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第3章
突然の訪問 2
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「洋どうした?顔色が悪いぞ」
「あっ……」
眼を見開き固まっている洋が気になり、車を門の前で停車させる。
「洋?」
その時になって洋の見つめる先に一人の男性が立っているのが目に入った。
一体誰だ? 五十代位のスーツを着た紳士的な男性だった。
「洋の知っている人か」
「あっ……うん……その……俺の父だ」
「えっ!?アメリカにいるんじゃなかったのか」
「そのはずだが……何で……」
明らかに困惑している洋の表情に一抹の不安が過るが、大事な洋の父親をそんな風にあしらってはいけないと思い、慌てて車の外に出て挨拶をした。
「あの、洋のお父さまですか」
「ああそうだが……君は?」
「私は張矢 丈と申します。洋くんとこのテラスハウスで同居しているものです」
「はっ?洋が君と同居だと?会社からは何も聞いていないがな」
冷たい口調と冷たい視線をいきなり浴びて、少しひっかかる。なんだか洋とは少しも似てないんだな。
「それはですね、もともと私が会社からあてがわれた住居でしたが、洋くんの独身寮が手違いで満室だったため、急遽同居することになったのです」
「ふんっ、洋から何も聞いてなかったが、君も洋と同じ会社の人間か」
「はい……メディカルドクターです」
「全く……あの会社も何を考えているんだか」
私のことにはさほど興味がないようで、すぐに顔を背け、洋のことを厳しい視線で見つめた。
「洋……とにかくこちらへ来なさい」
「……はい」
「何故このことを……住所が変わったのを私に告げなかった?全く……人事に念のためお前の住所を聞いてから来てよかったよ」
「父さん……ごめんなさい」
「とにかく、今日は私と一緒に来なさい」
「えっ……でもっ」
「早くしなさい、何のためにわざわざアメリカから帰国したと思っている?」
「……はい」
家族のことに必要以上に口を出すのは躊躇われるので、洋を乗せたタクシーをただその場で見送ることしか出来なかった。無理にでも引き留めればよかったのか。引きずられるようにタクシーに乗せられた洋が、一瞬見せた縋るような眼差しがいつまでも心に引っかかっていた。
言いようのない不安ばかりが募ってくる。
「あっ……」
眼を見開き固まっている洋が気になり、車を門の前で停車させる。
「洋?」
その時になって洋の見つめる先に一人の男性が立っているのが目に入った。
一体誰だ? 五十代位のスーツを着た紳士的な男性だった。
「洋の知っている人か」
「あっ……うん……その……俺の父だ」
「えっ!?アメリカにいるんじゃなかったのか」
「そのはずだが……何で……」
明らかに困惑している洋の表情に一抹の不安が過るが、大事な洋の父親をそんな風にあしらってはいけないと思い、慌てて車の外に出て挨拶をした。
「あの、洋のお父さまですか」
「ああそうだが……君は?」
「私は張矢 丈と申します。洋くんとこのテラスハウスで同居しているものです」
「はっ?洋が君と同居だと?会社からは何も聞いていないがな」
冷たい口調と冷たい視線をいきなり浴びて、少しひっかかる。なんだか洋とは少しも似てないんだな。
「それはですね、もともと私が会社からあてがわれた住居でしたが、洋くんの独身寮が手違いで満室だったため、急遽同居することになったのです」
「ふんっ、洋から何も聞いてなかったが、君も洋と同じ会社の人間か」
「はい……メディカルドクターです」
「全く……あの会社も何を考えているんだか」
私のことにはさほど興味がないようで、すぐに顔を背け、洋のことを厳しい視線で見つめた。
「洋……とにかくこちらへ来なさい」
「……はい」
「何故このことを……住所が変わったのを私に告げなかった?全く……人事に念のためお前の住所を聞いてから来てよかったよ」
「父さん……ごめんなさい」
「とにかく、今日は私と一緒に来なさい」
「えっ……でもっ」
「早くしなさい、何のためにわざわざアメリカから帰国したと思っている?」
「……はい」
家族のことに必要以上に口を出すのは躊躇われるので、洋を乗せたタクシーをただその場で見送ることしか出来なかった。無理にでも引き留めればよかったのか。引きずられるようにタクシーに乗せられた洋が、一瞬見せた縋るような眼差しがいつまでも心に引っかかっていた。
言いようのない不安ばかりが募ってくる。
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