、洋をそっと降ろしてやる。
「洋、まだ眠いのか」
顔にかかった黒髪をそっとよけて、耳元で囁いてみる。
「……んっ……丈? 」
「そうだ」
「ここ……どこ? 」
「私の研究室だよ」
「そうなんだ。俺さ……不足してる」
「んっ? 腹減ったのか? 」
「違くて……足りてない……から、元気でない」
「何が? 」
「だから……丈が不足してる」
言わんとしていることはすぐに勘付いたが、洋の口から私を誘う言葉が漏れるのが珍しく嬉しいので、ついじらしてしまう。
「……」
「丈? 聴こえたか」
私が返事をしないので、訝し気に洋が眠そうな目を開けて私を見つめる。朝から驚きの連続だったせいで、洋の顔は血色が悪く少し青ざめていた。
「今日は頑張ったな。一人で随分奮闘していたな、見違えるようだよ」
「そうかな。俺ね……もう逃げるのはやめたんだ。前は襲い来る嫌なことから逃げて避けて、自分を殺して生きて来たけれども、丈の傍にずっといたいから。俺も……もっとしっかりしないといけないって思っているよ」
「そうか偉かったな。だが私には甘えていいんだよ。今日は頑張り過ぎたな」
「そっ……そう? 」
顔をかぁーっと赤らめいつもの洋らしく恥ずかしそうに、布団で顔を隠そうとするので、その手をシーツに貼り付けて顎を掬い、こちらを向かす。
「洋がこれで元気になるかな」
少し驚いて半開きになっている整った唇の間に舌を差し込み、口腔内をなぞってやる。そして、唇をぴったりと合わせ、優しく吸い付いてやる。
「んっ」
洋もうっとりと長い睫毛を伏せ躰から力を抜いていく。その無防備な姿に私の押さえつけていた感情が一気に高まってしまう。疲れた躰の洋を今すぐ抱きたくなる。
「洋……抱いても大丈夫なのか」
「丈……そうして。俺は壊れないよ。丈が不足しているから……明日からまたいろいろ頑張りたいから、丈で満たして欲しいんだ」
そう言った後、洋は恥ずかしそうにいよいよ顔を真っ赤に染めて、そっぽを向いてしまった。さっきまで青ざめていた顔も、あっという間に血が通い出し、赤く染まっていく様子にそそられる。
「嬉しいよ。君からそこまで誘ってもらえるなんて」
「おっ俺になに言わせるんだよ!まったく」
仮眠用の小さなベッドに私も躰を乗り入れる。簡易なベッドがギシッと軋む音が、静かな部屋に響くのが官能的だ。
洋の着ていたTシャツを裾からたくし上げて、露わになったその可愛い二つの乳首を指先で触れる。外気に急に触れたせいか、洋の躰がびくっと震える。
細い腰をきゅっと抱きしめ、そこを丹念に摘んだり、捏ねたりしていくと、洋の背中にうっすらと汗を感じる。
「はぅ……うっ」
堪え気味の小さな喘ぎ声が上がり出す。洋のこの声が好きだ。私だけにしか見せない聞かせないで欲しい。もう永遠に……
舌でそこをちゅっと吸ってやると、洋の腰もびくびくと震え出す。
「洋、感じてるな」
「んっ……言うな」
自分の手で漏れる声を押さえつつ、洋が恥ずかしがる。何度抱いても穢れない。いつも初めてのような反応をする洋の躰は、本当に私を魅了してやまない。
「疲れているのにいいのか。このまま抱いて」
「いちいち聞くなよ……さっき欲しいって言ったじゃないか」
洋のズボンのベルトを外し下着こと下へずらしていく。私も手早く白衣を脱ぎベルトを外す。それから二人は重なっていく。奥深いところまで一緒になるために重なった腰を抱きしめ、一緒に揺れて行く。
「あっ……丈っ丈……」
「なんだ? 」
「ふっ……深いよ」
ぴったりと隙間なく重なった私の躰と洋の躰。
感じるのは心と躰
揺れるのは心と躰
洋とだから
洋としか感じない
こんな気持ち。
持て余すほどの慈しみ。想い合い。
今私たちの所にやってきた過去の人たちにも感じて欲しい。求めあう人のもとへ戻って、感じて欲しい。
そう願うから、また明日から、私たちはそのことに正面突破していく。
今は束の間の休息時間だ。
私は洋から
洋は私から
生きて行く糧をもらう
分け与えてもらう
求められる喜び。営みにこんな意味があるんなんて誰も教えてくれなかった……知らなかった。
ありがとう
君がいてくれて
重なる出逢いに感謝して、二人手を繋ぎ、眠りに落ちていく。
『重なる出逢い』了
その時雲に隠れていた月が姿を現したのか、長い廊下に月明かりがそっと届いた。廊下が白く輝き、まるで道案内をしてくれているような光景だった。
その真っすぐな道はどこか非現実的な不思議なものだったが、確実に私たちが歩むべき道だということが伝わって来た。
