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第2章
あの日から 8
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金曜日の夜だ。終電近い電車はやっぱり混んでいるな。俺も酔っているが、周りも酒臭い奴ばかりで嫌になる。
気がかりなのはテラスハウスで待っている丈に、何の連絡もしないでこんなに遅くなってしまったことだ。
安志の家を出てすぐメールで知らせようと思ったが、結局送ってもらったからそれも出来なくて、この満員電車並みに混んでいる車内でも無理そうだ。
はぁ……もしかして怒っているか……丈。それに心配もしているかも。
今日は俺早く帰るから一緒にワインを飲もうなんて、朝話していたのに。
窓ガラスに映りこむ自分の憂鬱な顔を眺めながらため息をついた途端、俺の股間を揉んでくる奴がいた。
ビクッ──
躰が一瞬で強張る。
「やめっ!」
小さく怒鳴って身を捩るとギュッと力を込められ握り潰されそうになったので、恐怖で竦み、思わず喉がヒュッと鳴ってしまった。いつものことながら……嫌悪感に震える瞬間だ。
「ひっ」
悲鳴が出そうになるのをなんとか呑み込んだが、耳元で、酒臭い息でこう囁かれて背筋が凍った。
「君、凄く綺麗だね。改札で見かけてすっかり気に入ったよ。このままいい子に黙っていれば痛いことしないから、ねっ少し触らせて」
「くっ」
大事な部分を握られる力が増し、痛みで冷や汗が出てくる。
「や……やめろっ」
嫌だ!もうこんなことされたくない!
俺に触れてもいいのは丈だけだ!
俺はどうしていつもこういう扱いばかり受けてしまうのか。男なのに男から性欲の対象として蔑まれる扱いを受けてしまう。結局、高校時代から何も変わっていない。
辛くて胸が押し潰されそうになって、怖くて立ちすくんでしまう。こうなるともう躰が硬直し、動けなくなってしまうのが常だ。心臓も悲しみのあまりギュウギュウと締め付けられ、ズキズキと傷み出す。
相手は俺が抵抗をやめたと思ったのか、今度は俺のもの全体を手のひらで撫でるような動作に変わり、躰はいよいよ嫌悪感で震えあがった。
気持ち悪い!
「くっ……」
身を固くして耐えているが、込み上げてくる吐き気に堪えきれなくなる。その時、突然その手が消えた。
「えっ?」
見上げると、すぐ横に安志が怒った顔で横に立っていた。
「おっさん!やめろよ!人呼ぶよ!」
俺の股間を触っていた男性の手首を捻るように掴み、ドスの効いた声で凄んでいた。
「あ……安志!どうして?」
気がかりなのはテラスハウスで待っている丈に、何の連絡もしないでこんなに遅くなってしまったことだ。
安志の家を出てすぐメールで知らせようと思ったが、結局送ってもらったからそれも出来なくて、この満員電車並みに混んでいる車内でも無理そうだ。
はぁ……もしかして怒っているか……丈。それに心配もしているかも。
今日は俺早く帰るから一緒にワインを飲もうなんて、朝話していたのに。
窓ガラスに映りこむ自分の憂鬱な顔を眺めながらため息をついた途端、俺の股間を揉んでくる奴がいた。
ビクッ──
躰が一瞬で強張る。
「やめっ!」
小さく怒鳴って身を捩るとギュッと力を込められ握り潰されそうになったので、恐怖で竦み、思わず喉がヒュッと鳴ってしまった。いつものことながら……嫌悪感に震える瞬間だ。
「ひっ」
悲鳴が出そうになるのをなんとか呑み込んだが、耳元で、酒臭い息でこう囁かれて背筋が凍った。
「君、凄く綺麗だね。改札で見かけてすっかり気に入ったよ。このままいい子に黙っていれば痛いことしないから、ねっ少し触らせて」
「くっ」
大事な部分を握られる力が増し、痛みで冷や汗が出てくる。
「や……やめろっ」
嫌だ!もうこんなことされたくない!
俺に触れてもいいのは丈だけだ!
俺はどうしていつもこういう扱いばかり受けてしまうのか。男なのに男から性欲の対象として蔑まれる扱いを受けてしまう。結局、高校時代から何も変わっていない。
辛くて胸が押し潰されそうになって、怖くて立ちすくんでしまう。こうなるともう躰が硬直し、動けなくなってしまうのが常だ。心臓も悲しみのあまりギュウギュウと締め付けられ、ズキズキと傷み出す。
相手は俺が抵抗をやめたと思ったのか、今度は俺のもの全体を手のひらで撫でるような動作に変わり、躰はいよいよ嫌悪感で震えあがった。
気持ち悪い!
「くっ……」
身を固くして耐えているが、込み上げてくる吐き気に堪えきれなくなる。その時、突然その手が消えた。
「えっ?」
見上げると、すぐ横に安志が怒った顔で横に立っていた。
「おっさん!やめろよ!人呼ぶよ!」
俺の股間を触っていた男性の手首を捻るように掴み、ドスの効いた声で凄んでいた。
「あ……安志!どうして?」
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