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第1章
雨に濡れて 1
しおりを挟むあの朝の一件から、私に少し気を許してくれた洋のことが、とにかく可愛くて仕方がない。
あの日の晩から家の中では、私のことを「丈」と呼んでくれるようになった。だから私も「洋」と呼ぶ。
ただ……兄のように慕ってくれるようになったことが嬉しくもあり、少しだけつまらなくもあった。いずれにせよ見知らぬ男との同居生活は、当初の想像よりもずっと楽しいものとなりつつあった。
****
「洋、明日は私も久しぶりに出社するが、一緒に行くか」
「えっ!いいよ。俺は子供じゃあるまいし、一人で行けるよ」
ぎょっとした表情の後、頬を少し赤く染めて、断ってくる。
「そうか、やはり車が苦手なら、一緒に電車で行くか」
「子供扱いするなよ」
ますます顔を赤らめてくるのが可愛い。
****
「だからいいって!」
くそっ丈の奴、一体何なんだ!過保護すぎるだろう。大体この前気を失った俺を女みたいに横抱きにして医務室に運んだりするから、同じ部署の女の子に散々揶揄われて、クラクラした。
俺は女みたいに扱われるのは大っ嫌いだ。なのに丈のことは、なぜか嫌いになるどころか、そんな風に抱いてくれたことを想像するだけで躰の奥が熱くなってくる。
俺……どうかしちゃったのか。今まで散々男に色目を使われて触れられて、嫌な思いしてきたのに、なんで丈なら平気なのか。むしろもっと触れて欲しいとさえ思うなんて、本当におかしい。
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