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第2章
二人きりの旅 4
しおりを挟む明け方……ひんやりと冷たい手が寝ている私の頬に、そっと触れた。
目を開けると洋が寂しげな表情で見つめていた。この表情が私を捉えてやまないんだ。
「どうした?こんなに冷え切って……」
「あっ起こしてごめん。なんでもないよ」
一体いつも何を思いつめているのか。気になって声をかけようとすると、濁すように洋はいつも顔を背けてしまう。
「さぁこっちへ来い。もう何もしないから」
「んっ気が付いたらもう明け方だね。俺……あれから記憶が」
少し顔を赤らめて恥ずかしそうにしている洋の手を引き、私の布団へと誘う。露天風呂では嫌がるので部屋に戻り、そのまま流れるように欲望のままに洋を抱き潰してしまったのは私だ。全く私としたことが、洋のことになると感情のコントロールが上手くいかない。
「すまなかった。あんなに激しく抱いてしまって。どこか痛いところはないか」
「大丈夫だよ。少し怠いけれども……」
布団の中で洋の全身を包み込むように優しく抱きしめると、素直に私に躰を預けてくれる。
「やはり丈の胸は暖かい。温まるな」
小さく微笑み表情を緩めた横顔に安堵して、その細い指に優しく指を絡めるとキュッと握り返してくれる。
安心したのかしばらく見つめ合っているうちに、洋は寝息を立て始めた。
その天使のような寝顔を見つめながら、私は強く思う。 何も知らない無垢だった洋の天使の羽を剥いでしまった責任は必ず負う。こんなにも人を愛おしく守りたいと思ったのは、生まれて初めてだ。
周りから蔑まれてもいい。
片時も離れたくない。片時も離したくない。
いつまでもこうやって、心と身体を合わせていたい。
もしかして私が洋に負担をかけて苦しめているのでは……そう思うと胸がチクリと痛む。
ふとした瞬間に洋が見せる儚くも危うい雰囲気に、今にも私の目の前から消えてしまいそうな不安に襲われ、ひと時も離れたくなくて、洋を激しく抱いてしまう。
洋のことは抱いても抱いても、抱き足りない。
この飢えたような乾いた感情は、一体何故なのか。私の記憶の奥に眠る何かを感じている。
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