79 / 1,657
第2章
月輪の約束 13
しおりを挟む
丈は俺の首に月輪のネックレスを掛け、それから自分の胸にもつけて穏やかに微笑んだ。
「遠い昔にも……こんなことを?」
そう丈に聞かれて朧げな記憶を辿ると、月輪のネックレスはいつも胸元に揺れ、抱かれる時も外さなかったような気がして、俺は小さく頷いた。
「……そうかも知れない」
「洋……このまま抱いていいか」
向かい合っていた俺達が更にきつく抱き合うと、月輪が重なった。
カラン──
それは透き通る音を奏でた。今から共に抱いて抱かれる合図のように、厳かに響いた。
丈の手が俺のシャツに伸びてきて、ボタンをひとつ、また一つと外していく。徐々にはだけていく……俺の肩が少し見え始めると丈は首筋に顔を埋め、鎖骨から肩のラインに沿って唇を這わせ、時に吸い、時に舐め、俺にお前の痕を残していく。さらに胸元へと下がり赤く熱を持った俺の小さな突起を口に含んで、甘噛みしてくる。
「はうっ……!」
ゾクゾクと駆け巡る心地良さに身震いする。突起を指で押し潰すように触られ摘まれ……撫でられると、痛い程の快楽が下半身へつながっていくのを感じた。
「あっ……んっ……そこは駄目だ」
更にボタンをまたひとつ外し、その間から手が優しく滑りこみ、シャツをすべて脱がされると、丈の温かい肌と俺の肌が密接に磁石のようにくっつき合った。
丈の温もりが直に届き、冷えた躰はどんどん熱を持っていく。
「んあっ! あっ……」
あの男もこうやって愛する人に抱かれていたのか。
「洋の躰は……綺麗で穢れていない」
丈がいつも言ってくれるその言葉が俺を包み込んでいくと、今日は悲しくて涙が込み上げてくる。
何故だろう。遠い昔の俺はそうではなかった気がするのは。
俺が必死に守ってきた貞操。
何が何でも守りたかったのは何故なのか。そんなにしてまで守りたかったものを、丈には無条件に差し出せた。
丈のために守ってきたのかもしれない。
これはもしかしたら……遠い昔の俺の切なる願いなのか。
「どうした?」
「……何でもない」
もうこれ以上のことは思い出さない方がいい。あまり良くない事が潜んでいるような不安を感じるから。
丈の律動と共に揺れ動くのは、胸元の月輪のネックレス。俺のものと重なり、優しい音楽を奏でている。
遠い昔の俺と今の俺。
二人の想いもしっかりと重なっていくようだ。
今この瞬間に、遥か彼方からの月輪の約束が叶ったのだ。
まだ分からないこと、不思議なことばかりだが……
今はこれでいい。
このままでいい。
丈と一つになれるこの瞬間が、最高に幸せだから。
第2章 月輪の約束・完
「遠い昔にも……こんなことを?」
そう丈に聞かれて朧げな記憶を辿ると、月輪のネックレスはいつも胸元に揺れ、抱かれる時も外さなかったような気がして、俺は小さく頷いた。
「……そうかも知れない」
「洋……このまま抱いていいか」
向かい合っていた俺達が更にきつく抱き合うと、月輪が重なった。
カラン──
それは透き通る音を奏でた。今から共に抱いて抱かれる合図のように、厳かに響いた。
丈の手が俺のシャツに伸びてきて、ボタンをひとつ、また一つと外していく。徐々にはだけていく……俺の肩が少し見え始めると丈は首筋に顔を埋め、鎖骨から肩のラインに沿って唇を這わせ、時に吸い、時に舐め、俺にお前の痕を残していく。さらに胸元へと下がり赤く熱を持った俺の小さな突起を口に含んで、甘噛みしてくる。
「はうっ……!」
ゾクゾクと駆け巡る心地良さに身震いする。突起を指で押し潰すように触られ摘まれ……撫でられると、痛い程の快楽が下半身へつながっていくのを感じた。
「あっ……んっ……そこは駄目だ」
更にボタンをまたひとつ外し、その間から手が優しく滑りこみ、シャツをすべて脱がされると、丈の温かい肌と俺の肌が密接に磁石のようにくっつき合った。
丈の温もりが直に届き、冷えた躰はどんどん熱を持っていく。
「んあっ! あっ……」
あの男もこうやって愛する人に抱かれていたのか。
「洋の躰は……綺麗で穢れていない」
丈がいつも言ってくれるその言葉が俺を包み込んでいくと、今日は悲しくて涙が込み上げてくる。
何故だろう。遠い昔の俺はそうではなかった気がするのは。
俺が必死に守ってきた貞操。
何が何でも守りたかったのは何故なのか。そんなにしてまで守りたかったものを、丈には無条件に差し出せた。
丈のために守ってきたのかもしれない。
これはもしかしたら……遠い昔の俺の切なる願いなのか。
「どうした?」
「……何でもない」
もうこれ以上のことは思い出さない方がいい。あまり良くない事が潜んでいるような不安を感じるから。
丈の律動と共に揺れ動くのは、胸元の月輪のネックレス。俺のものと重なり、優しい音楽を奏でている。
遠い昔の俺と今の俺。
二人の想いもしっかりと重なっていくようだ。
今この瞬間に、遥か彼方からの月輪の約束が叶ったのだ。
まだ分からないこと、不思議なことばかりだが……
今はこれでいい。
このままでいい。
丈と一つになれるこの瞬間が、最高に幸せだから。
第2章 月輪の約束・完
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる