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第3章
明けない夜はない 7
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「んっ……」
その時洋の瞼が動き、ゆっくりと目を覚まし、熱で潤んだ瞳で、ぼんやりと俺のことを見上げてきた。
「……安志か。さっきは助けてくれてありがとう」
「あっああ」
せっかく洋が微笑んでくれたのに、俺は衝撃で顔も躰も強張って上手く微笑み返せない。いつもの俺らしくない緊張した面持ちに、洋が不思議がっているのが伝わってくる。
「どうした?」
「洋……それ……」
「えっ?」
固まった俺の視線を洋が辿り、自分のワイシャツがはだけて、胸の痣が丸見えになっていることに気が付いてしまった。
「つっ! なんで! あっ……嫌だ! 見るな!」
途端に激しく動揺した面持ちの洋は真っ赤な顔でワイシャツを手繰り寄せ、じわっと目を潤ませて布団の中に潜り込んでしまった。頭まで布団を被りブルブルと震えている。
「ひどい……何故、見てしまったのか」
勝手に見たのは悪かったが、それどころじゃない。これを誰につけられたのかしっかり問いたださないと!見過ごすわけにはいかない。
「洋……一体何があった? 誰にやられた? お願いだ、話してくれ。もしかしてあの丈って奴にやられたのか」
「えっ……どうして丈のことを?」
洋が不思議そうな顔で、慌てて飛び起きた。
「くそっ!やっぱりあいつなのか。今すぐ連絡して呼び出してやる」
「待って!なんで丈の連絡先を知っている?」
「会社に連絡があったんだよ。お前が帰って来ないって探しているみたいだった」
「丈が……」
「あいつに無理矢理やられたのか。だから逃げ出したのか。俺が殴り込んでやる!」
「安志っ! やめろっ! 頼む!」
ポケットの中の丸めたメモを取り出し、丈へ電話をかけようとすると、洋が必死な形相で携帯を奪おうとした。
「洋……離せ! これははっきりさせないと」
すると、はらはらと洋の眼から涙が溢れ、真っ青な顔になっていった。
「安志、違うんだよ。違う……駄目だ。丈にだけは知られたくない。お願いだから言わないでくれ。うっ……」
洋が俺の携帯に手を伸ばしてくる。
躰を二つに折り懇願するように縋りついてくる。
その手は小刻みに震え、華奢な肩は折れてしまいそうに儚げに揺れていた。
その時洋の瞼が動き、ゆっくりと目を覚まし、熱で潤んだ瞳で、ぼんやりと俺のことを見上げてきた。
「……安志か。さっきは助けてくれてありがとう」
「あっああ」
せっかく洋が微笑んでくれたのに、俺は衝撃で顔も躰も強張って上手く微笑み返せない。いつもの俺らしくない緊張した面持ちに、洋が不思議がっているのが伝わってくる。
「どうした?」
「洋……それ……」
「えっ?」
固まった俺の視線を洋が辿り、自分のワイシャツがはだけて、胸の痣が丸見えになっていることに気が付いてしまった。
「つっ! なんで! あっ……嫌だ! 見るな!」
途端に激しく動揺した面持ちの洋は真っ赤な顔でワイシャツを手繰り寄せ、じわっと目を潤ませて布団の中に潜り込んでしまった。頭まで布団を被りブルブルと震えている。
「ひどい……何故、見てしまったのか」
勝手に見たのは悪かったが、それどころじゃない。これを誰につけられたのかしっかり問いたださないと!見過ごすわけにはいかない。
「洋……一体何があった? 誰にやられた? お願いだ、話してくれ。もしかしてあの丈って奴にやられたのか」
「えっ……どうして丈のことを?」
洋が不思議そうな顔で、慌てて飛び起きた。
「くそっ!やっぱりあいつなのか。今すぐ連絡して呼び出してやる」
「待って!なんで丈の連絡先を知っている?」
「会社に連絡があったんだよ。お前が帰って来ないって探しているみたいだった」
「丈が……」
「あいつに無理矢理やられたのか。だから逃げ出したのか。俺が殴り込んでやる!」
「安志っ! やめろっ! 頼む!」
ポケットの中の丸めたメモを取り出し、丈へ電話をかけようとすると、洋が必死な形相で携帯を奪おうとした。
「洋……離せ! これははっきりさせないと」
すると、はらはらと洋の眼から涙が溢れ、真っ青な顔になっていった。
「安志、違うんだよ。違う……駄目だ。丈にだけは知られたくない。お願いだから言わないでくれ。うっ……」
洋が俺の携帯に手を伸ばしてくる。
躰を二つに折り懇願するように縋りついてくる。
その手は小刻みに震え、華奢な肩は折れてしまいそうに儚げに揺れていた。
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