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第3章
星降る宿 10
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チェックイン時に宿の女将から天空を見渡せる露天風呂がこの夏新しく出来たと勧められたので、洋を連れてやってきた。洋が寝てしまったので来るのが遅くなったが、お陰で露天風呂は貸し切り状態だった。
「ふぅ、人がいなくて良かった」
「今は貸し切りだな」
恐る恐る浴衣を脱いだ洋も、展望露天風呂に浸かって来た。誰もいないことにほっとした表情を浮かべ、肩までお湯につかり空を見上げた。
「凄い絶景だ!」
「気に入ったか?」
「あぁ星が凄い!」
「何が見える?」
「夏の大三角形!」
「へぇ……教えて」
「 夏の夜空は天の川がもっとも美しい季節だ。ほら今日は天の川もよく見えるね。天の川を中心にある3つの大きな星は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、十字形に並ぶはくちょう座のデネブというんだ」
「洋は、妙に詳しいな」
「えっ……うん、よく一人で見ていたから自分で勉強したんだ。変かな」
「いや……いいよ、もっと教えて」
「それで、日本や中国では七夕の星として、ベガを織姫星、アルタイルを牽牛星と呼んでいるんだ。丈にも見える?あの星とこの星のことだよ。後ね、3つの星を結ぶと、大きな二等辺三角形になるから『夏の大三角形』っていうんだよ」
夢中になって説明してくる洋が、子供みたいに無邪気で輝いて見えるので、思わず目を細めてしまう。こんな表情もするんだな。
そうこうしていると何人かのグループが入ってきたので、私は洋の手をひいて、月明かりが届かない暗い場所へ移動させた。
「こっちだ」
「あぁ」
岩陰の曲がった所は、入り口からちょうど見えにくい場所になっていた。人がいないことを確かめてから、私はそっと洋の背後にまわり、洋の腰を両手で後ろから抱きしめた。
「えっ!丈?あっ……ここではダメだ。まだ近くに人がいる……」
途端に洋の躰はびくっと震え、湯で上気した頬が、さらに桜色に染まった。
「洋、少しだけ触れても?」
答えなんて待たずに、さらに手を腰から伸ばし、そっと洋の中心に添えると、肩を震わせ、きゅっと耐えるように俯きながら洋は下唇を噛んだ。
「んっ……あっやめろ……」
それから、のぼせそうになる程の時間をかけ、私はゆっくりお湯のうねりに合わせ、洋のものを優しく手で扱いた。その度に、洋の肩が小刻みに震え、手で押さえた口元からは少しずつ声が漏れだして来た。
「はぁ……あっ、ううっ丈っもうやめてくれ……ここでは無理だ」
「どうして?」
「だって俺が我慢出来なくなる!もう、出ちゃう」
熱い吐息とともに、洋は困惑したような表情を浮かべていた。そして、人に気がつかれないように、声を出さないようにと必死に手を口にあてて耐えている。そんな様子がひどく愛おしい。
見上げると、空には満天の星が降り注いでいる。湯の中で生まれたままの姿で抱き合っている洋と私は、まるで広い宇宙の一つの星になったような錯覚に陥るよ。
そう……ここは、まるで二人きりのプラネタリウムのよう。
「丈っ俺…もう火照ったから、上がってもいいか。」
我慢の限界の洋が、顔を赤らめ必死に懇願してきた。私はこういう洋の顔を見たくて、つい苛めたくなってしまう。
「ふぅ、人がいなくて良かった」
「今は貸し切りだな」
恐る恐る浴衣を脱いだ洋も、展望露天風呂に浸かって来た。誰もいないことにほっとした表情を浮かべ、肩までお湯につかり空を見上げた。
「凄い絶景だ!」
「気に入ったか?」
「あぁ星が凄い!」
「何が見える?」
「夏の大三角形!」
「へぇ……教えて」
「 夏の夜空は天の川がもっとも美しい季節だ。ほら今日は天の川もよく見えるね。天の川を中心にある3つの大きな星は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、十字形に並ぶはくちょう座のデネブというんだ」
「洋は、妙に詳しいな」
「えっ……うん、よく一人で見ていたから自分で勉強したんだ。変かな」
「いや……いいよ、もっと教えて」
「それで、日本や中国では七夕の星として、ベガを織姫星、アルタイルを牽牛星と呼んでいるんだ。丈にも見える?あの星とこの星のことだよ。後ね、3つの星を結ぶと、大きな二等辺三角形になるから『夏の大三角形』っていうんだよ」
夢中になって説明してくる洋が、子供みたいに無邪気で輝いて見えるので、思わず目を細めてしまう。こんな表情もするんだな。
そうこうしていると何人かのグループが入ってきたので、私は洋の手をひいて、月明かりが届かない暗い場所へ移動させた。
「こっちだ」
「あぁ」
岩陰の曲がった所は、入り口からちょうど見えにくい場所になっていた。人がいないことを確かめてから、私はそっと洋の背後にまわり、洋の腰を両手で後ろから抱きしめた。
「えっ!丈?あっ……ここではダメだ。まだ近くに人がいる……」
途端に洋の躰はびくっと震え、湯で上気した頬が、さらに桜色に染まった。
「洋、少しだけ触れても?」
答えなんて待たずに、さらに手を腰から伸ばし、そっと洋の中心に添えると、肩を震わせ、きゅっと耐えるように俯きながら洋は下唇を噛んだ。
「んっ……あっやめろ……」
それから、のぼせそうになる程の時間をかけ、私はゆっくりお湯のうねりに合わせ、洋のものを優しく手で扱いた。その度に、洋の肩が小刻みに震え、手で押さえた口元からは少しずつ声が漏れだして来た。
「はぁ……あっ、ううっ丈っもうやめてくれ……ここでは無理だ」
「どうして?」
「だって俺が我慢出来なくなる!もう、出ちゃう」
熱い吐息とともに、洋は困惑したような表情を浮かべていた。そして、人に気がつかれないように、声を出さないようにと必死に手を口にあてて耐えている。そんな様子がひどく愛おしい。
見上げると、空には満天の星が降り注いでいる。湯の中で生まれたままの姿で抱き合っている洋と私は、まるで広い宇宙の一つの星になったような錯覚に陥るよ。
そう……ここは、まるで二人きりのプラネタリウムのよう。
「丈っ俺…もう火照ったから、上がってもいいか。」
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