58 / 1,657
第2章
番外編 新しい一年が始まる 1
しおりを挟む
クリスマスの続き……大晦日の話になります。
時系列が本編と違うので特別番外編として捉えてくださいね~テラスハウスでふたりが出会って、夏にあの事件がなく冬を迎えたのなら……の話になります。
****
「洋、本当に帰国しなくていいのか。アメリカの親父さんが待っているんだろう? 」
「あぁいいんだ」
「心配してるんじゃないか」
「いや、そうでもないさ。きっと」
洋の家の事情、そういえばあまり聞いたことないな。母親はいるのか。確かうちの会社には父親のコネで入社したって人事が言ってたよな。
「そういえば洋って、母親の話しないな」
「えっ……あぁ」
「もしかして…」
「うん……中学の時に病気で」
洋が悲し気な表情を浮かべた。
「そうか」
「あぁ」
「じゃあ尚更、親父さん向こうで一人で寂しいんじゃないか」
「ん……でも父とはしばらく会いたくないんだ」
「何故?」
「……なんとなく」
「そうか」
それ以上のことを聴くのはやめておいた。洋があまり話したくなさそうだったから.少し沈んでしまった洋の気持ちを切り替えてあげたくて、話を変えた。
「じゃあこのテラスハウスで二人で新年を迎えられるのか」
「あぁそうするよ」
「年末は.一緒におせち料理を作ろうか」
「おいっ、俺が料理駄目なの知っているだろう」
拗ねるような眼で見上げてくる洋が愛おしい。
「あぁ知っているさ。洋は何が好きか。作ってやるよ」
「本当に?」
「あぁ」
「俺さ、栗きんとんが好きなんだ。母がよく作ってくれて」
懐かしそうな面持ちで洋が甘い笑顔になる。この表情を見るためにだったら何でもしてやりたい。そう思わせるんだよ、君の笑みは。
「ははっ甘いものが好きな洋らしい」
「丈と二人でここで新年を迎えたいんだ、駄目か」
「もちろんいいよ。」
そんな約束をしたのは十二月上旬のこと。今日はもう大晦日だ。朝から二人でバタバタとテラスハウスの掃除をしている。
「丈、もうクタクタだよ。ゆっくりしようよ」
「まだ駄目だ。ほらここにもホコリが」
「……」
洋はどことなくそわそわしている。実はあの後すぐに二週間も海外出張が入り、クリスマスの朝にようやく帰国したばかりだ。その日も結局午後には出社しなくてはいけなくて洋とクリスマスを心ゆくまで楽しめなかった。そのまま溜まった仕事をこなして年末まで残業続きで疲れ果てて、洋と二人きりの時間をゆっくりと過ごせていない。
洋も早く私とゆっくり過ごしたいという気持ちが伝わってきて、嬉しくなる。
「洋、ちょっとこっちに来い」
「なに?」
ぐいと手を引きソファに座らせ抱き寄せると、素直にコトンと頭を私の肩に預け甘えてくる。
「夜まで我慢できなくなったか」
「はっお前いい加減にしろよな」
途端に照れくさそうに怒って立とうとするので肩を掴んでソファに押し倒した。私の前でコロコロと表情を変える様子が嬉しい。
気を許してくれている、そう実感できるから。
「お……おいっ!何をするつもりだ!」
見下ろすと目は怒っているのに頬を赤く染めて、なんともアンバランスで刺激的だ。もう食べたくなるな……夜まで待てないよ。洋を早くおもいっきり抱きたい。抱き潰すほど抱きたい。
私はこんなに我慢できない男だったのかと、思わず苦笑してしまった。
時系列が本編と違うので特別番外編として捉えてくださいね~テラスハウスでふたりが出会って、夏にあの事件がなく冬を迎えたのなら……の話になります。
****
「洋、本当に帰国しなくていいのか。アメリカの親父さんが待っているんだろう? 」
「あぁいいんだ」
「心配してるんじゃないか」
「いや、そうでもないさ。きっと」
洋の家の事情、そういえばあまり聞いたことないな。母親はいるのか。確かうちの会社には父親のコネで入社したって人事が言ってたよな。
「そういえば洋って、母親の話しないな」
「えっ……あぁ」
「もしかして…」
「うん……中学の時に病気で」
洋が悲し気な表情を浮かべた。
「そうか」
「あぁ」
「じゃあ尚更、親父さん向こうで一人で寂しいんじゃないか」
「ん……でも父とはしばらく会いたくないんだ」
「何故?」
「……なんとなく」
「そうか」
それ以上のことを聴くのはやめておいた。洋があまり話したくなさそうだったから.少し沈んでしまった洋の気持ちを切り替えてあげたくて、話を変えた。
「じゃあこのテラスハウスで二人で新年を迎えられるのか」
「あぁそうするよ」
「年末は.一緒におせち料理を作ろうか」
「おいっ、俺が料理駄目なの知っているだろう」
拗ねるような眼で見上げてくる洋が愛おしい。
「あぁ知っているさ。洋は何が好きか。作ってやるよ」
「本当に?」
「あぁ」
「俺さ、栗きんとんが好きなんだ。母がよく作ってくれて」
懐かしそうな面持ちで洋が甘い笑顔になる。この表情を見るためにだったら何でもしてやりたい。そう思わせるんだよ、君の笑みは。
「ははっ甘いものが好きな洋らしい」
「丈と二人でここで新年を迎えたいんだ、駄目か」
「もちろんいいよ。」
そんな約束をしたのは十二月上旬のこと。今日はもう大晦日だ。朝から二人でバタバタとテラスハウスの掃除をしている。
「丈、もうクタクタだよ。ゆっくりしようよ」
「まだ駄目だ。ほらここにもホコリが」
「……」
洋はどことなくそわそわしている。実はあの後すぐに二週間も海外出張が入り、クリスマスの朝にようやく帰国したばかりだ。その日も結局午後には出社しなくてはいけなくて洋とクリスマスを心ゆくまで楽しめなかった。そのまま溜まった仕事をこなして年末まで残業続きで疲れ果てて、洋と二人きりの時間をゆっくりと過ごせていない。
洋も早く私とゆっくり過ごしたいという気持ちが伝わってきて、嬉しくなる。
「洋、ちょっとこっちに来い」
「なに?」
ぐいと手を引きソファに座らせ抱き寄せると、素直にコトンと頭を私の肩に預け甘えてくる。
「夜まで我慢できなくなったか」
「はっお前いい加減にしろよな」
途端に照れくさそうに怒って立とうとするので肩を掴んでソファに押し倒した。私の前でコロコロと表情を変える様子が嬉しい。
気を許してくれている、そう実感できるから。
「お……おいっ!何をするつもりだ!」
見下ろすと目は怒っているのに頬を赤く染めて、なんともアンバランスで刺激的だ。もう食べたくなるな……夜まで待てないよ。洋を早くおもいっきり抱きたい。抱き潰すほど抱きたい。
私はこんなに我慢できない男だったのかと、思わず苦笑してしまった。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】記憶を失くした旦那さま
山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。
目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。
彼は愛しているのはリターナだと言った。
そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる