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第3章
明けない夜はない 11
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明け方になって洋の熱はやっと下がってきたようだ。あれから着替えさせお粥を食べさせ、洋が深い眠りにつくのを見届けてから、俺も洋のベッドの下で眠りについた。
洋への恋を諦められるかというと……100%は無理だ。それでも諦め、ふっきれたふりをしてでも洋に笑って欲しくて、彼に降りかかった火の粉を俺が払ってやりたかった。
それ位させてくれ。友達以上になれなかった俺たちだが、せめて友達ではいたい。苦しい……それでも俺は我慢して洋の傍にいる方を選んだ。そうしないと洋は俺の手助けも拒否し、独り地獄に身を投じてしまう危うさを持っているから。
今回の義父との事件は、そういうことが起こりうる危険を十分含んでいる。
この世から洋がいなくなるなんて、考えられない。
そんな世界は見たくない!
だから俺の気持ちには、しっかりと蓋をする。
洋と俺は縁がなかったのだ。
洋にはもっと強い縁で結ばれた相手がいたということだ。
****
洋のおでこに触れて熱を確かめる。こうやって友として触れられるだけでいい。
「……安志?」
「良かった。熱……下がったな」
「本当?」
俺に向かって少し微笑んでくれる。全てを俺に知られ、昨夜はボロボロになった洋だったが、その穢れなき花のような笑顔は健在だ。どんなに汚されても洋自身が生まれながらに持っている気高さは誰にも侵せない。
トントン──
ノック音がする。母だ。
「洋くん、どう?熱下がった?」
「おばさん……すみません。すっかり迷惑掛けてしまって」
「いいのよ。洋くんは我が子のようなものだもの」
「……ありがとうございます」
母は洋の顔を覗き込み、少し表情を曇らせた。
「少し泣いた?」
「……はい」
「何か寂しかったのね」
「その……久しぶりにおばさんの顔みたら、母のこと思い出して。いい年して俺、恥ずかしい」
「いいのよ。あなたは頑張って来たわ」
母は洋のおでこに手を当て……
「熱は下がったみたいだけど、まだまだ病み上がりね。心配性のあなたのお義父さんには、おばさんから上手く言ってあげるから、もう1日我が家で休んでいきなさい」
丁度そんな話をしていると、憎き洋の義父からの着信があり、躊躇いがちに洋が電話に出た。くそっよくもヌケヌケと電話してこられるな。この犯罪者め!今すぐ怒鳴り込んでやりたい気持ちを抑えるのに必死だ。
「……もしもし、はい。父さん、はいまだ……安志の家にいます。はい、明日から会社に行きますので、もう一泊だけここでお世話になりたいのですが……いいですか」
「……おばさん、父が代わってほしいって」
母がウインクして心得たりという顔で、頷く。
「もしもし崔加さん?ええ、そうね。熱は下がったけれども、まだ本調子じゃないみたいで……今晩まで我が家に泊めますから。分かりました。明日には家に帰しますわ」
やれやれといった表情を母が浮かべる。
「ふぅ洋くん、崔加さんは相変わらずね、疑い深いわ、ここの写真送ってですって」
「……くっ」
洋は悲しく……苦し気な声を漏らした。
洋……お前、ずっと義理のお父さんとこんな関係を続けていたのか。俺は何も分かっていなかった。中学・高校と洋を一番近くで見て来たくせに。もっと早くこの異常な状態に気づけていたら、何かが違っていたのではと後悔してしまった。
「おばさん、すみません。迷惑ばかりかけて」
「いいのよ。下で朝食を食べて……あら? 安志、会社は?」
「今日は休み」
「そうだったのね。じゃあ洋くんと一緒に過ごしてあげてね。久しぶりの再会でしょ」
「あぁそうするよ、母さん」
とにかく今日一日、俺と洋の二人きりの時間が持てる。そう思うと硬くなっていた心も緩みだすのを感じた。この状況の打破のために……俺がなんとかしてやりたいと思う気持ちが強くなる。
洋への恋を諦められるかというと……100%は無理だ。それでも諦め、ふっきれたふりをしてでも洋に笑って欲しくて、彼に降りかかった火の粉を俺が払ってやりたかった。
それ位させてくれ。友達以上になれなかった俺たちだが、せめて友達ではいたい。苦しい……それでも俺は我慢して洋の傍にいる方を選んだ。そうしないと洋は俺の手助けも拒否し、独り地獄に身を投じてしまう危うさを持っているから。
今回の義父との事件は、そういうことが起こりうる危険を十分含んでいる。
この世から洋がいなくなるなんて、考えられない。
そんな世界は見たくない!
だから俺の気持ちには、しっかりと蓋をする。
洋と俺は縁がなかったのだ。
洋にはもっと強い縁で結ばれた相手がいたということだ。
****
洋のおでこに触れて熱を確かめる。こうやって友として触れられるだけでいい。
「……安志?」
「良かった。熱……下がったな」
「本当?」
俺に向かって少し微笑んでくれる。全てを俺に知られ、昨夜はボロボロになった洋だったが、その穢れなき花のような笑顔は健在だ。どんなに汚されても洋自身が生まれながらに持っている気高さは誰にも侵せない。
トントン──
ノック音がする。母だ。
「洋くん、どう?熱下がった?」
「おばさん……すみません。すっかり迷惑掛けてしまって」
「いいのよ。洋くんは我が子のようなものだもの」
「……ありがとうございます」
母は洋の顔を覗き込み、少し表情を曇らせた。
「少し泣いた?」
「……はい」
「何か寂しかったのね」
「その……久しぶりにおばさんの顔みたら、母のこと思い出して。いい年して俺、恥ずかしい」
「いいのよ。あなたは頑張って来たわ」
母は洋のおでこに手を当て……
「熱は下がったみたいだけど、まだまだ病み上がりね。心配性のあなたのお義父さんには、おばさんから上手く言ってあげるから、もう1日我が家で休んでいきなさい」
丁度そんな話をしていると、憎き洋の義父からの着信があり、躊躇いがちに洋が電話に出た。くそっよくもヌケヌケと電話してこられるな。この犯罪者め!今すぐ怒鳴り込んでやりたい気持ちを抑えるのに必死だ。
「……もしもし、はい。父さん、はいまだ……安志の家にいます。はい、明日から会社に行きますので、もう一泊だけここでお世話になりたいのですが……いいですか」
「……おばさん、父が代わってほしいって」
母がウインクして心得たりという顔で、頷く。
「もしもし崔加さん?ええ、そうね。熱は下がったけれども、まだ本調子じゃないみたいで……今晩まで我が家に泊めますから。分かりました。明日には家に帰しますわ」
やれやれといった表情を母が浮かべる。
「ふぅ洋くん、崔加さんは相変わらずね、疑い深いわ、ここの写真送ってですって」
「……くっ」
洋は悲しく……苦し気な声を漏らした。
洋……お前、ずっと義理のお父さんとこんな関係を続けていたのか。俺は何も分かっていなかった。中学・高校と洋を一番近くで見て来たくせに。もっと早くこの異常な状態に気づけていたら、何かが違っていたのではと後悔してしまった。
「おばさん、すみません。迷惑ばかりかけて」
「いいのよ。下で朝食を食べて……あら? 安志、会社は?」
「今日は休み」
「そうだったのね。じゃあ洋くんと一緒に過ごしてあげてね。久しぶりの再会でしょ」
「あぁそうするよ、母さん」
とにかく今日一日、俺と洋の二人きりの時間が持てる。そう思うと硬くなっていた心も緩みだすのを感じた。この状況の打破のために……俺がなんとかしてやりたいと思う気持ちが強くなる。
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