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番外編
お祭りに行きたい②
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それからユリウスとルビーの二人は屋台でさまざまなものを食べ歩き、たくさんの雑貨や本の露店も見て回った。ルビーは何でも珍しいらしく、目を輝かせて楽しんでいた。
「あれは何でしょうか?」
「ああ、あれはゲームです。おもちゃの銃で撃ち落とした景品が貰えるのですよ。東にある遠い国の遊びがここまで伝わってきたそうです」
「それは楽しそうですね!」
「やってみますか?」
「はいっ!」
ユリウスはキラキラと目を輝かせているルビーを、射的のお店まで連れて行った。子どもたちがたくさんいるのでかなり浮いているが、ルビーはそんなことは気にしていないらしい。
「一回お願いするよ。妻がしてみたいようでね」
ユリウスが代金を払いながらそう伝えると、店員は驚いて声をあげた。
「ユリウス様っ!? は、はい。もちろんです。奥様どうぞ」
「ありがとうございます」
ルビーはおもちゃの銃を受け取ったもののどうすればいいかわからなかった。
「これはこうして弾を入れて、好きなものを狙って撃つのですよ」
ユリウスにやり方を教えてもらい、ルビーは挑戦することにした。
パンッ
慎重に狙ったつもりだが、なかなか難しくてルビーは当てる事ができなかった。身体の小さなルビーは、おもちゃの銃でも重たくてきちんと銃を固定できなかったからだ。
「難しいです」
あっという間に最後の弾になってしまった。わかりやすくしゅんと肩を落としたルビーの手に、ユリウスは自分の手を重ねた。
「ユリウス?」
「少しお手伝いしましょう」
ルビーの後ろから抱き締めるような形で手を重ねて銃を持ち、狙いを定めた。
その体制は美しく整っており、明らかに素人の構えではなかった。
「いきますよ」
パンッという音と共に、ルビーが狙っていたクマのぬいぐるみは倒れた。
「上手くいきましたね」
至近距離で爽やかに微笑むユリウスを見て、ルビーは胸がドキドキして倒れそうになった。
「さすがユリウス様!」
「一発で仕留めるなんて」
「何をしても格好良いですね」
周囲にいた客たちが歓声をあげていたが、ルビーは固まっていた。
「恥ずかしいですね。いつの間にこんなにギャラリーが増えていたのでしょうか」
注目を浴びたユリウスは少し困ったように眉を下げていた。
「ユリウス様が撃ったら店の商品全部なくなりますよ。客が増えるのは嬉しいですけど」
「はは、今回はルビーの手助けをしただけだから許してくれ。妻がそれを欲しかったみたいだからね」
「わかりましたよ。はい、景品です」
ユリウスの手の中に置かれたクマのぬいぐるみを、ルビーにそのまま差し出した。
「取れて良かったですね」
「ありがとうございます。大切にしますっ!」
大事そうにクマをぎゅうっと抱き締めているルビーは何とも可愛らしくて、ユリウスは早く屋敷に戻って二人きりになりたかった。しかしルビーはライトアップを見たいと言っていたので、ユリウスはその気持ちをグッと抑え込んだ。
「妬けますね」
「……?」
きょとんとして不思議そうに首を傾げたルビーの耳元に、ユリウスは唇を近づけた。
「クマより私を抱き締めて欲しいのですが」
低く響く声でそんなことを言うので、ルビーの耳は真っ赤に染まった。
ルビーがドギマギしている様子に満足したユリウスは、フッと微笑んだ。
「ルビーは可愛いですね」
「あ、ありがとうございます。でもユリウスは誰よりも格好良いです! このクマもユリウスが取ってくれたので、一生大事にすると決めました!」
「……そうですか」
ユリウスは過去の自分を反省して、なるべく素直に感情を伝えるようにしている。だがルビーはいつでも真っ直ぐに嬉しいことを言ってくれるので、結局ユリウスが照れてしまうことの方が多い。
