重なる月

志生帆 海

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第2章

月輪の約束 7

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 洋を後ろから抱きしめながら窓辺に立ち、鏡に月を映してみる。月は厳かに白く輝き……静かに鏡の中にやって来てくれた。

「丈、見えるか」
「あぁ不思議な光景だな」
「この鏡の向こうに他の世界があるような錯覚に陥るよ」
「俺さ……実は丈と付き合いだしてから不思議な夢をよく見ていて……」
「夢……どんな?」
「んっ……」

 そこまで言って洋は躊躇する。

「どうした?」
「あまりよくない夢だから、目覚めると忘れるようにしている」
「そうか。私も最近夢をみる、遠い昔……どこかにいる夢だ」
「遠い昔?」
「あぁ」
「なぁ……丈は丈だよな?」
「ん?」
「いや……俺さ、丈と以前逢ったような。そんなデジャブっていうのか。そういう気持ちになることが多くて不思議なんだ」
「そうか……君と私はもしかしたら遠い昔出逢っていたのかもな」
「ふふっ丈って意外とロマンチックだな」
「そうか」
「俺の夢は残念ながらあまりよくない気がする。思い出さない方がいいことってあるよな?」
「……」

 洋の見る嫌な夢とは、どんな夢だ?
 私と洋の出逢い。偶然でなく必然だったのではと最近よく思う。
 遠い昔……もしかして洋と私は出逢っていた?
 そんな馬鹿げた話があるのだろうか。

「丈……眠いのか。今日はもう休もう。鏡のお陰で落ち着いただろう」

 嬉しそうに安心したように微笑む洋を見ると、つられて笑ってしまう。

「洋の香りで落ち着くどころか、煽られるな」
「なっ……せっかく俺が真面目に話しているのに!」

 途端に赤面して俯く洋の顎を掬いこちらを向かせる。窓に洋を押し付けながら躰をぴったりと合わせる。

 こちらを見上げる洋の黒い瞳に吸い込まれそうだ。

 洋の着ている白いシャツのボタンを上から二つ外し、綺麗な鎖骨を見えるようにした。洋の喉仏が吐息と共に上下していて、ひどく緊張しているのが伝わってくる。洋は何度躰を重ねてもいつまでも初々しいままだ。その首筋をそっと舐めていく。

「うっ……」

 啄むように吸うように、唇をゆっくりと這わせていく。

「あっ……んんっ」

 小刻みに躰が震え出す洋から、鼻に抜けるような声が小さくあがる。更にもう一つ深くボタンを外すと、洋の可愛い淡い桃色の乳首がちらりと見えた。

 シャツの隙間から手を忍び込ませ、洋の突起を摘む。

「んんっ!」

 指先にキュッと力を込めると喘ぐような声をあげる洋がとてつもなく可愛い。

「あっ……んっ……丈、駄目だ。カーテン閉めないと」

 はっとした表情で首をふりながら私の拘束から逃げようとするので、力を更に込めて窓に躰を押し付けていく。

「心配するな……誰も見てない」

 口づけを深めながら、洋の胸の突起を揉み解していく。

「丈……で、でも」
「洋、ここは60階だ。誰にも見えないから安心しろ」
「でも……月が見ている……」

 恥ずかしさで頬を赤く染めた洋が……顔を月から背けながら、そう呟いた。
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