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第1章
雨に濡れて 4
しおりを挟む「洋だって嫌なんだろ本当は。ずっとこんな目に遭って来たのか。私がどうにかしてやりたい。洋がまたこんな目に遭うのを黙ってみてはいられない」
やめてくれ丈。そう言われると、強がっていた気持ちが急に萎えてくるじゃないか。甘えたくなってしまう。ずっと男がこんな目に遭っているなんて恥ずかしいだけだから、周りに気づかれないよう突っ張って生きてきた俺なのに。丈……君の前じゃ俺はどこかおかしいよ。
女みたいに、君を頼りたくなってしまう。 守られてみたいとさえ思ってしまう。
「洋!聞いているのか」
「え?あぁ、何?」
「お前バイク乗れるか」
「乗れるよ。アメリカではいつも乗っていたから」
「よし、じゃあ私のバイクを貸してやるから、明日からはそれで通勤しろ」
「えっいいのか。それってかなり助かるけど……」
バイクなら満員電車の痴漢から逃れられるし、車酔いからも解放される。
「よし。それでいこう」
丈もまんざらでもないような、嬉しそうな表情をしている。 俺にそんな気遣いをさりげなくしてくれる優しさが身に染みて、心が和むよ。
****
「丈、ありがとう」
ほっとした表情を浮かべる洋の上品な微笑みに見惚れていた私は慌てて目線をずらし、少し離れ歩き出した。
「遅刻するぞ」
「あぁ……もう急がないと」
どうやら私は確実に洋のことが気になっているようだ。これはもう認めざる得ない。
だが洋は幼い頃から男から色恋の目で見られ、きっと何度も無理やり触られたり犯されそうになった経験があるのだろう。だから、こんなにも同性からの邪な視線に警戒しているのだ。だがその一方で洋は私にだけは、心を許し始めてくれている。
どうしたものか、この微妙な関係。頭の中で黙々と思案しながら、会社まで道のりを洋と肩を並べ黙々と歩いた。
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