45 / 1,657
第2章
虹の彼方 1
しおりを挟む
良かった……今日は外に出かけられるのか。
実は俺の身体は相当疲れているようだ。昨夜丈が俺を深く愛してくれた代償で、腰が重いし鈍く痛くて……今日はもうお前を迎え入れる自信がないのが本音だ。
しかも身体がこんなにぼろぼろになるまで、あんなに警戒していた同性の男に抱かれた俺。一体どういう心境の変化なのか。本当に丈だけは特別だ。君以外の男が触れると、未だに吐き気がして鳥肌が立つのだから。
ふぅっと安堵の溜息をつきながら洋服に着替えようとした時、鏡を見て絶句した。
「首筋だけかと思ったら全身にキスマーク。はぁ……全く丈の奴、なんてことを」
昨晩は丈があまりに激しく抱き続けるので意識が朦朧としてしまい、最後の方はよく覚えていない。それをいいことに、全身にお前の跡を残すなんて……これじゃ本当に出かけられないじゃないか。せっかく旅行に来たのに。
愛撫の跡を指でそっと触れてみると、昨夜のことが思い出され恥ずかしい気持ちになる。こんなところにまで愛してもらったのか。でも……やっぱり丈の奴いやらしいな。俺は女じゃあるまいし他人が見たらどう思うか、この服じゃまずい。
****
支度が遅いので部屋を覗くと、また洋の表情が曇っていた。
「怒っているのか」
そっと近寄り後ろから洋の華奢な腰に手をまわし、抱きしめた。
「悪かったよ。こんなにして。洋がどこかへ行ってしまうのではないかと、いつも不安だ。それでついこんなに。洋がたまに見せる不安そうな顔が心配で、私を置いてどこかに行ってしまいそうで」
「そんなことを考えていたのか」
意外そうな表情で、洋は私を見つめた。
濡れたような漆黒の瞳は、静かに澄んでいた。
「私は洋の喜びも悲しみもすべて受け止めたいともがいているよ。そんな気持ちが込み上げてきて、この数日間必要以上に激しく抱いてしまった。どうか許してくれ」
「丈は心配性だな。俺はどこにも行かない。それにお前以外に行くところなんてないよ。丈と一緒にいると安らぐ。俺の悲しみは、お前といると癒されるのだから……許すもなにも……」
心の底から詫びると、洋はそっと私に手を重ねて、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
実は俺の身体は相当疲れているようだ。昨夜丈が俺を深く愛してくれた代償で、腰が重いし鈍く痛くて……今日はもうお前を迎え入れる自信がないのが本音だ。
しかも身体がこんなにぼろぼろになるまで、あんなに警戒していた同性の男に抱かれた俺。一体どういう心境の変化なのか。本当に丈だけは特別だ。君以外の男が触れると、未だに吐き気がして鳥肌が立つのだから。
ふぅっと安堵の溜息をつきながら洋服に着替えようとした時、鏡を見て絶句した。
「首筋だけかと思ったら全身にキスマーク。はぁ……全く丈の奴、なんてことを」
昨晩は丈があまりに激しく抱き続けるので意識が朦朧としてしまい、最後の方はよく覚えていない。それをいいことに、全身にお前の跡を残すなんて……これじゃ本当に出かけられないじゃないか。せっかく旅行に来たのに。
愛撫の跡を指でそっと触れてみると、昨夜のことが思い出され恥ずかしい気持ちになる。こんなところにまで愛してもらったのか。でも……やっぱり丈の奴いやらしいな。俺は女じゃあるまいし他人が見たらどう思うか、この服じゃまずい。
****
支度が遅いので部屋を覗くと、また洋の表情が曇っていた。
「怒っているのか」
そっと近寄り後ろから洋の華奢な腰に手をまわし、抱きしめた。
「悪かったよ。こんなにして。洋がどこかへ行ってしまうのではないかと、いつも不安だ。それでついこんなに。洋がたまに見せる不安そうな顔が心配で、私を置いてどこかに行ってしまいそうで」
「そんなことを考えていたのか」
意外そうな表情で、洋は私を見つめた。
濡れたような漆黒の瞳は、静かに澄んでいた。
「私は洋の喜びも悲しみもすべて受け止めたいともがいているよ。そんな気持ちが込み上げてきて、この数日間必要以上に激しく抱いてしまった。どうか許してくれ」
「丈は心配性だな。俺はどこにも行かない。それにお前以外に行くところなんてないよ。丈と一緒にいると安らぐ。俺の悲しみは、お前といると癒されるのだから……許すもなにも……」
心の底から詫びると、洋はそっと私に手を重ねて、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる