165 / 1,657
第4章
君を待つ家 2
しおりを挟む
小高い丘の一軒家の前には立派な枝ぶりの大きな1本の樹があった。その樹はいつか見たことのあるものだった。
「ここ?」
「そうだよ」
「以前来たことがあるような……」
「洋もそう思うのか」
「あぁ」
「私もそう思っていた。特にこの家の前にある。この樹に見覚えがあってな」
「俺もそう思った。丈……明日は語学学校の前に、あの王の墓に行ってみようと思う」
「そうだな、私もそう思っていた。一人で大丈夫か」
「あぁ丈は仕事だろう?」
「だが……心配だ」
そう言いながら丈が背後から俺の躰をきゅっと抱きしめてくれた。温もりを背中からじんわりと感じ、幸せを噛みしめた。
俺は独りじゃない。肌を合わせる度にそう実感出来る。
「洋、この家でいいか」
「そうしよう、ここで待とう」
バックハグされる形で、俺達は暫くその樹の下に佇んでいた。秋風が静かに頬をかすめていくのは、涼しくて心地良い。
「ここ……いいね」
「あぁ落ち着くな」
そして丈の肩に抱かれ、振り向きざまに口づけをした。二人の近づく吐息は風に舞い、何かを誘なうように夜空に散った。
いよいよ始まるな。
きっと……もうすぐやってくる。
俺達がこの世で結びついた理由が分かる時がやってくる!
****
翌朝、俺は午前中が空いていたので、思い切ってあの王様の墓を訪ねた。
歴代の王が眠る故宮。ずらりと並ぶ王の墓を一つ一つを丁寧に見ながら石畳の道を歩んだ。
そして前回丈と一緒に来て、触れた途端に気を失ってしまった王を護ったと言われる名将の墓の前に立ってみた。
きっと、この武将だ。この人が過去から俺を守ってくれている人だ。改めて墓の前に立つとそう確信できた。もっとこの人について詳しく知りたい。異国の言葉が細かく彫ってあるが、残念ながら今の俺には解読不可能だ。
そこでスマホを出して写真に収めた。まずはこの文字を知ろう。何が書いてあるのか知りたいし、知らなくてはいけない。
「ここ?」
「そうだよ」
「以前来たことがあるような……」
「洋もそう思うのか」
「あぁ」
「私もそう思っていた。特にこの家の前にある。この樹に見覚えがあってな」
「俺もそう思った。丈……明日は語学学校の前に、あの王の墓に行ってみようと思う」
「そうだな、私もそう思っていた。一人で大丈夫か」
「あぁ丈は仕事だろう?」
「だが……心配だ」
そう言いながら丈が背後から俺の躰をきゅっと抱きしめてくれた。温もりを背中からじんわりと感じ、幸せを噛みしめた。
俺は独りじゃない。肌を合わせる度にそう実感出来る。
「洋、この家でいいか」
「そうしよう、ここで待とう」
バックハグされる形で、俺達は暫くその樹の下に佇んでいた。秋風が静かに頬をかすめていくのは、涼しくて心地良い。
「ここ……いいね」
「あぁ落ち着くな」
そして丈の肩に抱かれ、振り向きざまに口づけをした。二人の近づく吐息は風に舞い、何かを誘なうように夜空に散った。
いよいよ始まるな。
きっと……もうすぐやってくる。
俺達がこの世で結びついた理由が分かる時がやってくる!
****
翌朝、俺は午前中が空いていたので、思い切ってあの王様の墓を訪ねた。
歴代の王が眠る故宮。ずらりと並ぶ王の墓を一つ一つを丁寧に見ながら石畳の道を歩んだ。
そして前回丈と一緒に来て、触れた途端に気を失ってしまった王を護ったと言われる名将の墓の前に立ってみた。
きっと、この武将だ。この人が過去から俺を守ってくれている人だ。改めて墓の前に立つとそう確信できた。もっとこの人について詳しく知りたい。異国の言葉が細かく彫ってあるが、残念ながら今の俺には解読不可能だ。
そこでスマホを出して写真に収めた。まずはこの文字を知ろう。何が書いてあるのか知りたいし、知らなくてはいけない。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる