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第1章
出会い 6
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下校時に突然安志が俺の教室にやって来た。
「珍しいな。今日は部活ないのか」
「いや、これからだ。あのさ……洋、突然だけど明日から一緒に学校に行かないか」
「突然、なんだよ。どうした?」
「理由なんてない!とにかく洋の家まで朝迎えに行くから待っていろよ!いいだろ?」
「……分かった」
安志はそのまま照れくさそうに頬を赤くして去って行った。
安志ありがとう。お前はもしかして気が付いていたのか。俺の悩みを、知っているのか。
昔からそっと俺のことを助けてくれる優しい奴だよ、お前は……
****
「洋、おはよ!」
「安志、本当に来てくれたんだな」
「当たり前だろ」
翌朝、安志は時間通りに迎えに来た。 目を泳がせながら、顎で行くぞと言っている照れくさそうな顔に、俺はクスっと笑って付いて行った。
当たり障りのない会話をしながら駅に向かうと、朝日がいつになく眩しいよ。久し振りだ!こんな楽しい朝。中学まではよくこうやって肩を並べて行ったんだよな。
駅に着くと、電車は相変わらず、満員でホームには人がごった返していた。
「はぁ、やっぱり激混みだな」
「そうだな」
覚悟を決めて、ホームに滑り込んで来た満員電車に乗ろうとすると、安志に肩をぐいっと掴まれた。
「おい洋、一台待って次の電車にしよう。そして乗り込んだら 一番奥のドアの前まで進むぞ!この地下鉄は本当に毎日混んでいやがる!」
「え?」
「なっ?そうしたらいいよ」
「……うん、わかったよ」
幼い頃のゲームのように作戦を立ててくれる安志。
お前はいい奴だ、いつも。 昔を思い出すなこういうの。気持ちが温かい。お前はいつも安心だ。
****
次の電車が来たので、もたもたする洋の背中を押して、一気に中へ押しこむ。
「ふぅ~成功だな、洋!」
「あぁ!」
満員電車に乗り込んだ俺達。
乗車口と逆のドアの前まで一気に進み、洋をドア側に配置して 、俺はその前に立った。 背は今のところ俺の方が高いから、洋は少し上目づかいで俺のことを見上げ、口角を少し上げて微笑んだ。
うう……その笑顔……まずいぞ。
そのピンク色に仄かに色づいた綺麗な形の唇も同じ男とは思えない!
「うわっ」
「揺れるな」
満員電車が揺れる度に、洋のくしゅっとした柔らかい髪の毛が俺の顎をかすめ、くすぐったい。
洋をガードしている俺の背には、他の乗客の体重がぐーっと凄い圧力でかかってくるが、大事な洋のために足を踏ん張り、耐えるんだ。
そのため洋と俺の間には握りこぶしほどの空間ができている。
身体の奥からくすぐったい気持ちが込み上げてくる。
今洋に触れたら、俺のあそこ、まずいことになりそうだな。
「安志……」
「ん?」
「あのさ、ありがとな……」
照れくさそうに洋は俯きながら、そう囁いた。 洋が目を伏せると長い睫毛が朝日を受けて一層艶めいて見えて、 俺の心をくすぐってくる。
「あぁ……いや別に、ただ家も近所だしせっかく同じ高校に入ったし、一緒に行くのも悪くないかなと思っただけさ。気にするなよ」
「ん……」
く~っ堪らない!こんな会話、まるで女子としているみたいだな。
まったく洋の奴は、自分の魅力を分かっているのだかどうだか。とにかく可愛い過ぎる!
あぁ俺は余計なこと言ったのか。毎朝試練になるな、思わず苦笑してしまった。
とにかく、あと二駅だ!さぁ頑張ろう!
「珍しいな。今日は部活ないのか」
「いや、これからだ。あのさ……洋、突然だけど明日から一緒に学校に行かないか」
「突然、なんだよ。どうした?」
「理由なんてない!とにかく洋の家まで朝迎えに行くから待っていろよ!いいだろ?」
「……分かった」
安志はそのまま照れくさそうに頬を赤くして去って行った。
安志ありがとう。お前はもしかして気が付いていたのか。俺の悩みを、知っているのか。
昔からそっと俺のことを助けてくれる優しい奴だよ、お前は……
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「洋、おはよ!」
「安志、本当に来てくれたんだな」
「当たり前だろ」
翌朝、安志は時間通りに迎えに来た。 目を泳がせながら、顎で行くぞと言っている照れくさそうな顔に、俺はクスっと笑って付いて行った。
当たり障りのない会話をしながら駅に向かうと、朝日がいつになく眩しいよ。久し振りだ!こんな楽しい朝。中学まではよくこうやって肩を並べて行ったんだよな。
駅に着くと、電車は相変わらず、満員でホームには人がごった返していた。
「はぁ、やっぱり激混みだな」
「そうだな」
覚悟を決めて、ホームに滑り込んで来た満員電車に乗ろうとすると、安志に肩をぐいっと掴まれた。
「おい洋、一台待って次の電車にしよう。そして乗り込んだら 一番奥のドアの前まで進むぞ!この地下鉄は本当に毎日混んでいやがる!」
「え?」
「なっ?そうしたらいいよ」
「……うん、わかったよ」
幼い頃のゲームのように作戦を立ててくれる安志。
お前はいい奴だ、いつも。 昔を思い出すなこういうの。気持ちが温かい。お前はいつも安心だ。
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次の電車が来たので、もたもたする洋の背中を押して、一気に中へ押しこむ。
「ふぅ~成功だな、洋!」
「あぁ!」
満員電車に乗り込んだ俺達。
乗車口と逆のドアの前まで一気に進み、洋をドア側に配置して 、俺はその前に立った。 背は今のところ俺の方が高いから、洋は少し上目づかいで俺のことを見上げ、口角を少し上げて微笑んだ。
うう……その笑顔……まずいぞ。
そのピンク色に仄かに色づいた綺麗な形の唇も同じ男とは思えない!
「うわっ」
「揺れるな」
満員電車が揺れる度に、洋のくしゅっとした柔らかい髪の毛が俺の顎をかすめ、くすぐったい。
洋をガードしている俺の背には、他の乗客の体重がぐーっと凄い圧力でかかってくるが、大事な洋のために足を踏ん張り、耐えるんだ。
そのため洋と俺の間には握りこぶしほどの空間ができている。
身体の奥からくすぐったい気持ちが込み上げてくる。
今洋に触れたら、俺のあそこ、まずいことになりそうだな。
「安志……」
「ん?」
「あのさ、ありがとな……」
照れくさそうに洋は俯きながら、そう囁いた。 洋が目を伏せると長い睫毛が朝日を受けて一層艶めいて見えて、 俺の心をくすぐってくる。
「あぁ……いや別に、ただ家も近所だしせっかく同じ高校に入ったし、一緒に行くのも悪くないかなと思っただけさ。気にするなよ」
「ん……」
く~っ堪らない!こんな会話、まるで女子としているみたいだな。
まったく洋の奴は、自分の魅力を分かっているのだかどうだか。とにかく可愛い過ぎる!
あぁ俺は余計なこと言ったのか。毎朝試練になるな、思わず苦笑してしまった。
とにかく、あと二駅だ!さぁ頑張ろう!
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