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第2章
あの日から 6
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俺を信じ眠ってしまった洋を抱えるようにタクシーに乗り、大学入学と同時に一人暮らしさせてもらっているマンションへ帰ってきた。タクシーを降りても洋はうつらうつらしていて……足元がおぼつかない。
「洋っしっかりしろよ。参ったな……おい、起きろよ」
結局洋はそのまま無防備に俺の部屋のベッドですやすやと寝息を立ててしまった。そんな彼を眺めていると、複雑な気分になる。
そういえばお前と酒飲むの初めてだったな。五年ぶりに間近にいる洋のことを、ついまじまじと見つめてしまうよ。
相変わらず細い首で白く透き通るようなうなじが綺麗だ。少し癖があるクシュっとした黒髪もあの頃のままで、長い睫毛は目を閉じると艶めいた陰影を生み出していた。通った鼻筋が品があって、キュッと引き締まった綺麗な形の桜色の唇にもドキッとしてしまう。
何もかも高校時代のままの洋だな。五年の歳月が流れたのを感じさせない外見だった。ただ五年前より変わったのは、纏う雰囲気に色香が増したような気がする。
ずっと小さい頃から見守っていた洋なのに……長い間離れていたからか。急に何かが変わってしまった気がする。
「んっ……」
洋が起きそうになり瞼を動かし始めた。
「大丈夫か、水飲む?」
「ん……あぁ」
まだ寝ぼけている洋の肩を支え起こしてやると、洋が小さく何か呟いた。
「じょ……う?」
「何?今なんと言った?」
途端にはっとした表情で洋が目を開けた。少し焦った表情で辺りをキョロキョロ見回している。
「あ!安志!ごめんっ……ここどこ?」
「俺の家だよ」
「えっ!?悪い今何時?」
「もう二十三時過ぎだよ」
「そんな時間なのか!……まずいな」
「こんな時間だよ。泊まって行けよ」
「いや……すぐに帰らないと」
「そういえば洋はどこに住んでいる?送って行くよ」
ガバッと身体を起こし、俺の言葉を無視して慌てて帰り支度を始める洋に、思わずムッとしてしまった。
「おい、そんなに急ぐことないだろ。せっかく会えたのに」
「……でも心配するから」
「誰が?そういえば、お前さっき誰かと間違えただろう?」
「あっ……」
しまったというような顔をするので余計に気になって、つい言葉がきつくなってしまう。少し諦めたような顔をした洋は、もう一度ベッドに腰かけて息を整えた。
「安志……俺、ずっとお前に会いたかったよ。あんな別れ方したから気になっていた。でも俺はもう高校生じゃない。あれから五年も経ったんだよ。いろいろ……前とは違うのを理解して欲しい」
「そんなの分かっているさ!」
「……だから言いたくないこともあるし、聞かないで欲しいこともある」
キツい言葉だった。その通りなのは理解しているのに。
「……」
「安志?大丈夫か」
少し心配そうな躊躇う顔で、洋がじっと見つめてくる。
「……」
「俺が言い過ぎたよ、ごめん」
途端に心配そうな声で洋が心をこめて丁寧に詫びてくる。こういう所は小さい時のままだな。
「分かったよ。友達としてならいいだろう?また会おう。せめて連絡先だけでも教えてくれ」
「……」
「その位してもいいだろう?」
「分かった……携帯の番号でいいか」
「あぁもちろんだ。やっぱり家まで送らなくていいのか」
「おい!過保護な幼馴染だな……俺は男だぞ」
「悪い、つい……」
「じゃあな。安志、本当にありがとう」
困ったような顔で微笑む洋を送り出し、俺は壁にもたれてため息をついた。
洋の奴……元々綺麗な男だったが更に磨きがかかったみたいだ。俺はどうやら今でも洋が好きみたいだが、脈もないし、もう諦めるべき想いだ。
だが……こんなんじゃ……洋を想う悶々とした気持ちで、とても寝付けない。
「洋っしっかりしろよ。参ったな……おい、起きろよ」
結局洋はそのまま無防備に俺の部屋のベッドですやすやと寝息を立ててしまった。そんな彼を眺めていると、複雑な気分になる。
そういえばお前と酒飲むの初めてだったな。五年ぶりに間近にいる洋のことを、ついまじまじと見つめてしまうよ。
相変わらず細い首で白く透き通るようなうなじが綺麗だ。少し癖があるクシュっとした黒髪もあの頃のままで、長い睫毛は目を閉じると艶めいた陰影を生み出していた。通った鼻筋が品があって、キュッと引き締まった綺麗な形の桜色の唇にもドキッとしてしまう。
何もかも高校時代のままの洋だな。五年の歳月が流れたのを感じさせない外見だった。ただ五年前より変わったのは、纏う雰囲気に色香が増したような気がする。
ずっと小さい頃から見守っていた洋なのに……長い間離れていたからか。急に何かが変わってしまった気がする。
「んっ……」
洋が起きそうになり瞼を動かし始めた。
「大丈夫か、水飲む?」
「ん……あぁ」
まだ寝ぼけている洋の肩を支え起こしてやると、洋が小さく何か呟いた。
「じょ……う?」
「何?今なんと言った?」
途端にはっとした表情で洋が目を開けた。少し焦った表情で辺りをキョロキョロ見回している。
「あ!安志!ごめんっ……ここどこ?」
「俺の家だよ」
「えっ!?悪い今何時?」
「もう二十三時過ぎだよ」
「そんな時間なのか!……まずいな」
「こんな時間だよ。泊まって行けよ」
「いや……すぐに帰らないと」
「そういえば洋はどこに住んでいる?送って行くよ」
ガバッと身体を起こし、俺の言葉を無視して慌てて帰り支度を始める洋に、思わずムッとしてしまった。
「おい、そんなに急ぐことないだろ。せっかく会えたのに」
「……でも心配するから」
「誰が?そういえば、お前さっき誰かと間違えただろう?」
「あっ……」
しまったというような顔をするので余計に気になって、つい言葉がきつくなってしまう。少し諦めたような顔をした洋は、もう一度ベッドに腰かけて息を整えた。
「安志……俺、ずっとお前に会いたかったよ。あんな別れ方したから気になっていた。でも俺はもう高校生じゃない。あれから五年も経ったんだよ。いろいろ……前とは違うのを理解して欲しい」
「そんなの分かっているさ!」
「……だから言いたくないこともあるし、聞かないで欲しいこともある」
キツい言葉だった。その通りなのは理解しているのに。
「……」
「安志?大丈夫か」
少し心配そうな躊躇う顔で、洋がじっと見つめてくる。
「……」
「俺が言い過ぎたよ、ごめん」
途端に心配そうな声で洋が心をこめて丁寧に詫びてくる。こういう所は小さい時のままだな。
「分かったよ。友達としてならいいだろう?また会おう。せめて連絡先だけでも教えてくれ」
「……」
「その位してもいいだろう?」
「分かった……携帯の番号でいいか」
「あぁもちろんだ。やっぱり家まで送らなくていいのか」
「おい!過保護な幼馴染だな……俺は男だぞ」
「悪い、つい……」
「じゃあな。安志、本当にありがとう」
困ったような顔で微笑む洋を送り出し、俺は壁にもたれてため息をついた。
洋の奴……元々綺麗な男だったが更に磨きがかかったみたいだ。俺はどうやら今でも洋が好きみたいだが、脈もないし、もう諦めるべき想いだ。
だが……こんなんじゃ……洋を想う悶々とした気持ちで、とても寝付けない。
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