ルビーは社交辞令や気を使って大袈裟に言っているのではなく、本心からそう思ってくれているのがわかるので余計に心を鷲掴みにされてしまうのだった。
「わたしはユリウスが一番好きです」
ルビーがくるりと振り向いて笑顔を見せた時、街中のライトが一斉に点灯した。キラキラした光の中で微笑んでいるルビーは、誰よりも輝いて見えた。
「わあ、凄い! 綺麗ですね」
子どものようにはしゃいでいるルビーの肩を抱き、ユリウスは自分の腕の中に閉じ込めることにした。
「ユリウス?」
「私のそばにいてください」
「ふふ、心配性ですね。わたしは大人なので、もしはぐれても屋敷まで戻れますよ」
ルビーは呑気にそんなことを言って笑っていた。ユリウスは、もちろんそんな心配をしているのではない。
光の中にいるルビーが神聖で美しいもののように思えて、いつか自分の前からまた突然消えてしまうのではないかと不安になったのだ。
「……愛しています」
触れるだけのキスをすると、ルビーはみるみるうちに顔が真っ赤になった。
「そ、外ですよ」
ルビーは人混みでこういうことをされるのは恥ずかしいらしい。外で一人で水浴びはできるのに、キスをされるのは照れるようだ。
「誰も見ていませんよ」
「でも人が……」
「みんな自分の大切な人しか見えていませんから」
ルビーが周囲を見渡すと、皆それぞれ恋人や友達や家族とライトアップされた街を楽しんでいる姿が見えた。
「ほ……本当ですね」
「ええ、だから私たちのことは誰も気にしていませんよ」
ユリウスはそう言ってもう一度ルビーに口付けをした。
実際は領主であるユリウスが街中で目立たないわけはなく、領民たちもしっかりとその様子を見ていたが仲の良い二人の姿を温かい目で見守っていた。もちろんユリウスもそんなことは分かってキスをしているのであって、知らないのはルビーだけだった。
目が合った領民たちに、ルビーに気づかれぬようにシーッと唇に人差し指を立てたユリウスの姿はあまりにも色っぽかったと噂になっていた。その姿を見た人は、老若男女問わずユリウスにときめくくらいの破壊力だったらしい。
「楽しめましたか?」
「はい、大満足です!」
「ではそろそろ戻りましょうか」
初めての祭りがよっぽど楽しかったらしく、ルビーは屋敷に戻っても侍女たちに今日どんなことをしたのかを嬉しそうに話し続けそれぞれにお土産を配っていた。
そして、すべての準備が終わって眠る時間になった。夜まで祭りに行っていたので、普段よりだいぶ遅めの時間になっていた。
ユリウスが寝室のベッドに行くと、ルビーはクマのぬいぐるみを胸に抱きながら幸せそうにすやすやと眠っていた。
「……そうなりますよね」
ふうと大きなため息をついたユリウスは、帰る前からこうなることは大体わかっていた。わかってはいたが、起きていてくれたら嬉しいなと思ってしまうのが男心というものだ。
眠っているルビーはあどけなくて、可愛らしいのが憎らしい。そんな顔で眠られては、ユリウスが手を出せるはずもなかった。
「あなたばかり一緒にいてずるいですよ」
ユリウスはルビーからクマのぬいぐるみを抜き取り、ベッドサイドのテーブルに置いた。ルビーはぬいぐるみを抜き取っても、全く起きる様子はない。
「おやすみなさい」
ユリウスはルビーを抱き寄せて、ゆっくりと眠りについた。
「ユリウス、おはようございます!」
「……おはようございます」
しっかり寝たルビーは朝から元気だった。いつもはユリウスの方が早く起きるが、どうやら今朝は早めに起きたらしい。
「さっき鏡で確認したら、舌の青いのが直っていました!」
「それは良かったですね」
「はい」
「……見せてください」
何も疑っていないルビーは、ユリウスに言われるがままパカリと大きく口を開けて舌を見せた。
「本当ですね」
ユリウスはルビーの頬に手を当てて、色を確認するふりをしてそのままキスをした。
「んんっ……!」
驚いたルビーをそのままベッドに寝かせて、だんだんと深い口付けに変えていった。
「あの……クマが……ん……見ています」
そう言われてユリウスはチラリとベッドサイドのテーブルに目をやると、確かにクマのぬいぐるみがこちらを向いていた。
ユリウスはキスを止めることなく、器用に片手を伸ばしてクマの顔を壁側に向けた。
「これで大丈夫です」
ニッと意地悪そうに笑ったユリウスは、昨夜我慢した分までこれからルビーを愛することに決めた。
祭りは二日間あったが、領民たちがユリウスとルビーの姿をみたのは初日だけだった。なぜならその日の二人は屋敷から出てくることはなかったからだ。
結婚してからルビーの部屋には物が増えた。期間限定の恋人だった頃は、亡くなった後のことを考えてかルビーは物を増やすことを嫌がっていた。
しかし、今ではユリウスに贈られた服や物に囲まれて過ごしている。そしてルビーはそのどれもを大切している。もちろん、今回のクマのぬいぐるみもルビーの部屋の机に大事に置かれている。
そのことがユリウスはとても嬉しかった。新しい物を増やすのは『ここを離れない』というルビーの心境の変化だとわかっていたからだ。
「ルビー、何かしてみたいことはありますか?」
「してみたいことですか? たくさんあります!」
「ではこれから一つずつ叶えていきましょう」
「はい!」
ルビーは世間一般のことを知らないことが多い。しかし、やりたいことはこれから全てユリウスと一緒に経験できるのだと思うと嬉しかった。
今回の祭りはルビーにとって一生忘れられない幸せな思い出になった。
「来年もお祭りに行きたいです」
「ええ。来年も再来年も……ずっと一緒に行きましょう」
「はい、約束です!」
ルビーは嬉しそうに微笑み、ユリウスの胸の中に飛び込んだ。
END
--------
これで番外編は終了になります。
二人の幸せな生活は続いていますが、ルビーとユリウスのお話はこれで一旦最後にします。
今作はたくさんの方に読んでいただけてとても幸せでした。
番外編までお読みいただきありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけていれば嬉しいです。
大森 樹
「あれは何でしょうか?」
「ああ、あれはゲームです。おもちゃの銃で撃ち落とした景品が貰えるのですよ。東にある遠い国の遊びがここまで伝わってきたそうです」
「それは楽しそうですね!」
「やってみますか?」
「はいっ!」
ユリウスはキラキラと目を輝かせているルビーを、射的のお店まで連れて行った。子どもたちがたくさんいるのでかなり浮いているが、ルビーはそんなことは気にしていないらしい。
「一回お願いするよ。妻がしてみたいようでね」
ユリウスが代金を払いながらそう伝えると、店員は驚いて声をあげた。
「ユリウス様っ!? は、はい。もちろんです。奥様どうぞ」
「ありがとうございます」
ルビーはおもちゃの銃を受け取ったもののどうすればいいかわからなかった。
「これはこうして弾を入れて、好きなものを狙って撃つのですよ」
ユリウスにやり方を教えてもらい、ルビーは挑戦することにした。
パンッ
慎重に狙ったつもりだが、なかなか難しくてルビーは当てる事ができなかった。身体の小さなルビーは、おもちゃの銃でも重たくてきちんと銃を固定できなかったからだ。
「難しいです」
あっという間に最後の弾になってしまった。わかりやすくしゅんと肩を落としたルビーの手に、ユリウスは自分の手を重ねた。
「ユリウス?」
「少しお手伝いしましょう」
ルビーの後ろから抱き締めるような形で手を重ねて銃を持ち、狙いを定めた。
その体制は美しく整っており、明らかに素人の構えではなかった。
「いきますよ」
パンッという音と共に、ルビーが狙っていたクマのぬいぐるみは倒れた。
「上手くいきましたね」
至近距離で爽やかに微笑むユリウスを見て、ルビーは胸がドキドキして倒れそうになった。
「さすがユリウス様!」
「一発で仕留めるなんて」
「何をしても格好良いですね」
周囲にいた客たちが歓声をあげていたが、ルビーは固まっていた。
「恥ずかしいですね。いつの間にこんなにギャラリーが増えていたのでしょうか」
注目を浴びたユリウスは少し困ったように眉を下げていた。
「ユリウス様が撃ったら店の商品全部なくなりますよ。客が増えるのは嬉しいですけど」
「はは、今回はルビーの手助けをしただけだから許してくれ。妻がそれを欲しかったみたいだからね」
「わかりましたよ。はい、景品です」
ユリウスの手の中に置かれたクマのぬいぐるみを、ルビーにそのまま差し出した。
「取れて良かったですね」
「ありがとうございます。大切にしますっ!」
大事そうにクマをぎゅうっと抱き締めているルビーは何とも可愛らしくて、ユリウスは早く屋敷に戻って二人きりになりたかった。しかしルビーはライトアップを見たいと言っていたので、ユリウスはその気持ちをグッと抑え込んだ。
「妬けますね」
「……?」
きょとんとして不思議そうに首を傾げたルビーの耳元に、ユリウスは唇を近づけた。
「クマより私を抱き締めて欲しいのですが」
低く響く声でそんなことを言うので、ルビーの耳は真っ赤に染まった。
ルビーがドギマギしている様子に満足したユリウスは、フッと微笑んだ。
「ルビーは可愛いですね」
「あ、ありがとうございます。でもユリウスは誰よりも格好良いです! このクマもユリウスが取ってくれたので、一生大事にすると決めました!」
「……そうですか」
ユリウスは過去の自分を反省して、なるべく素直に感情を伝えるようにしている。だがルビーはいつでも真っ直ぐに嬉しいことを言ってくれるので、結局ユリウスが照れてしまうことの方が多い。
ルビーは社交辞令や気を使って大袈裟に言っているのではなく、本心からそう思ってくれているのがわかるので余計に心を鷲掴みにされてしまうのだった。
「わたしはユリウスが一番好きです」
ルビーがくるりと振り向いて笑顔を見せた時、街中のライトが一斉に点灯した。キラキラした光の中で微笑んでいるルビーは、誰よりも輝いて見えた。
「わあ、凄い! 綺麗ですね」
子どものようにはしゃいでいるルビーの肩を抱き、ユリウスは自分の腕の中に閉じ込めることにした。
「ユリウス?」
「私のそばにいてください」
「ふふ、心配性ですね。わたしは大人なので、もしはぐれても屋敷まで戻れますよ」
ルビーは呑気にそんなことを言って笑っていた。ユリウスは、もちろんそんな心配をしているのではない。
光の中にいるルビーが神聖で美しいもののように思えて、いつか自分の前からまた突然消えてしまうのではないかと不安になったのだ。
「……愛しています」
触れるだけのキスをすると、ルビーはみるみるうちに顔が真っ赤になった。
「そ、外ですよ」
ルビーは人混みでこういうことをされるのは恥ずかしいらしい。外で一人で水浴びはできるのに、キスをされるのは照れるようだ。
「誰も見ていませんよ」
「でも人が……」
「みんな自分の大切な人しか見えていませんから」
ルビーが周囲を見渡すと、皆それぞれ恋人や友達や家族とライトアップされた街を楽しんでいる姿が見えた。
「ほ……本当ですね」
「ええ、だから私たちのことは誰も気にしていませんよ」
ユリウスはそう言ってもう一度ルビーに口付けをした。
実際は領主であるユリウスが街中で目立たないわけはなく、領民たちもしっかりとその様子を見ていたが仲の良い二人の姿を温かい目で見守っていた。もちろんユリウスもそんなことは分かってキスをしているのであって、知らないのはルビーだけだった。
目が合った領民たちに、ルビーに気づかれぬようにシーッと唇に人差し指を立てたユリウスの姿はあまりにも色っぽかったと噂になっていた。その姿を見た人は、老若男女問わずユリウスにときめくくらいの破壊力だったらしい。
「楽しめましたか?」
「はい、大満足です!」
「ではそろそろ戻りましょうか」
初めての祭りがよっぽど楽しかったらしく、ルビーは屋敷に戻っても侍女たちに今日どんなことをしたのかを嬉しそうに話し続けそれぞれにお土産を配っていた。
そして、すべての準備が終わって眠る時間になった。夜まで祭りに行っていたので、普段よりだいぶ遅めの時間になっていた。
ユリウスが寝室のベッドに行くと、ルビーはクマのぬいぐるみを胸に抱きながら幸せそうにすやすやと眠っていた。
「……そうなりますよね」
ふうと大きなため息をついたユリウスは、帰る前からこうなることは大体わかっていた。わかってはいたが、起きていてくれたら嬉しいなと思ってしまうのが男心というものだ。
眠っているルビーはあどけなくて、可愛らしいのが憎らしい。そんな顔で眠られては、ユリウスが手を出せるはずもなかった。
「あなたばかり一緒にいてずるいですよ」
ユリウスはルビーからクマのぬいぐるみを抜き取り、ベッドサイドのテーブルに置いた。ルビーはぬいぐるみを抜き取っても、全く起きる様子はない。
「おやすみなさい」
ユリウスはルビーを抱き寄せて、ゆっくりと眠りについた。
「ユリウス、おはようございます!」
「……おはようございます」
しっかり寝たルビーは朝から元気だった。いつもはユリウスの方が早く起きるが、どうやら今朝は早めに起きたらしい。
「さっき鏡で確認したら、舌の青いのが直っていました!」
「それは良かったですね」
「はい」
「……見せてください」
何も疑っていないルビーは、ユリウスに言われるがままパカリと大きく口を開けて舌を見せた。
「本当ですね」
ユリウスはルビーの頬に手を当てて、色を確認するふりをしてそのままキスをした。
「んんっ……!」
驚いたルビーをそのままベッドに寝かせて、だんだんと深い口付けに変えていった。
「あの……クマが……ん……見ています」
そう言われてユリウスはチラリとベッドサイドのテーブルに目をやると、確かにクマのぬいぐるみがこちらを向いていた。
ユリウスはキスを止めることなく、器用に片手を伸ばしてクマの顔を壁側に向けた。
「これで大丈夫です」
ニッと意地悪そうに笑ったユリウスは、昨夜我慢した分までこれからルビーを愛することに決めた。
祭りは二日間あったが、領民たちがユリウスとルビーの姿をみたのは初日だけだった。なぜならその日の二人は屋敷から出てくることはなかったからだ。
結婚してからルビーの部屋には物が増えた。期間限定の恋人だった頃は、亡くなった後のことを考えてかルビーは物を増やすことを嫌がっていた。
しかし、今ではユリウスに贈られた服や物に囲まれて過ごしている。そしてルビーはそのどれもを大切している。もちろん、今回のクマのぬいぐるみもルビーの部屋の机に大事に置かれている。
そのことがユリウスはとても嬉しかった。新しい物を増やすのは『ここを離れない』というルビーの心境の変化だとわかっていたからだ。
「ルビー、何かしてみたいことはありますか?」
「してみたいことですか? たくさんあります!」
「ではこれから一つずつ叶えていきましょう」
「はい!」
ルビーは世間一般のことを知らないことが多い。しかし、やりたいことはこれから全てユリウスと一緒に経験できるのだと思うと嬉しかった。
今回の祭りはルビーにとって一生忘れられない幸せな思い出になった。
「来年もお祭りに行きたいです」
「ええ。来年も再来年も……ずっと一緒に行きましょう」
「はい、約束です!」
ルビーは嬉しそうに微笑み、ユリウスの胸の中に飛び込んだ。
END
--------
これで番外編は終了になります。
二人の幸せな生活は続いていますが、ルビーとユリウスのお話はこれで一旦最後にします。
今作はたくさんの方に読んでいただけてとても幸せでした。
番外編までお読みいただきありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけていれば嬉しいです。
大森 樹
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