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第4章
すれ違う 7
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ホテルの客室に戻ると電気をつけたまま洋がベッドで寝息を立てていた。ソファには、さっきまで洋が着ていた服が脱ぎ散らかしてあった。
「やれやれ……洋の奴。部屋に戻って、私がまだ帰ってないことに腹を立てて拗ねてたのか。それで急いで着替え、ベッドに潜り込んだのだな」
洋がこんな風に乱雑に衣服を脱ぎ捨てるなんて珍しい。それだけ洋の落胆が大きかったことが伝わってくる。そんな光景を目の当たりにして、拗ねた洋が可愛く感じた。もう許してやろう。明日には仲直りしよう。
そう誓ったのに、洋服を片づけているとシャツの胸ポケットから1枚の名刺が床に滑り落ちた。
「なんだ……これ?」
名刺を拾うと、そこには見覚えのある名前が書かれていた。
kai……
あのルームサービス係の男の名前だ。しかも裏返すと手書きで、自宅と思われる住所と電話番号が書いてある。これは一体どういう事なのか。
「洋……?」
すやすやと寝息を立てている洋のことを見つめた。もうこの男とは住所を教えてもらうほどの仲なのか。まだこの国に来てわずかしか経っていないのに。洋が頼れる人間は私しかいないと思っていたのに、これは私のエゴなのか。ふつふつと沸いてくる嫉妬と怒りが己の躰を蝕んでいく。自分勝手な感情だとは分かっているが、浴びるように飲んだ酒のせいで、理性が一気に吹き飛んでしまった。
「洋っ」
首元のネクタイをシュッと引き抜いて、洋の眠るベッドへ近づいた。洋が私のものだという証が欲しい。今日はどうしても私の洋を欲する感情がむき出しになってしまう。だから自分の感情をこれから勝手にぶつけるぞ。洋のまっすぐな目を見るのがいたたまれないので、ネクタイで目隠しをした。
こんなことを洋にするのは初めての行為だ。今まで、多少無理はさせたが洋の気持ちを尊重して抱いて来たのに。
あぁ……そうか、あの時の感情に似ているな。安志くんと洋が仲良さそうに改札から出て来た日。あの時も洋を半ば無理矢理、強引に抱いてしまった。もうあのようなことは絶対にしたくないと誓ったのに、私も意志の弱いただの人間だ。
「洋……抱くぞ」
「なっ……何?」
目隠しに気が付いた洋は動揺し、外そうともがき出す。そんな洋の手を掴み圧倒的な力でシーツの上に組み敷き自由を奪っていく。
驚いた洋は悲鳴に近い声をあげて抵抗した。
「丈っ!なんでこんなこと……取れよ! これっ」
「駄目だ」
抵抗する洋の口を、自分の酒臭い口で塞いで、それでも必死に抵抗する洋を腕の力で封じ込めていく。乱暴に洋の口腔に押し入り、深く舌を挿し入れかき混ぜていく。
「さっきあのホテルマンに路地でキスされそうになっていただろう?」
「違うっ!丈っ聞いて」
必死に顔を捩り、理由を話そうとする洋にいら立つ。
今は何も聞きたくない。
私が見たことが事実だ。
間違いないじゃないか。
そう思い込むと洋の言い訳なんて耳に入れたくもない。理性を失った。
ただ洋の躰を抱いて、洋とつながっていることを確かめたい私は、性急に洋の寝間着のボタンがはじけ飛ぶほど乱暴に脱がし、後ろ手に縛ってしまった。
もう止まらない。
情欲の火が付いた躰は、欲望のままに洋を貪る。
私がこんなことをするなんて……頭の片隅でそう思うのだが、洋を私の中に閉じ込めたい一心で、洋をきつく抱きしめていた。
「やれやれ……洋の奴。部屋に戻って、私がまだ帰ってないことに腹を立てて拗ねてたのか。それで急いで着替え、ベッドに潜り込んだのだな」
洋がこんな風に乱雑に衣服を脱ぎ捨てるなんて珍しい。それだけ洋の落胆が大きかったことが伝わってくる。そんな光景を目の当たりにして、拗ねた洋が可愛く感じた。もう許してやろう。明日には仲直りしよう。
そう誓ったのに、洋服を片づけているとシャツの胸ポケットから1枚の名刺が床に滑り落ちた。
「なんだ……これ?」
名刺を拾うと、そこには見覚えのある名前が書かれていた。
kai……
あのルームサービス係の男の名前だ。しかも裏返すと手書きで、自宅と思われる住所と電話番号が書いてある。これは一体どういう事なのか。
「洋……?」
すやすやと寝息を立てている洋のことを見つめた。もうこの男とは住所を教えてもらうほどの仲なのか。まだこの国に来てわずかしか経っていないのに。洋が頼れる人間は私しかいないと思っていたのに、これは私のエゴなのか。ふつふつと沸いてくる嫉妬と怒りが己の躰を蝕んでいく。自分勝手な感情だとは分かっているが、浴びるように飲んだ酒のせいで、理性が一気に吹き飛んでしまった。
「洋っ」
首元のネクタイをシュッと引き抜いて、洋の眠るベッドへ近づいた。洋が私のものだという証が欲しい。今日はどうしても私の洋を欲する感情がむき出しになってしまう。だから自分の感情をこれから勝手にぶつけるぞ。洋のまっすぐな目を見るのがいたたまれないので、ネクタイで目隠しをした。
こんなことを洋にするのは初めての行為だ。今まで、多少無理はさせたが洋の気持ちを尊重して抱いて来たのに。
あぁ……そうか、あの時の感情に似ているな。安志くんと洋が仲良さそうに改札から出て来た日。あの時も洋を半ば無理矢理、強引に抱いてしまった。もうあのようなことは絶対にしたくないと誓ったのに、私も意志の弱いただの人間だ。
「洋……抱くぞ」
「なっ……何?」
目隠しに気が付いた洋は動揺し、外そうともがき出す。そんな洋の手を掴み圧倒的な力でシーツの上に組み敷き自由を奪っていく。
驚いた洋は悲鳴に近い声をあげて抵抗した。
「丈っ!なんでこんなこと……取れよ! これっ」
「駄目だ」
抵抗する洋の口を、自分の酒臭い口で塞いで、それでも必死に抵抗する洋を腕の力で封じ込めていく。乱暴に洋の口腔に押し入り、深く舌を挿し入れかき混ぜていく。
「さっきあのホテルマンに路地でキスされそうになっていただろう?」
「違うっ!丈っ聞いて」
必死に顔を捩り、理由を話そうとする洋にいら立つ。
今は何も聞きたくない。
私が見たことが事実だ。
間違いないじゃないか。
そう思い込むと洋の言い訳なんて耳に入れたくもない。理性を失った。
ただ洋の躰を抱いて、洋とつながっていることを確かめたい私は、性急に洋の寝間着のボタンがはじけ飛ぶほど乱暴に脱がし、後ろ手に縛ってしまった。
もう止まらない。
情欲の火が付いた躰は、欲望のままに洋を貪る。
私がこんなことをするなんて……頭の片隅でそう思うのだが、洋を私の中に閉じ込めたい一心で、洋をきつく抱きしめていた。
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