109 / 1,657
第3章
君の声 7
しおりを挟む
バイクに跨り夜道を走り抜ける。風を斬り真っすぐな道をひたすらに走り抜けると、頬にあたる夏の終わりの涼風が心地良かった。
遠くにはピカピカと雷が光っているのが見える。そろそろ一雨来るな。早く戻ろう。
いつものテラスハウスに俺は帰って来た。オレンジ色の明かりが心も体も温めてくれるよ。玄関を開けると飛び込んでくるのは、ほら……丈の優しい眼差しだ。
「洋お帰り、遅かったな。雨に降られなかったか?」
「あぁ、ギリギリセーフ!少し仕事がトラブって遅くなってごめん」
「お疲れ、こっちにおいで」
「夕食は何?」
「ふっ食いしん坊だな、毎度その台詞だ」
「ふふっ。丈が作ってくれるなら何でも美味しいよ」
「やっぱり少し太ったんじゃないか」
「またっ!そうやってからかうな!着替えて来るから少し待っていて」
俺は部屋に着替えに行く。良かった……すべて部屋は元通りになっている。スーツを脱ごうとネクタイに手を添えると、背後に丈がやってきた。
「丈……どうした?」
「洋、帰ってきてくれたんだな」
「?」
「待っていたよ。いつものように過ごして、いつも君の帰りを」
少し目が赤くなっている丈を不思議に思う。
「俺いつものようにここに戻ってきただけだよ? 一体どうした?」
「洋……だって君はしばらく帰って来なかったから」
丈が愛おしそうに見つめてくる。
「馬鹿だな、丈は。俺がどこへ行くと思った? 俺の居場所はここしかないのに」
「分かっているが……」
丈の手がネクタイを外そうと伸びてくる。
「んっ」
ネクタイをするりと抜かれ、ワイシャツの襟に手が近づく。
「自分で出来るよ」
「今すぐに抱きたい」
「夕食は?腹減ったのに……」
「洋を食べてからじゃ駄目か」
ストレートに丈が甘えてくるから、俺も思わず赤面してしまう。
「そっそうか」
丈に優しくベッドに押し倒されて、ワイシャツのボタンをゆっくりとはずされていく。丈の優しい手が俺の躰を隈なく撫でていく。撫でてもらった場所がポカポカと温かく感じる。
「可愛いな」
「また……可愛いって、言うな、いつもいつも」
俺の髪を梳くように、ゆっくり優しく撫でてくれる。そして口づけされる。角度を変えながら、啄むような優しい触れ合い。徐々にお互いの息が荒くなり、やがて求めあっていく深い口づけに変化していく。
「んっ……」
丈の口づけが首筋を辿り降りてくる。
鎖骨に沿って、チュッときつく吸われると肌が赤く色づいていく。あぁ丈が印をつけてくれている。
「丈だけの俺だから、いくらでもつけていいよ」
平らな胸の小さな突起も丈が触れるとピンと上を向いて立ち上がり、丈に摘まれれば固くなっていく。乳首を丈がじゅっと音が立つほど激しく吸ってくると、躰の奥が疼きだす。
男なのに……こんなところで感じるなんてといつも不思議に思う。
丈が好きだ。俺に優しく触れてくれる丈が好きだ。
「あっ……んっ」
快楽の波が途端にやってきて、俺のものも苦しくなってくる。気が付くとズボンも下着ごと降ろされ、シャツも大きく開かれ、ほとんど裸の状態でベッドで
丈にしがみつき、腰を揺らしている。
「丈っ……もっときつく……」
「洋、もう何処にもいくな」
「どうして? ずっと此処にいるのに……今日の丈は少し変だよ。俺いつも傍にいただろう?」
「洋……不安だ。何があった?」
「えっ! 一体何を言う?」
何故か泣きそうな顔で、丈が俺の頬を撫でる。
「どうした? 俺はちゃんといるから大丈夫だ」
丈の指が俺に入り込み一定のリズムで動かされると、俺の腰もゆらゆらと勝手に揺れ出してしまう。もう指だけじゃ物足りなくなって、早く挿れて欲しくて堪らなくなる。
「丈……焦らさないで……俺」
「洋は何をして欲しい?言ってみろ」
「えっ……言えない……」
自分から誘うなんて恥ずかしいのに。今日に限って丈が焦らして焦らしてなかなか挿れてくれない。
「洋……今日は聴きたい。洋が誘う声を」
「丈、お前って奴は……」
「なっ今日だけだから」
「……」
いつもの丈らしくない甘え方に不安になる。でも丈になら何でもしてあげたい。そして何でもして欲しい。だから俺は意を決して脚を震えながら左右に控えめに開き、丈を誘う。
「丈……いいよ。来て……ここに……」
覆い被さって来る丈の熱いものがズンっと入り込んでくる。丈のもので俺の中が満ちていく。一瞬きつい圧迫感を感じるが、すぐに満たされている温かい気持ちになっていく。
「くっ」
奥へ奥へ突き上げられる。躰が優しく揺さぶれるたびに、俺の喉から甘い声が漏れていく。
「あっ……んっ……あっ」
「洋よかった。戻ってきてくれて」
「丈が……丈が好きだ。丈だけしか知らなかった……なのに……」
なのに?
その言葉を呟いた途端、何故か悲しみが堪え切れずに涙が頬を伝い、零れ落ちた。
その涙はきらりと光り、俺の胸の月輪のネックレスをすり抜けていく。
いつかみた光景だ。
俺の月輪のネックレスは何故か欠けていた。
***
「はっ…」
夢だとは分かっていた。
「夢だったのか」
丈に抱かれる夢を見ていることは、夢の中の俺も気づいていた。それでも夜中に目覚めた俺は、本当に躰だけは丈のもとに行っていたのではないかと思うほど、興奮し熱く火照てり幸せで満たされた気持ちになっていた。
月輪のネックレス。お前が俺を丈のもとへと誘ってくれたのか。夢でいいから会いたいと願ったからなのか。
丈……
もうあんな風に抱かれることはないと分かっていても、丈にあんな風に抱かれる夢を見ることが出来て、嬉しい気持ちの方が勝るよ。諦められない……溢れる想いを持て余している。
今、俺はただ……ただ、丈が恋しい。
遠くにはピカピカと雷が光っているのが見える。そろそろ一雨来るな。早く戻ろう。
いつものテラスハウスに俺は帰って来た。オレンジ色の明かりが心も体も温めてくれるよ。玄関を開けると飛び込んでくるのは、ほら……丈の優しい眼差しだ。
「洋お帰り、遅かったな。雨に降られなかったか?」
「あぁ、ギリギリセーフ!少し仕事がトラブって遅くなってごめん」
「お疲れ、こっちにおいで」
「夕食は何?」
「ふっ食いしん坊だな、毎度その台詞だ」
「ふふっ。丈が作ってくれるなら何でも美味しいよ」
「やっぱり少し太ったんじゃないか」
「またっ!そうやってからかうな!着替えて来るから少し待っていて」
俺は部屋に着替えに行く。良かった……すべて部屋は元通りになっている。スーツを脱ごうとネクタイに手を添えると、背後に丈がやってきた。
「丈……どうした?」
「洋、帰ってきてくれたんだな」
「?」
「待っていたよ。いつものように過ごして、いつも君の帰りを」
少し目が赤くなっている丈を不思議に思う。
「俺いつものようにここに戻ってきただけだよ? 一体どうした?」
「洋……だって君はしばらく帰って来なかったから」
丈が愛おしそうに見つめてくる。
「馬鹿だな、丈は。俺がどこへ行くと思った? 俺の居場所はここしかないのに」
「分かっているが……」
丈の手がネクタイを外そうと伸びてくる。
「んっ」
ネクタイをするりと抜かれ、ワイシャツの襟に手が近づく。
「自分で出来るよ」
「今すぐに抱きたい」
「夕食は?腹減ったのに……」
「洋を食べてからじゃ駄目か」
ストレートに丈が甘えてくるから、俺も思わず赤面してしまう。
「そっそうか」
丈に優しくベッドに押し倒されて、ワイシャツのボタンをゆっくりとはずされていく。丈の優しい手が俺の躰を隈なく撫でていく。撫でてもらった場所がポカポカと温かく感じる。
「可愛いな」
「また……可愛いって、言うな、いつもいつも」
俺の髪を梳くように、ゆっくり優しく撫でてくれる。そして口づけされる。角度を変えながら、啄むような優しい触れ合い。徐々にお互いの息が荒くなり、やがて求めあっていく深い口づけに変化していく。
「んっ……」
丈の口づけが首筋を辿り降りてくる。
鎖骨に沿って、チュッときつく吸われると肌が赤く色づいていく。あぁ丈が印をつけてくれている。
「丈だけの俺だから、いくらでもつけていいよ」
平らな胸の小さな突起も丈が触れるとピンと上を向いて立ち上がり、丈に摘まれれば固くなっていく。乳首を丈がじゅっと音が立つほど激しく吸ってくると、躰の奥が疼きだす。
男なのに……こんなところで感じるなんてといつも不思議に思う。
丈が好きだ。俺に優しく触れてくれる丈が好きだ。
