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第3章
星降る宿 1
しおりを挟む季節は巡り八月になっていた。
俺達の胸には今日も月輪のネックレスが揺れている。
「洋、もう起きろ」
「んっ……なんで?今日休みだろう」
「今日からお盆休みだ」
「あっそうか、じゃあまだ眠っていてもいいだろ?」
昨日も丈に抱き潰されたせいで、腰が痛くて起き上がれないよ。べッドの中で頭まで布団を被り、昨夜の情事を思い出し赤面してしまう。それなのに丈がカーテンを一気に開けたので、眩しくてしょうがない。
「うっ眩しい。もう少し眠らせてくれ……」
腰が重たいので、そっと自分の手で擦っていると、丈が布団の上から手を当ててくる。
「洋。また腰痛いのか?悪かったな」
「いつもそうやって謝る位なら、もう少し手前でやめればいいのに」
といいつつ、俺も抱き潰されるまで激しく抱かれるのが、嫌じゃないから困ったものだ。
「じゃあ出かけないのか」
「何処に?」
「昨日話しただろ」
うう……昨夜の会話の記憶が朧げなのは、全部丈のせいだ!
「何だっけ?」
「宿を予約したって言ったよな」
「えっ!そうだった?」
「いつものあの宿に泊まりに行くぞ」
「いいね!俺もあそこは好きだ。人も少ないし、落ち着く」
途端に嬉しくなって飛び起きたが、やっぱり腰がまだ痛く前かがみになっていると、丈が携帯を差し出して来た。
「何?」
「さっき携帯が鳴っていたぞ」
「そう?こんな朝から誰だろう」
嫌な予感がして、携帯の着信履歴を見るとー父さんーと表示されていた。暗い顔で画面を見つめていると、丈が不思議そうに尋ねてきた。
「誰から?」
「うん……父からだった」
「親父さん?掛けなおしてみろ。アメリカからわざわざ掛けてくるなんて、何か急用かも」
「いいよ。そのうちまたかかってくるだろう」
携帯を机に戻そうと思った途端、着信音が鳴ったので、思わず丈と顔を見合わせてしまった。途端に心臓がきゅっと冷たくなるのを感じながら応答した。
「……もしもし?」
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