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第3章
星降る宿 7
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「赤い髪の女性……」
何気なく聞いてしまったが、丈が医師になるきっかけの中から出てきた言葉にひやりとした。
胸の奥に引っかかるのは何故だろう。あまり俺にとっては良くないことかもしれない。だから頭を横に振って、今は考えるのをやめようと思った。
****
「水着、似合うよ」
丈が選んでくれた水着はグレーのシックなもの。俺もこういうシンプルなものは好きだ。
「そう?」
でも同性に水着のこと褒められるのなんて慣れなくて、照れてしまう。丈の方をちらっとみると逞しい胸板に下半身のブラックの水着が引き締まって見え、悔しいけど格好いい。
同じ男性なのに、丈は逞しい体つきで羨ましい。俺はもともと骨格が細いせいで、必要以上に華奢に見えるのが昔から嫌だった。運動しても筋肉が付きにくい体質なのかな。
覚悟を決め水着の上にTシャツを着てプールへ行くと、開放的な雰囲気で、あの高校時代のプールの授業の時のような絡みつく嫌な視線もなく快適そうだった。
キャッキャッと子供が騒ぐ声がするので見ると、楽しそうに親子連れがプールサイドで遊んでいて、微笑ましい光景だ。こういう賑やかな和む場所は久しぶりだ。
……
幼馴染の安志と通っ夏休みのプール教室を思い出す。楽しい小学生の日々、ふざけ合って大笑いしたな。
「洋どっちが長く潜れるか競争だ!」
「いいよ」
「せーの!」
「安志ずるいぞ!先に潜ったな!」
「あははっ」
母と旅行したホテルのプールでは、俺は泳ぎが上手くなったのを母に見てもらえるのが嬉しくて、何度もクロールで往復した。母は自分の腕時計でタイムを計って、褒めてくれた。
「洋ってば凄いわ。いつの間にそんなに泳げるようになったの」
「母さん、俺がいつまでも泳げないと思ってた?酷いな」
「ふふっねぇ腕時計でタイム計ってあげるわ」
「うん。そうして」
……
振り返れば、どれも穏やかな大切な時間だった。しかし中学高校のプールの時間は苦痛だった。
わざと俺の躰に触れてくる奴、水の中で股間を触られたり尻を揉まれたり散々だった。ふざけたふりして顔は笑っているが、目は笑っていない同級生に嫌気がさした。
遠くからニヤニヤしながら俺を舐めるように見つめる上級生にも身震いがした。そして俺に決定的なダメージを与えたあの事件……あのロッカーでのことは今でも忘れられない。
俺が何をしたっていうのだ。本気で自分の顔も躰も取り替えて欲しくなった。
母によく似た女顔だからこんな目にあうのか。華奢な体つきがいけないのか。どうしてこうも同性に変な目線で見られなるのか。
思い出すのは、様々な思い出の断片だ。良いものも悪いものも、バラバラに散らばっている。
「洋は泳げるのか」
「当たり前だろ」
「ふっ泳げないから嫌なのかと思ったよ」
「丈っ!」
丈に怒りながらプールに入ると、水がひんやりと冷たくて、それが心地よい。
すぅっと泳ぎ出すと躰は覚えていた。
魚になったような気持ちで無心でクロールをする。あぁ気持ちいいな。このまま何処までも泳いでいきたい。そんな気持ちになるほどリラックスして泳げた。
丈が近くにいる。ただそれだけで、こんなにも安心できるものなのか。
泳ぎ切って振り返ると、丈も隣のコースで泳いでた。静かにそして速く綺麗な泳ぎだ。その後精悍な顔つきにドキッとするよ。
俺も、もっとしっかりしないと。いつまでも丈に守られていてもしょうがない。
そう思うのに、丈の前では力が入らないから困っているよ。
何気なく聞いてしまったが、丈が医師になるきっかけの中から出てきた言葉にひやりとした。
胸の奥に引っかかるのは何故だろう。あまり俺にとっては良くないことかもしれない。だから頭を横に振って、今は考えるのをやめようと思った。
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「水着、似合うよ」
丈が選んでくれた水着はグレーのシックなもの。俺もこういうシンプルなものは好きだ。
「そう?」
でも同性に水着のこと褒められるのなんて慣れなくて、照れてしまう。丈の方をちらっとみると逞しい胸板に下半身のブラックの水着が引き締まって見え、悔しいけど格好いい。
同じ男性なのに、丈は逞しい体つきで羨ましい。俺はもともと骨格が細いせいで、必要以上に華奢に見えるのが昔から嫌だった。運動しても筋肉が付きにくい体質なのかな。
覚悟を決め水着の上にTシャツを着てプールへ行くと、開放的な雰囲気で、あの高校時代のプールの授業の時のような絡みつく嫌な視線もなく快適そうだった。
キャッキャッと子供が騒ぐ声がするので見ると、楽しそうに親子連れがプールサイドで遊んでいて、微笑ましい光景だ。こういう賑やかな和む場所は久しぶりだ。
……
幼馴染の安志と通っ夏休みのプール教室を思い出す。楽しい小学生の日々、ふざけ合って大笑いしたな。
「洋どっちが長く潜れるか競争だ!」
「いいよ」
「せーの!」
「安志ずるいぞ!先に潜ったな!」
「あははっ」
母と旅行したホテルのプールでは、俺は泳ぎが上手くなったのを母に見てもらえるのが嬉しくて、何度もクロールで往復した。母は自分の腕時計でタイムを計って、褒めてくれた。
「洋ってば凄いわ。いつの間にそんなに泳げるようになったの」
「母さん、俺がいつまでも泳げないと思ってた?酷いな」
「ふふっねぇ腕時計でタイム計ってあげるわ」
「うん。そうして」
……
振り返れば、どれも穏やかな大切な時間だった。しかし中学高校のプールの時間は苦痛だった。
わざと俺の躰に触れてくる奴、水の中で股間を触られたり尻を揉まれたり散々だった。ふざけたふりして顔は笑っているが、目は笑っていない同級生に嫌気がさした。
遠くからニヤニヤしながら俺を舐めるように見つめる上級生にも身震いがした。そして俺に決定的なダメージを与えたあの事件……あのロッカーでのことは今でも忘れられない。
俺が何をしたっていうのだ。本気で自分の顔も躰も取り替えて欲しくなった。
母によく似た女顔だからこんな目にあうのか。華奢な体つきがいけないのか。どうしてこうも同性に変な目線で見られなるのか。
思い出すのは、様々な思い出の断片だ。良いものも悪いものも、バラバラに散らばっている。
「洋は泳げるのか」
「当たり前だろ」
「ふっ泳げないから嫌なのかと思ったよ」
「丈っ!」
丈に怒りながらプールに入ると、水がひんやりと冷たくて、それが心地よい。
すぅっと泳ぎ出すと躰は覚えていた。
魚になったような気持ちで無心でクロールをする。あぁ気持ちいいな。このまま何処までも泳いでいきたい。そんな気持ちになるほどリラックスして泳げた。
丈が近くにいる。ただそれだけで、こんなにも安心できるものなのか。
泳ぎ切って振り返ると、丈も隣のコースで泳いでた。静かにそして速く綺麗な泳ぎだ。その後精悍な顔つきにドキッとするよ。
俺も、もっとしっかりしないと。いつまでも丈に守られていてもしょうがない。
そう思うのに、丈の前では力が入らないから困っているよ。
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