重なる月

志生帆 海

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第1章

君に抱かれる 1

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 俺の方から誘ったんだ。

 いきなり丈に抱き付き「抱いて欲しい」と頼むなんて ……今までの俺にはありえない行動だ。そう頼んだ途端 いきなり横抱きにされベッドへ運ばれた。

 見上げると丈の男らし熱い眼差しが注がれていた。

 途端に高まる胸のうち……

 ドクンドクン 
 自分の心臓の音が耳に響いてくる。

 ギシッ 

 ベッドが軋む音が静まった部屋に響き、お互いの息遣いだけが妙に大きく聞こえるようで、心臓がバクバクしてきた。覚悟を決めた俺は、震える手を逞しい背中に伸ばし、自ら丈を誘った。

 無理したわけじゃない。そうしたかったんだよ。この瞬間を待っていたは俺の方なのかもしれない。

 丈から受け取る甘い情熱のこもった口づけ。口づけって……こんなに甘いものだなんて、何も知らなかったよ。

 甘くもっともっと欲しくなる丈の柔らかい唇の温かさ。俺の唇を吸い、中へ挿しこまれる舌の動きに頭がぼんやりとしてくる。 甘美なその口づけに酔いしれ 、ただ欲望のままにもっともっと欲しくなっていく。

「あっ」

 またこの感覚だ。 俺の中心が固くなっていくのが分かる。 

 そこに丈の男らしい骨ばった指が添えられると 、その熱は暴れ出し外へ外へ出したくなり、擦られた途端、熱がはじけてしまった。

 あっけないその自分のものに一気に恥ずかしさが込み上げてくる 。

「あぁ……やっ駄目」 

 もうもうもう 、頭が回らない 。
 この後の展開 、知っているよ。
 どうするかくらい。
 でも……もう苦しい 
 心が、先走る躰に追いつかないんだ !

「洋……落ち着いて……大丈夫だから」 

耳元で囁かれる丈の低く落ち着いた声に、痺れる。

「あ……あぁ」 

 丈が大丈夫って言ってくれるのなら、大丈夫だと思える 。信じられない位、素直な俺がいることに驚くばかりだ 。もうされるがままに 、すべて委ねよう。

 躰の力が抜けたところに 、丈の指がそっと侵入してくる 。

 ビクッ 

 躰は反応するが拒絶反応じゃない。確実に感じている。蠢く指に、なんだか奥の方がムズムズしてくるよ。

「洋……指増やすよ」 

 その声と共に、俺の中を圧迫する力が増していく。

「ふっ……あっ……あ」

 指は何かを探すように、俺の中を彷徨っている 。

「ここか?」 

 丈の指が的を絞ったように、一点をぐいと押し上げてきた。

「あっ!」 

 大きな声が漏れてしまった 。だってそこは ……そこは!
  
「洋……ここが気持ちいいか。ここだな」

 グイグイとリズムよく刺激される度に、甘い疼きが躰の中から沸き起こり、自然と腰が揺れ出してしまった。

「あうっ……うッ……丈!丈!もう今日はだ……め……ここまでにして……お願い !おかしくなる!」

 喘ぎ声と共に耐えがたい快楽に翻弄された口から……静止を求める声があがってしまう。嫌なわけじゃない。でも怖い。

 だってこの先は……。

 

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