重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
97 / 1,657
第3章

道は閉ざされた 3

しおりを挟む
 いつもそうだった。抗えないものに呑み込まれていってしまう。

 過去のお前も苦しんだのか。俺が目を背けてお前の苦しい過去をしっかり見ようとしなかった罰があたったのか、今こんな目に遭っているのは。お前も誰かに理不尽に抱かれてしまったのか。

 どうか許してくれ。

 お前の探していた奴に出逢えて初めてを捧げられれば、それですべて解決すると思っていた。

 目を背ける訳にはいかないのか。

 俺が受け止めるべき運命にはこのことも含まれていたのか。

****

「洋……あぁ……すごく可愛いよ」
「やっ!」

 父が俺のものを扱き始める。父に触られても気持ち悪いだけで何の反応もみせず恐怖で小さくなっていくばかりだ。

「丈といったか……あの男の名は」

 だが丈の名前が出た途端、躰が反応してしまう。

「あいつに何度抱かれた?何故そんなことになったのだ?あいつが誘ったのか」
「ち……違う!丈は悪くないっ!俺が俺から誘ったんだ」
「洋……お前にまさかそんなこと出来るとはな。散々男に襲われそうになっていたことぐらい知っていたよ。初めての躰じゃないのなら、、もう大人しく力を抜きなさい」

 父が俺のものをしごいているそんな光景に身も心も冷え切って、俺の躰は何の反応もみせない。

「しょうがないな。優しくしてあげようと思ったが、洋、耐えなさい」

 父は滑りをよくするために、俺の孔にクリームのようなものをたっぷり塗ったあと、熱く腫れきったものを直接当ててきた。その熱に思いっきり嫌悪感が再び駆け巡り、躰が本気で拒否反応をし出した。

「やっやだ──!」

 逃げ出したくて腰がひけていく。全身の力を持って抵抗する。だがその腰を無理矢理抱き留められ、太腿を両手でぐっと掴まれ、大きく開脚させられてしまう。

 恐怖で躰に力が思うように入らない。
 こんな簡単に奪われるなんて!

 無理やり……あられもない姿にさせられ、屈辱と羞恥心で涙が滲み出る。

「やっいたっ!痛い!やめて!」

 ぐぐっと力任せに一気にそれを押し進めてきた。メリメリと音を立てこじ開けられていく躰の内部。

 義理であっても俺にとっては長年……父として接してきた相手に、今無理矢理に躰の内部をこじ開けられ、犯されていく。

 この瞬間になんとかギリギリの境界線で保っていた、父と息子の関係を完全に失った。

 俺は男なのに……息子のはずなのに……何故こんなことになってしまったのか。

「うっ痛っ──」

 丈っ!丈っ!

 心の中で何度も繰り返し君を呼ぶ!

 丈に抱かれただけの、丈だけのものだった俺の躰が、今無残に散っていってしまう。

 丈すまない。俺は弱かった。

 こうなると分かっていたのに、父を跳ね除ける勇気がなかった。

 運命の糸は無残にも、ここで切り落とされてしまった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...