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第2章
二人きりの旅 1
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洋を初めて抱いた日から、私は月のように儚げな洋をこの腕の中に閉じ込めたい、繋ぎ留めたい、そんな気持ちで溢れかえっている。だから毎晩のように彼の身体を求め、抱き続けていた。
だが、洋が壊れそうになるほどしっかりと抱きしめているのに、幾ら求めても何かが足りない不安な気持ちばかり募っていた。
何故だろう?まるで長い年月……洋に飢えていたかのようだ。
そんな私の気持ちに寄り添うように、洋は私の望むままに、その躰を差し出してくれた。
すべてを委ねてくれるそんな洋に甘え、欲情し続けていた。
****
昨日から、お互い休暇が取れたので温泉宿に泊まっている。最近どことなく沈みがちの洋の気分を変えてあげたくなったのだ。ふと一人でいる洋を見ると、何処か遠くを見つめ、どこか寂しげにしている時があるから。
「洋、明後日まで休みだろう?近場の温泉に行ってみないか」
「丈……いいのか。温泉なんて久しぶりだ。うれしいよ」
明るい表情を浮かべる洋につられて、私も笑顔になる。
やってきた温泉宿は離れの一室でとても静かな空間だった。そこには二人きりの時間があった。窓の外には暖かな日差しがキラキラと輝いて見えていた。
「丈!景色が凄くいいね!後で外を歩いてみないか」
にっこり微笑みながら、窓の外を眺めている洋の声は明るく澄んでいた。私に抱かれた日から洋はますます心を許してくれ、甘い笑顔を沢山見せてくれるようになっていた。もしかしたら本来はこういう性格なのかもしれない。
最近は七歳も年下の洋の明るい雰囲気につられて、笑う自分自身にも驚いている。
ここ数年は何をしても面白くなく、研究職という仕事柄一人で籠ることが多かった。そうしているうちに人と接するのがだんだん面倒になってきて、笑うことを忘れていたのに……。洋のおかげで私も変化してきている。そのことが嬉しくて、私はぼんやりと窓の外を眺めている洋の躰に腕をまわし、きゅっと抱きしめてやった。
「洋……その前に温泉はどうだ?」
「んっそうだね」
「この部屋には専用の露天風呂がついているんだよ」
「えっ……そうなのか」
途端に顔を耳まで赤く染める可愛い洋になっていく。
私は彼のこんな表情をもっと見たくて意地悪したくなってしまう。
だが、洋が壊れそうになるほどしっかりと抱きしめているのに、幾ら求めても何かが足りない不安な気持ちばかり募っていた。
何故だろう?まるで長い年月……洋に飢えていたかのようだ。
そんな私の気持ちに寄り添うように、洋は私の望むままに、その躰を差し出してくれた。
すべてを委ねてくれるそんな洋に甘え、欲情し続けていた。
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昨日から、お互い休暇が取れたので温泉宿に泊まっている。最近どことなく沈みがちの洋の気分を変えてあげたくなったのだ。ふと一人でいる洋を見ると、何処か遠くを見つめ、どこか寂しげにしている時があるから。
「洋、明後日まで休みだろう?近場の温泉に行ってみないか」
「丈……いいのか。温泉なんて久しぶりだ。うれしいよ」
明るい表情を浮かべる洋につられて、私も笑顔になる。
やってきた温泉宿は離れの一室でとても静かな空間だった。そこには二人きりの時間があった。窓の外には暖かな日差しがキラキラと輝いて見えていた。
「丈!景色が凄くいいね!後で外を歩いてみないか」
にっこり微笑みながら、窓の外を眺めている洋の声は明るく澄んでいた。私に抱かれた日から洋はますます心を許してくれ、甘い笑顔を沢山見せてくれるようになっていた。もしかしたら本来はこういう性格なのかもしれない。
最近は七歳も年下の洋の明るい雰囲気につられて、笑う自分自身にも驚いている。
ここ数年は何をしても面白くなく、研究職という仕事柄一人で籠ることが多かった。そうしているうちに人と接するのがだんだん面倒になってきて、笑うことを忘れていたのに……。洋のおかげで私も変化してきている。そのことが嬉しくて、私はぼんやりと窓の外を眺めている洋の躰に腕をまわし、きゅっと抱きしめてやった。
「洋……その前に温泉はどうだ?」
「んっそうだね」
「この部屋には専用の露天風呂がついているんだよ」
「えっ……そうなのか」
途端に顔を耳まで赤く染める可愛い洋になっていく。
私は彼のこんな表情をもっと見たくて意地悪したくなってしまう。
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