もう迷わない。
洋と共に進むべき道が今ここにある。
****
私専用の研究室の仮眠ベッドに、洋をそっと降ろしてやる。
「洋、まだ眠いのか」
顔にかかった黒髪をそっとよけて、耳元で囁いてみる。
「……んっ……丈? 」
「そうだ」
「ここ……どこ? 」
「私の研究室だよ」
「そうなんだ。俺さ……不足してる」
「んっ? 腹減ったのか? 」
「違くて……足りてない……から、元気でない」
「何が? 」
「だから……丈が不足してる」
言わんとしていることはすぐに勘付いたが、洋の口から私を誘う言葉が漏れるのが珍しく嬉しいので、ついじらしてしまう。
「……」
「丈? 聴こえたか」
私が返事をしないので、訝し気に洋が眠そうな目を開けて私を見つめる。朝から驚きの連続だったせいで、洋の顔は血色が悪く少し青ざめていた。
「今日は頑張ったな。一人で随分奮闘していたな、見違えるようだよ」
「そうかな。俺ね……もう逃げるのはやめたんだ。前は襲い来る嫌なことから逃げて避けて、自分を殺して生きて来たけれども、丈の傍にずっといたいから。俺も……もっとしっかりしないといけないって思っているよ」
「そうか偉かったな。だが私には甘えていいんだよ。今日は頑張り過ぎたな」
「そっ……そう? 」
顔をかぁーっと赤らめいつもの洋らしく恥ずかしそうに、布団で顔を隠そうとするので、その手をシーツに貼り付けて顎を掬い、こちらを向かす。
「洋がこれで元気になるかな」
少し驚いて半開きになっている整った唇の間に舌を差し込み、口腔内をなぞってやる。そして、唇をぴったりと合わせ、優しく吸い付いてやる。
「んっ」
洋もうっとりと長い睫毛を伏せ躰から力を抜いていく。その無防備な姿に私の押さえつけていた感情が一気に高まってしまう。疲れた躰の洋を今すぐ抱きたくなる。
「洋……抱いても大丈夫なのか」
「丈……そうして。俺は壊れないよ。丈が不足しているから……明日からまたいろいろ頑張りたいから、丈で満たして欲しいんだ」
そう言った後、洋は恥ずかしそうにいよいよ顔を真っ赤に染めて、そっぽを向いてしまった。さっきまで青ざめていた顔も、あっという間に血が通い出し、赤く染まっていく様子にそそられる。
「嬉しいよ。君からそこまで誘ってもらえるなんて」
「おっ俺になに言わせるんだよ!まったく」
仮眠用の小さなベッドに私も躰を乗り入れる。簡易なベッドがギシッと軋む音が、静かな部屋に響くのが官能的だ。
洋の着ていたTシャツを裾からたくし上げて、露わになったその可愛い二つの乳首を指先で触れる。外気に急に触れたせいか、洋の躰がびくっと震える。
細い腰をきゅっと抱きしめ、そこを丹念に摘んだり、捏ねたりしていくと、洋の背中にうっすらと汗を感じる。
「はぅ……うっ」
堪え気味の小さな喘ぎ声が上がり出す。洋のこの声が好きだ。私だけにしか見せない聞かせないで欲しい。もう永遠に……
舌でそこをちゅっと吸ってやると、洋の腰もびくびくと震え出す。
「洋、感じてるな」
「んっ……言うな」
自分の手で漏れる声を押さえつつ、洋が恥ずかしがる。何度抱いても穢れない。いつも初めてのような反応をする洋の躰は、本当に私を魅了してやまない。
「疲れているのにいいのか。このまま抱いて」
「いちいち聞くなよ……さっき欲しいって言ったじゃないか」
洋のズボンのベルトを外し下着こと下へずらしていく。私も手早く白衣を脱ぎベルトを外す。それから二人は重なっていく。奥深いところまで一緒になるために重なった腰を抱きしめ、一緒に揺れて行く。
「あっ……丈っ丈……」
「なんだ? 」
「ふっ……深いよ」
ぴったりと隙間なく重なった私の躰と洋の躰。
感じるのは心と躰
揺れるのは心と躰
洋とだから
洋としか感じない
こんな気持ち。
持て余すほどの慈しみ。想い合い。
今私たちの所にやってきた過去の人たちにも感じて欲しい。求めあう人のもとへ戻って、感じて欲しい。
そう願うから、また明日から、私たちはそのことに正面突破していく。
今は束の間の休息時間だ。
私は洋から
洋は私から
生きて行く糧をもらう
分け与えてもらう
求められる喜び。営みにこんな意味があるんなんて誰も教えてくれなかった……知らなかった。
ありがとう
君がいてくれて
重なる出逢いに感謝して、二人手を繋ぎ、眠りに落ちていく。
『重なる出逢い』了
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