重なる月

志生帆 海

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第1章

抱かれて迎える朝 2

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 腰を擦っていたはずの手が少しづつ移動して、俺の内股の柔らかい皮膚に辿り着いてしまった。

「んんっ…」 

 俺は躰が疼くのに気づかれないように耐えるので必死だ。

「丈…もう擦らなくていいよ。腰は大丈夫だから、少し休めば」 
「洋……凄く可愛いよ」 
「そういうこというのやめろ…嫌だ」 

 恥ずかしくて口からは次々と否定の言葉が出てきてしまう。 

 そう……俺は慣れてない。 
 人に甘えるのも、人に気を許すのも。 
 
 だから俺を大切にしてくれる丈にだって、こんな口しか聞けないんだ。 

 そんな風に頭の中でぐるぐる考えていると 、丈が温かい眼差しで俺をまっすぐに見つめてくる 。その視線だけで躰の奥がぞくぞくしてしまうよ。

「洋……もしかして勃っているのか」 

「なっ!何言ってんだよ!」 

 もうもう……どうにかして欲しい! 俺はこんな奴だったか?。自分の躰がこんなに快楽に過敏だったなんて驚くばかりだ。 

 頭の中でそんなこと考えているうちに 丈の男らしい骨ばった手が下着の中に侵入してきたので、慌ててその侵入を阻止しようと手を添えた。

「駄目だっ俺もう無理!」 
「辛そうだ。手伝ってやるよ」 
「い……いい!」 

 ベッドから逃げようとするが重い腰が、動きを鈍らせ、気が付くと俺はまたベッドに仰向けにされ、余裕の笑みを浮かべた丈に見下ろされていた。 

「こんな明るいところじゃ無理だ!朝からこんなこと!」 
「今日は休みだ。予定もないだろ?もう一度抱いてもいいか」 
「えっ…」

 もう本当に恥ずかしいよ。昨日の今日でこんなにやりまくるなんて。戸惑う俺の重たい腰を、丈は簡単に持ち上げ膝頭を掴んで開いてくる。 

「あ……やっここ明るい!」 
「洋の可愛い顔がよく見える」 

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。 

 昨日は雨に濡れて嫌な夢をみて、自分自身が止められない衝動で丈に抱いて欲しいなんて勢いで言ってしまったが、今は正気で、しかもこんな朝日が差し込む明るい部屋で。

 だが、快楽に染まり始めた躰は自分自身が持て余すほどに熱くなっていき、気が付いたら丈の肩に手を回し、縋りつくように抱きついてしまっていた。

 こんな風に始まった 丈と俺の二人の関係。この先は一体どうなっていくのだろうか。

 まだ何も考えられない 。

 今は丈に抱かれるこの甘美な感覚に、ただ酔いしれたい 。

 こうやって一つになるために生まれてきたような、過去からの贈り物のようなこの関係が、今始まった。


第1章  了


****ご挨拶****

はじめまして♪
執筆している志生帆 海といいます。
お気に入りに登録したり、しおりに挟んで、ここまで読んで下さってありがとうございます。

本当に拙い創作なのに、感激です。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、この丈と洋の話は過去からの輪廻転生の話です。だから「過去からの贈り物」とかデジャブを感じるシーンが、何度か出てきていました。

 月シリーズとして、二人が出会うずっとずっと前の物語を『悲しい月』『月夜の湖』というタイトルで綴っていきます。もしご興味があれば、一緒に読んでいただけたら、物語が深まります。







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