「あっ……んっ」
快楽の波が途端にやってきて、俺のものも苦しくなってくる。気が付くとズボンも下着ごと降ろされ、シャツも大きく開かれ、ほとんど裸の状態でベッドで
丈にしがみつき、腰を揺らしている。
「丈っ……もっときつく……」
「洋、もう何処にもいくな」
「どうして? ずっと此処にいるのに……今日の丈は少し変だよ。俺いつも傍にいただろう?」
「洋……不安だ。何があった?」
「えっ! 一体何を言う?」
何故か泣きそうな顔で、丈が俺の頬を撫でる。
「どうした? 俺はちゃんといるから大丈夫だ」
丈の指が俺に入り込み一定のリズムで動かされると、俺の腰もゆらゆらと勝手に揺れ出してしまう。もう指だけじゃ物足りなくなって、早く挿れて欲しくて堪らなくなる。
「丈……焦らさないで……俺」
「洋は何をして欲しい?言ってみろ」
「えっ……言えない……」
自分から誘うなんて恥ずかしいのに。今日に限って丈が焦らして焦らしてなかなか挿れてくれない。
「洋……今日は聴きたい。洋が誘う声を」
「丈、お前って奴は……」
「なっ今日だけだから」
「……」
いつもの丈らしくない甘え方に不安になる。でも丈になら何でもしてあげたい。そして何でもして欲しい。だから俺は意を決して脚を震えながら左右に控えめに開き、丈を誘う。
「丈……いいよ。来て……ここに……」
覆い被さって来る丈の熱いものがズンっと入り込んでくる。丈のもので俺の中が満ちていく。一瞬きつい圧迫感を感じるが、すぐに満たされている温かい気持ちになっていく。
「くっ」
奥へ奥へ突き上げられる。躰が優しく揺さぶれるたびに、俺の喉から甘い声が漏れていく。
「あっ……んっ……あっ」
「洋よかった。戻ってきてくれて」
「丈が……丈が好きだ。丈だけしか知らなかった……なのに……」
なのに?
その言葉を呟いた途端、何故か悲しみが堪え切れずに涙が頬を伝い、零れ落ちた。
その涙はきらりと光り、俺の胸の月輪のネックレスをすり抜けていく。
いつかみた光景だ。
俺の月輪のネックレスは何故か欠けていた。
***
「はっ…」
夢だとは分かっていた。
「夢だったのか」
丈に抱かれる夢を見ていることは、夢の中の俺も気づいていた。それでも夜中に目覚めた俺は、本当に躰だけは丈のもとに行っていたのではないかと思うほど、興奮し熱く火照てり幸せで満たされた気持ちになっていた。
月輪のネックレス。お前が俺を丈のもとへと誘ってくれたのか。夢でいいから会いたいと願ったからなのか。
丈……
もうあんな風に抱かれることはないと分かっていても、丈にあんな風に抱かれる夢を見ることが出来て、嬉しい気持ちの方が勝るよ。諦められない……溢れる想いを持て余している。
今、俺はただ……ただ、丈が恋しい。
10
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話
六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。
兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。
リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。
三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、
「なんだ。帰ってきたんだ」
と、嫌悪な様子で接するのだった。


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる