184 / 1,657
第4章
邂逅 5
しおりを挟む
「洋、荷物はまとめたか」
「あぁ!」
「じゃあ行くぞ」
ホテルでの生活も今日での生活も終わりだ。
あの日、日本から逃げるようにやってきたこの国で空いているホテルを何も考えずに予約したのだが、まさかここでkaiという俺達の過去と交わる人物と出逢うなんて思ってもいなかった。
本当にすべて決まっていたかのような運命の出逢いの連続。
次々とやってくる過去からのメッセージの連続だ。
****
フロントでチェックアウトしている丈を待っていると、横にkaiがやってきた。
「洋~もう行ってしまうのか。寂しくなるよ。もっとホテルでサービスしたかったな」
「kaiも遊びに来たらいい。あの丘の上の家に」
「いいのか。でも俺が行ったらお邪魔だろー? あっほら丈が睨んでるしっ」
「大丈夫だよ。来てくれよ。きっと……じゃあ行くよっ。kaiまたな」
ちらっと丈を見ると、不機嫌そうな表情を浮かべている。丈は相変わらず嫉妬深いなと苦笑してしまう。kaiは大丈夫だって分かっているはずなのに……まぁそう思わせてしまったのは、自分のせいでもあるので何とも言えない。
「洋、何話していた? 」
「kaiに新居に遊びにおいでって誘っておいたよ」
「……」
ますます顔を曇らせる丈を尻目に、俺は歩き出す。
一歩また一歩と、自分で決めた道をしっかりと。
外は晴天でまだ雷が鳴る気配はないが、俺は空に向かって手の平を差し出してみる。
「どうした? 雨なんて降っていないだろう」
「んっ……雷が鳴って逆さ虹が出るのって、一体何時なんだろうって思ったから」
「あぁそういうことか」
「まだその時ではないようだね」
「そうだな」
丈が優しい表情を浮かべてくれる。陽だまりように温かい丈の瞳の中は居心地が良い。
「きっともうすぐだよ。その時が迫ってきている」
なぁ……遠い昔の君は、もしかして大切な人と離れ離れになってしまったのか。
今、俺は丈の横にしっかり立っているよ。
離れないよ、もう……そう誓った。
俺が変わることで、君の悲しみを救えるのだろうか。
過去と現在──
時空が交われば君の歴史は変わるのか。
まだ見つからない答えを探して、今日も俺は自問自答を繰り返している。
「あぁ!」
「じゃあ行くぞ」
ホテルでの生活も今日での生活も終わりだ。
あの日、日本から逃げるようにやってきたこの国で空いているホテルを何も考えずに予約したのだが、まさかここでkaiという俺達の過去と交わる人物と出逢うなんて思ってもいなかった。
本当にすべて決まっていたかのような運命の出逢いの連続。
次々とやってくる過去からのメッセージの連続だ。
****
フロントでチェックアウトしている丈を待っていると、横にkaiがやってきた。
「洋~もう行ってしまうのか。寂しくなるよ。もっとホテルでサービスしたかったな」
「kaiも遊びに来たらいい。あの丘の上の家に」
「いいのか。でも俺が行ったらお邪魔だろー? あっほら丈が睨んでるしっ」
「大丈夫だよ。来てくれよ。きっと……じゃあ行くよっ。kaiまたな」
ちらっと丈を見ると、不機嫌そうな表情を浮かべている。丈は相変わらず嫉妬深いなと苦笑してしまう。kaiは大丈夫だって分かっているはずなのに……まぁそう思わせてしまったのは、自分のせいでもあるので何とも言えない。
「洋、何話していた? 」
「kaiに新居に遊びにおいでって誘っておいたよ」
「……」
ますます顔を曇らせる丈を尻目に、俺は歩き出す。
一歩また一歩と、自分で決めた道をしっかりと。
外は晴天でまだ雷が鳴る気配はないが、俺は空に向かって手の平を差し出してみる。
「どうした? 雨なんて降っていないだろう」
「んっ……雷が鳴って逆さ虹が出るのって、一体何時なんだろうって思ったから」
「あぁそういうことか」
「まだその時ではないようだね」
「そうだな」
丈が優しい表情を浮かべてくれる。陽だまりように温かい丈の瞳の中は居心地が良い。
「きっともうすぐだよ。その時が迫ってきている」
なぁ……遠い昔の君は、もしかして大切な人と離れ離れになってしまったのか。
今、俺は丈の横にしっかり立っているよ。
離れないよ、もう……そう誓った。
俺が変わることで、君の悲しみを救えるのだろうか。
過去と現在──
時空が交われば君の歴史は変わるのか。
まだ見つからない答えを探して、今日も俺は自問自答を繰り返している。
10
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる