重なる月

志生帆 海

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第4章

邂逅 5

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「洋、荷物はまとめたか」
「あぁ!」
「じゃあ行くぞ」

 ホテルでの生活も今日での生活も終わりだ。

 あの日、日本から逃げるようにやってきたこの国で空いているホテルを何も考えずに予約したのだが、まさかここでkaiという俺達の過去と交わる人物と出逢うなんて思ってもいなかった。

 本当にすべて決まっていたかのような運命の出逢いの連続。

 次々とやってくる過去からのメッセージの連続だ。

****

 フロントでチェックアウトしている丈を待っていると、横にkaiがやってきた。

「洋~もう行ってしまうのか。寂しくなるよ。もっとホテルでサービスしたかったな」
「kaiも遊びに来たらいい。あの丘の上の家に」
「いいのか。でも俺が行ったらお邪魔だろー? あっほら丈が睨んでるしっ」
「大丈夫だよ。来てくれよ。きっと……じゃあ行くよっ。kaiまたな」

 ちらっと丈を見ると、不機嫌そうな表情を浮かべている。丈は相変わらず嫉妬深いなと苦笑してしまう。kaiは大丈夫だって分かっているはずなのに……まぁそう思わせてしまったのは、自分のせいでもあるので何とも言えない。

「洋、何話していた? 」
「kaiに新居に遊びにおいでって誘っておいたよ」
「……」

 ますます顔を曇らせる丈を尻目に、俺は歩き出す。
 一歩また一歩と、自分で決めた道をしっかりと。

 外は晴天でまだ雷が鳴る気配はないが、俺は空に向かって手の平を差し出してみる。

「どうした? 雨なんて降っていないだろう」
「んっ……雷が鳴って逆さ虹が出るのって、一体何時なんだろうって思ったから」
「あぁそういうことか」
「まだその時ではないようだね」
「そうだな」

 丈が優しい表情を浮かべてくれる。陽だまりように温かい丈の瞳の中は居心地が良い。

「きっともうすぐだよ。その時が迫ってきている」

 なぁ……遠い昔の君は、もしかして大切な人と離れ離れになってしまったのか。

 今、俺は丈の横にしっかり立っているよ。

 離れないよ、もう……そう誓った。
 俺が変わることで、君の悲しみを救えるのだろうか。

 過去と現在──

 時空が交われば君の歴史は変わるのか。
 まだ見つからない答えを探して、今日も俺は自問自答を繰り返している。
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