重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
153 / 1,657
第4章

逃避行 3

しおりを挟む
「洋、おいで」
「うっ……」

 シャワールームの中へもう一度洋を連れ込み、背中を向けるように立たせてから、ボディソープを泡立て、洋のまだ小さく震えている薄い躰にゆっくりと手を這わせ丁寧に洗ってやる。洋の躰を清めていくように労わるように、慎重に動かした。

 洋の薄いピンク色の綺麗な乳首の周りも、丁寧に指先で刺激してやる。ボディソープの白い泡から擦ったり摘んだりする度に、どんどん尖っていくその先端がちらちらと見え隠れするのが艶めかしい。

「あっ……んんっ……」

 さらに手を下肢に滑るように降ろしていく。洋の細い腰から形の良い尻に泡をつけながら、手を行ったり来たりさせ、その美しい躰のラインを確かめる。

 久しぶりに洋の躰に触れることが出来、この瞬間をどんなに求めていたかを噛みしめた。洋を初めて抱いてから、こんなにも長い間抱かない日はなかった。

 やっとだ、やっと……洋に触れられる。そう思うと熱い想いが躰の奥底からじわっと湧き上がってくる。

 止まらない。

 理性というものがなくなっていくこの感覚が懐かしい。

「洋……私の方こそ洋を助けられなくて……すまなかった」
「丈は何も悪い事なんてしていない。……むしろ……したのは俺の方だ」
「洋っ! もう自分を貶めるのはやめろ」

 いつまでも汚れたことを気にしている洋がいじらしいが、いつまでもそれでは駄目だ。もどかしい思いを込めて、洋の顎を掴んで振り向かせ、口づけを落としていく。

 二人の胸の間に泡が挟まり、ヌルヌルとした感触にぞくっとくる。

「私には、もう洋だけなんだ。洋とここにいるのだ。だから洋も私だけを見ていろ!」

 洋の指を絡ませ絡めとり、シャワールームのガラス戸に押し付けながら、唇を更に深く奪っていく。

 シャワーの水音が跳ねるように聞こえてくる中、思いの丈を込めた口づけと抱擁を繰り返していくと、洋の唇から呑み込み切れなかった唾液がつぅーっと落ちて行った。

「んっ……んんっ丈っ……本当に俺でいいのか」
「当たり前だ」
「じゃあ……俺のことを……また……前のように抱いてくれるのか」

 この期に及んでもそんなことを心配する洋に、溜息が漏れる。

「当たり前だろう。お前が欲しい。抱いていいか」
「こっここで?」
「あぁ」
「分かった……して……上書きして欲しいんだ。すべて消し去って」

 首を赤く染めた洋が、恥ずかしそうに目を潤ましながら私を見上げる。その華奢な首元を私は噛みつくように吸う。

「あぁ!」

 途端に洋がのけぞるように喉を逸らして啼く。

「はっ、はぁ……んっ……」

 鎖骨のあたりまで舌を這わし手で洋の弱い乳首を揉み込んでいくと、洋の喘ぎが止まらなくなっていく。

「大丈夫か」
「うっ……うん」

 指先にシャワージェルをつけ、洋の蕾にあてがう。

「くっ」

 洋にとっても私と触れ合うのは気が付けば一ヶ月ぶりになっている。洋の方も緊張して躰が硬くなっているのが分かる。

「少しきついな。しっかり解してやるから心配するな」

 指先をズブっと洋の中に入れて、洋の感じるところを探してやり、刺激していけば、徐々に洋の内壁が蕩けだしていく。

「はうっ……あっ……」

 なんともいえない艶めかしい声が洋から上がってくる。この声だ。この声を聴きたかった。

 私にしか聴けない、この洋の感じている喘ぎ声が耳に届いた時、やっと私の腕の中に戻って来てくれたと実感できた。

「洋、止まらない。酷くしそうだ」
「いい……丈になら何をされてもいい!」




しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...