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第1章
出会い 1
しおりを挟む「くそっなんてことだ!」
俺は重たいスーツケースを押しながら途方に暮れていた。
留学先のアメリカの大学を卒業し日本の製薬会社に就職した俺は、帰国したその足で直接会社の独身寮に入る手はずを整えていた。なのに…手違いで、俺の部屋が寮にないなんて……酷いじゃないか。明日から出勤なのにどうしてくれるんだと人事部に詰め寄って、急遽特別にテラスハウスに部屋を用意してくれたのは良かったが、その家に向かう足取りはかなり重かった。
「なんだってこの俺が、見ず知らずの男と同居しなくちゃいけないんだ!」
テラスハウスの同居部屋しか空いていないなんて最悪だ。
同居相手の男って一体どんな奴なんだ?
はぁ……俺は、まったくついていない。
駅から地図通りに歩くとほどなく、住所のメモ書きと一致する家を見つけた。どんな家だろうと目線を上にあげると、暗い気持ちとは裏腹に希望に満ちたような眩しい明るい光が差し込んできて、思わず目を細めてしまった。
「ここなのか……」
街の外れにあるテラスハウスは白い洋館で、明るい雰囲気の家だった。
「しょうがない……」
覚悟を決めて、思い切ってインターホンを押すと、不愛想な男の声が返ってきた。
「誰だ?」
冷たくそっけない声だが、どうでもいい。今日から知らない男と二人きりの暮らしだなんて、考えただけでもぞっとする。とにかく、なるべく余計な顔を合わせないよう、時間をずらして気を付けて過ごそう。
また……あんな嫌な目にあうのはまっぴらだ。
あれこれと今後の苦労が目に浮かび、ため息ばかり募ってしまった。
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