119 / 1,657
第3章
明けない夜はない 9
しおりを挟む
再び眠りにつく洋を俺はずっと見つめていた。洋にこんなことをしでかしたのは一体誰だ。誰かに何かをされたことは明白なのに、何故言わない?もしかして……言えないような相手なのか。
「安志、早くご飯食べちゃいなさいよー」
階下から母さんが呼んでる。
****
「洋くん着替えさせてあげた?」
「あっ……うん」
まだ母さんには黙っておこう。洋に何かあったにせよ、俺達は社会人だ。もう子供じゃない。出来る所までは洋と二人で頑張ってみよう。洋のためにそうしたかった。
「安志、それで躰の方には何もなかった?」
「あっ?う……うん。大丈夫だったよ」
「なら良かったわ。でもあの首の痣は?洋くん何て言っていたの?」
「あぁ、ちょっとはめ外して友人とふざけたみたいだよ。恥ずかしそうに言ってた」
「なんだ、そうなのね。母さん心配しちゃった。実はあの人から何度も電話がきていたから」
「あの人って?」
「ほら洋くんの新しいお父さん……崔加さんのことよ」
「あぁあの人か」
「洋くんが寝ている間も、何度も電話あるし、今洋くんが何処にいるのかしつこいくらい聞いていたから、母さん電話で説明する羽目になったわよ」
「へぇ……アメリカからわざわざ?」
「そうなのよ、変でしょ。もともとあの人は少し変わっているから、洋くんのお母さんの夕も苦労していたもの。疑い深いし束縛したがるでしょ。あっこんなこと安志に言っても、もう仕方がないことなのよね。肝心の夕がもうこの世にいないのに……」
母さんはそこまで話して、悲し気に口を閉じた。洋のお母さんが再婚した頃、俺はまだ小学生だった。何も分からない子供だった。
「……だよな」
****
「洋くんに少し食べなさいって伝えてね、あと水分もね、明日も泊まっていいからね」
「分かった」
夕食を久しぶりに両親と食べた後、母さんが作ってくれたお粥を持って二階へ上がった。洋はまだ眠っているのか、ドアを開けても身動ぎ一つしなかった。
寝汗かいているし、何だよ……結局着替えてないじゃん。起こそうと思い、洋の顔を覗き込むと、携帯が枕元に置かれていた。
そういえば携帯番号を変えたとか言っていたな。なんで急に?訝し気に携帯を見ていると、メールの着信があったようでチカチカと点滅している。
少し経つとまた届く。何度も何度も新着メールが届いているようだ。この定期的に送り付けられてくる大量のメールは一体誰からだろう?
丈っていう人は、わざわざ俺に連絡するくらいだから、洋の連絡先を知らないだろうし、こんな状態の洋にしつこくメールしてくるのは誰なのか。
俺は洋には悪いと思ったが、そっと洋の携帯を手に取ってみた。
見ても良いだろうか。もしかしたらこの先に洋が隠すものがあるのかもしれない。何かが分かるかもしれない。洋が自分から言えないのなら、俺が調べないといけない。
迷った末に、緊急事態だと自分に言い聞かせ、思い切ってメールを開いてみた。
「安志、早くご飯食べちゃいなさいよー」
階下から母さんが呼んでる。
****
「洋くん着替えさせてあげた?」
「あっ……うん」
まだ母さんには黙っておこう。洋に何かあったにせよ、俺達は社会人だ。もう子供じゃない。出来る所までは洋と二人で頑張ってみよう。洋のためにそうしたかった。
「安志、それで躰の方には何もなかった?」
「あっ?う……うん。大丈夫だったよ」
「なら良かったわ。でもあの首の痣は?洋くん何て言っていたの?」
「あぁ、ちょっとはめ外して友人とふざけたみたいだよ。恥ずかしそうに言ってた」
「なんだ、そうなのね。母さん心配しちゃった。実はあの人から何度も電話がきていたから」
「あの人って?」
「ほら洋くんの新しいお父さん……崔加さんのことよ」
「あぁあの人か」
「洋くんが寝ている間も、何度も電話あるし、今洋くんが何処にいるのかしつこいくらい聞いていたから、母さん電話で説明する羽目になったわよ」
「へぇ……アメリカからわざわざ?」
「そうなのよ、変でしょ。もともとあの人は少し変わっているから、洋くんのお母さんの夕も苦労していたもの。疑い深いし束縛したがるでしょ。あっこんなこと安志に言っても、もう仕方がないことなのよね。肝心の夕がもうこの世にいないのに……」
母さんはそこまで話して、悲し気に口を閉じた。洋のお母さんが再婚した頃、俺はまだ小学生だった。何も分からない子供だった。
「……だよな」
****
「洋くんに少し食べなさいって伝えてね、あと水分もね、明日も泊まっていいからね」
「分かった」
夕食を久しぶりに両親と食べた後、母さんが作ってくれたお粥を持って二階へ上がった。洋はまだ眠っているのか、ドアを開けても身動ぎ一つしなかった。
寝汗かいているし、何だよ……結局着替えてないじゃん。起こそうと思い、洋の顔を覗き込むと、携帯が枕元に置かれていた。
そういえば携帯番号を変えたとか言っていたな。なんで急に?訝し気に携帯を見ていると、メールの着信があったようでチカチカと点滅している。
少し経つとまた届く。何度も何度も新着メールが届いているようだ。この定期的に送り付けられてくる大量のメールは一体誰からだろう?
丈っていう人は、わざわざ俺に連絡するくらいだから、洋の連絡先を知らないだろうし、こんな状態の洋にしつこくメールしてくるのは誰なのか。
俺は洋には悪いと思ったが、そっと洋の携帯を手に取ってみた。
見ても良いだろうか。もしかしたらこの先に洋が隠すものがあるのかもしれない。何かが分かるかもしれない。洋が自分から言えないのなら、俺が調べないといけない。
迷った末に、緊急事態だと自分に言い聞かせ、思い切ってメールを開いてみた。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる