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27君だけの騎士【ライナス(カール)視点】
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俺はどうやってホテルへ戻ったのか覚えていない。眠りにつけるはずもなく、俺はなんとも言えない感情を持て余していた。
寝転び目を閉じると、ミーナと王子のキスシーンが鮮明に思い出される。
「くそっ……」
俺は勢いよく起き上がり、強めの酒を飲んだ。飲んで忘れようと思うが……残念ながら酔わない体質の俺は全く効果がなかった。
いや、むしろ悪化していた。今まさに二人が同じ家に泊まっていることを考えるととんでもない妄想をしてしまう。生まれ変わり、前世の婚約者と久々の再会……まるでお伽話のようなシチュエーションだ。気分が盛り上がらないわけがない。
ミーナの部屋にジークフリートが入り、彼は優しく彼女をベッドに押し倒す。
『だ、だめです』
『どうして?私達は夫婦になるはずだった。何も恥ずかしがることはないよ。愛し合う二人はみんなしていることさ』
『でも……でも、恥ずかしいです』
『恥ずかしがるところも可愛いね。愛してる。大丈夫、私に全て任せて』
『だめです』
『いけない子だね。ご両親に気付かれてしまうよ?いいの?』
『んっ、ごめ……なさい』
『声が出ないように、可愛い口は塞いであげようね』
そのまま激しい口付けをして、照れて恥ずかしがっている彼女の夜着を脱がせていき……
「うわぁ!」
はぁ、はぁ……と悪夢を振り払うように自分の髪を掻きむしった。
ミーナはやはり王子のことが好きなのだろうか?だって元々は婚約者だった人だ。しかも王子は彼女を溺愛していた。ミーナはキャロラインとは見た目がかなり変わっているため、彼は興味を示さないのではないかという僅かな期待は見事に打ち砕かれた。
――わかっていた。
俺はあの当時のジョセフ王子が嫌いだった。なぜなら、あの男はキャロライン王女のことを本気で好きだと気が付いていたからだ。美しい彼女に他にも沢山の男が求婚していたが、その男達はキャロラインの『見た目』だけが好きだったのだ。
しかし、ジョセフ王子は違った。間違いなく彼女の中身に惚れていた。彼女を見つめる瞳は蕩けるほど甘く、優しかった。それが気に食わなかった。俺だけが……キャロライン王女の本当の心の美しさを知っていると思っていたのに。
キャロラインはジョセフ王子も自分の見た目が気に入ったのだろう、と思っていたようだった。そしてその勘違いを……俺は決して正さなかった。
『私の婚約者の方は、舞踏会で私に一目惚れしたらしいわ。まるで物語みたいね』
『そうですか。まあ、あなた様の見た目ならあり得る話でしょう。他の男性達からも同じように言われたのでは?』
『そうよねぇ。確かに言われたわ。私の中身が好きって言ってくれる人はいないのかしら』
俺はあえてジョセフ王子もその他大勢の、見た目重視の男だと思い込ませた。王女に告白もできない立場の俺のせめてもの嫌がらせだった。
『でもお父様が選んだ人だもの。きっと幸せになるわ』
『……そうですね。どうか幸せになってください』
俺に微笑んだキャロライン王女に、俺は胸をかき乱された。
やはりダメだ。諦めるなどできない。あの時はどうしようもない身分だったが、彼女は平民に生まれ変わってくれたのだ。せっかく手が届くのに……こんな奇跡が起きたのに……指を咥えて見ているだけなどあり得ない。
キャロライン王女を愛していた。でも今のミーナをより愛している。お人好しで、素直で元気で料理上手。夢に向かって真っ直ぐ頑張っている。他の誰でもない、自分が彼女を幸せにしたいのだ。
俺は覚悟を決めた。そのまま夜を明かし、昼すぎになって隣街に出掛けた。これから必要な物を購入するためだ。
今夜、これを持って彼女に逢いに行こう。拒否されても、話してもらえるまで動かない。そう決めていた……そう決めていたのに、なぜこんなことになるのだろう。
買い物に時間がかかった。ようやくホテルに戻ると、差出人不明の手紙が届いていた。
お前の大事な女を預かった
一人で来なければ女を殺す
俺はこれを見て、手が震えた。俺の大事な女なんて……ミーナしかいない。彼女に手を出したヤツがいるということか!?
――お願いだ。無事でいてくれ!
急いでミーナの家に行き、ケイトさんに詰め寄った。あまりの俺の勢いに、彼女はびっくりしていた。
「ミーナは!?ミーナはどこにいますか」
「カ、カール。あなたどうしてここに」
「俺に変な手紙が届いたんです!彼女が無事か知りたい」
「ミーナはあなたと待ち合わせではなかったの?晩ご飯を食べに行くってお洒落して出て行ったけれど?」
「お洒落して?一体……誰と」
お洒落……どういうことだ?もしかして、王子と出掛けたのか?それなら彼女は無事……いや、もしかして王子がミーナを連れ去った?いや、あの男はこんな卑怯なことをする人ではない。わからない……俺がぐるぐると色々考えていると、ケイトさんに話しかけられる。
「あの子、カールから貰ったヘアゴムしてたの。だから、あなたと約束だと思ったのよ」
その一言で、俺は嫌な予感がした。もしかして、俺の名を語って呼び出されたのではないか?
「ちょっとミーナの部屋に入らせて下さい!」
俺は急いで部屋の中に手がかりがないか探す。勝手に悪いとは思ったが、机の引き出しも開けた。
すると一枚の手紙が入っていた。中身を見ると、書いた覚えがないのに差出人が俺になっている手紙だった。
「なんだ!?この手紙……」
やはり俺に呼ばれたと思ってミーナは出掛けたのか!?俺のせいで危ない目に遭っている。彼女に何かあったら……どうしたらいいのか。怒りで手紙を握りつぶした。指定された店の地図は残っていないため、きっと彼女が持って行ったのだろう。
――俺が絶対に助ける。彼女を傷付けるやつは許さない。すぐに行くから待っていてくれ。
俺は彼女を必ず連れて帰ると、ミーナの両親に伝え家を飛び出た。場所は隣町だ。詳しい場所はわからないが、店名を頼りに探そう。
お願いだ……無事でいてくれ。
俺は馬車を待つ時間がある無駄だと、全速力で走り隣町へ着いた。通行人に手紙に書いてあった店を訪ねたところ「この店は裏通りだ。しかし、もう数年前にこの店は潰れたよ」と教えてもらった。
潰れた店……人を呼び出すのにぴったりだ。俺は礼を言って店に急いだ。
ミーナ!ミーナ!!なんで俺は君から離れてしまったんだ。怒られても、嫌われても……君の傍にいれば良かった。
店の前に着き、そっと中を伺う。全体的に薄暗くやけに静かだ。足音を立てずに中に入るが……誰もいない。ここじゃないのか?それとも、もう他の場所へ移動したのだろうか。
何か手がかりがないかと、キョロキョロと周囲を見渡すと足にコツンと何かが当たった。
「……っ!」
これは俺がプレゼントしたヘアゴムだ。やはりここにミーナが居たんだ……彼女は俺に足跡を残そうとしてくれたのだ。間違いなく、助けてという合図。
奥の隠し扉を開けると、地下の階段があった。そこから話し声が聞こえる。まさか……ここにいるのか?
俺はゆっくりと下に降りて様子を伺った。その時、ミーナの大きな声が聞こえてきた。
「助けて、カール!怖い!!助けて!!」
ミーナ!ミーナの声だ。その瞬間に俺は地下へ踏み込んだ。扉の前に立っていた男が俺の存在に気がつく前に、蹴り上げて剣を振り抜く。
「ぐっ」
一瞬の呻き声を上げただけで、ドサっと倒れた。何人いるかわからないが、ミーナを誘拐したことを後悔させてやる。
そしてその勢いのまま、扉を思いっきり蹴飛ばした。するとそこにはワンピースが肌けており胸元が大きく見えた状態で、手足を拘束され涙目で震えているミーナの姿があった。
怒りでカッと頭に血がのぼる。こんなことをした奴を生かしてはおけない。
犯人の男は、ミーナにナイフを首に突き立てて後ろから抱きかかえた。つくづく卑怯な男だ。
「今すぐその汚い手を離せ。切り落とすぞ」
俺は地を這うような低く恐ろしい声で、ギロリと睨みつけた。ビリビリと空気が張り詰める。
「ふっ……お前がこの女にご執心なことは本当らしいな。もう少し遅く来てくれたら、俺が女にしてやったのに」
「……よほど殺されたいようだな」
「へえ?そんなこと言っていいのか?大好きな女が傷付いても」
犯人は挑発する様にミーナのワンピースをさらに大きくナイフで切った。パラリと布がめくれて、下着まで見える。
下衆め……ふざけるな、絶対に許せない!ミーナを見ていいのは俺だけだ。彼女の叫び声で俺は踏み込もうとしたが「動くとミーナを刺す」と犯人が大声をあげた。確かにこの距離なら、不意をつかない限り犯人が彼女に手をかけるほうが早くなってしまうだろう。
「カール、取り乱してごめんなさい。私は大丈夫だから」
「ミーナ……!」
俺はギリッと唇を噛み締めた。こんな恐ろしい状況なのに、気丈に振る舞う彼女は強い人だ。
犯人が俺を挑発するようにミーナの頬にキスをした。彼女は、とても嫌そうに顔を背けてギュッと目を閉じている。
――触れるんじゃねえ。ミーナはお前なんかが触れていい女じゃねぇんだよ。
「ああ、その顔いいなぁ。嫌そうな女を無理矢理自分の物にするのが快感ってもんだ」
その気持ち悪い発言に、俺は近くにあった椅子を蹴り上げた。
「おい……テメェの性癖なんて興味ねぇんだよ!お前の望みはなんだ。言う通りしてやるから、彼女に指一本触れるんじゃねぇ!!」
ニヤリと笑った男は、彼女を後ろに突き飛ばした。怒りで我を忘れそうになる自分を、なんとか制する。
「剣を置け。少しでも抵抗したら女を殺す」
俺は剣を置いて犯人の後ろにカランと蹴り飛ばした。同時に隠し持っていた小刀も一緒に蹴った。ミーナ……お願いだ、気が付いてくれ。君なら気付けるはずだ。その小刀で手の拘束を解いてくれ。
犯人はダラム帝国の残党だった。アレクシアにミーナの誘拐を依頼され、その後俺の暗殺と引き換えに大金をやるというのに目が眩んだらしい。
これはやはりレッドフォード公爵が絡んでいる。俺が秘密を知っているとわかり、娘には秘密でこれに便乗して俺の暗殺を企てたのだろう。あの女がここまで大それたことをするはずがないから。
何度も俺は殴られるが、こんなパンチはミーナを助けるためなら全く問題はない。ペッと血を吐き捨て、ジロリと睨んだ。
「効かねぇな。そんなパンチじゃ」
ポタポタと床に血が垂れていく俺の姿に、優しいミーナが耐えられなくなった。そうだよな、こんな場面見たくないよな。
「もうやめて!私のことは好きにしなさいよ!!カールを……もう殴らないで!」
彼女の泣き叫ぶ声が聞こえる。男はいやらしく笑った後にミーナを好きにしていいなら、俺への攻撃をやめてやると言ってきた。馬鹿なことを言うんじゃねぇ。
「ふざ……けんな。彼女に触れたら殺す」
俺は殺気を込めてギロリと男を睨みつけた。
「ミーナ……黙ってろ。大丈夫……だ」
俺は彼女を見つめた後にわざと目線を下げて床を眺め、再度ミーナにアイコンタクトを送った。聡明な彼女はその視線の先の小刀に気が付つき、小さく頷いた。
もう大丈夫だ。俺はミーナを安心させるように、少しだけ微笑んだ。
「あの貴族の女にしとけば、金もあるし美人だし……こんな目にも遭わなかったのにテメェも馬鹿だな」
殴りながら、そんな意味のわからぬことを言ってきた。こいうは本当に馬鹿なようだ。
「お前みたいな愛を知らない男には……一生わからないだろうな」
ミーナがどれだけいい女か。地位も金も見た目も関係ない。彼女の近くにいると心が温まるし、その優しさに包まれると幸せだ。愛おしいという気持ちを知らない男に同情をしてしまう。
「うるせえんだよ。いい加減黙れ」
男が振りかぶった瞬間に、ミーナの拘束がとれた。
「カール!」
名前を呼ばれ、ミーナが投げた剣を受け取った。俺はこいつの腹を一瞬で切りつけ体を薙ぎ倒した。
「ゔっ……」
「貰った分は倍にしてきちんと返さねぇとな」
「ひっ……!」
俺の怒りを込めた重い一撃で犯人は意識を失った。本当のパンチはこういうものなんだよ。弱すぎる。なんなんだ、この男は。
俺はミーナにかけより、足の拘束を外して破れたワンピースを隠すように自分のシャツを脱いで被せた。そして彼女をギュッと抱きしめる。
「ごめん。怖い思いさせて……本当にごめん」
「私は大丈夫。あなたが助けに来てくれたから。カールこそ……沢山痛い思いさせてごめんなさい。あなたの意図に気付くのが遅かったの」
ミーナは泣いてしまった。俺は私の頬をゆっくり撫でた。ああ、愛おしい。無事でよかった。
「これくらい平気だ。ミーナなら……言葉で伝えなくてもわかってくれると信じていた」
カールはフッと笑って、私をさらに強く抱きしめた。
「それに、あなたは呼び出された店にこれを残してくれた。それで君に何かあったとわかった」
俺はポケットから、あのヘアゴムを取り出した。
「これ、気が付いてくれたのね」
「ええ。昔、私達の中で決めた約束でしたから。あなたが覚えていてくれてよかった」
それは十五年前、キャロラインとライナスの約束だった。何かあった時は、大事な物を落として足跡を残すこと。そうすれば、俺が必ず助けると誓った。
「昔も今も……私を見つけて助けてくれるのはあなただけだわ」
「当たり前です。私は生涯あなただけの騎士ですから」
そうだ。初めて出逢ったその日から、俺は君だけの騎士になりたかった。生涯君を護りぬきたい。
「私だけの……?」
「ええ」
「アレクシア様とのことは?彼女は……あなたの婚約者だと言っていたわ。お互い愛し合っているって」
――は?
アレクシアと……俺が愛し合ってる!?婚約者!?なんだその誤解は?冗談じゃない。
「誤解です。絶対にあり得ません!あの女が私の婚約者だなんて!!この誘拐もあの女の差金ですから。恨むことはあれど、好意を持つことなどありえません」
俺はこの世の終わりのような顔をして、大声で否定を続けた。
寝転び目を閉じると、ミーナと王子のキスシーンが鮮明に思い出される。
「くそっ……」
俺は勢いよく起き上がり、強めの酒を飲んだ。飲んで忘れようと思うが……残念ながら酔わない体質の俺は全く効果がなかった。
いや、むしろ悪化していた。今まさに二人が同じ家に泊まっていることを考えるととんでもない妄想をしてしまう。生まれ変わり、前世の婚約者と久々の再会……まるでお伽話のようなシチュエーションだ。気分が盛り上がらないわけがない。
ミーナの部屋にジークフリートが入り、彼は優しく彼女をベッドに押し倒す。
『だ、だめです』
『どうして?私達は夫婦になるはずだった。何も恥ずかしがることはないよ。愛し合う二人はみんなしていることさ』
『でも……でも、恥ずかしいです』
『恥ずかしがるところも可愛いね。愛してる。大丈夫、私に全て任せて』
『だめです』
『いけない子だね。ご両親に気付かれてしまうよ?いいの?』
『んっ、ごめ……なさい』
『声が出ないように、可愛い口は塞いであげようね』
そのまま激しい口付けをして、照れて恥ずかしがっている彼女の夜着を脱がせていき……
「うわぁ!」
はぁ、はぁ……と悪夢を振り払うように自分の髪を掻きむしった。
ミーナはやはり王子のことが好きなのだろうか?だって元々は婚約者だった人だ。しかも王子は彼女を溺愛していた。ミーナはキャロラインとは見た目がかなり変わっているため、彼は興味を示さないのではないかという僅かな期待は見事に打ち砕かれた。
――わかっていた。
俺はあの当時のジョセフ王子が嫌いだった。なぜなら、あの男はキャロライン王女のことを本気で好きだと気が付いていたからだ。美しい彼女に他にも沢山の男が求婚していたが、その男達はキャロラインの『見た目』だけが好きだったのだ。
しかし、ジョセフ王子は違った。間違いなく彼女の中身に惚れていた。彼女を見つめる瞳は蕩けるほど甘く、優しかった。それが気に食わなかった。俺だけが……キャロライン王女の本当の心の美しさを知っていると思っていたのに。
キャロラインはジョセフ王子も自分の見た目が気に入ったのだろう、と思っていたようだった。そしてその勘違いを……俺は決して正さなかった。
『私の婚約者の方は、舞踏会で私に一目惚れしたらしいわ。まるで物語みたいね』
『そうですか。まあ、あなた様の見た目ならあり得る話でしょう。他の男性達からも同じように言われたのでは?』
『そうよねぇ。確かに言われたわ。私の中身が好きって言ってくれる人はいないのかしら』
俺はあえてジョセフ王子もその他大勢の、見た目重視の男だと思い込ませた。王女に告白もできない立場の俺のせめてもの嫌がらせだった。
『でもお父様が選んだ人だもの。きっと幸せになるわ』
『……そうですね。どうか幸せになってください』
俺に微笑んだキャロライン王女に、俺は胸をかき乱された。
やはりダメだ。諦めるなどできない。あの時はどうしようもない身分だったが、彼女は平民に生まれ変わってくれたのだ。せっかく手が届くのに……こんな奇跡が起きたのに……指を咥えて見ているだけなどあり得ない。
キャロライン王女を愛していた。でも今のミーナをより愛している。お人好しで、素直で元気で料理上手。夢に向かって真っ直ぐ頑張っている。他の誰でもない、自分が彼女を幸せにしたいのだ。
俺は覚悟を決めた。そのまま夜を明かし、昼すぎになって隣街に出掛けた。これから必要な物を購入するためだ。
今夜、これを持って彼女に逢いに行こう。拒否されても、話してもらえるまで動かない。そう決めていた……そう決めていたのに、なぜこんなことになるのだろう。
買い物に時間がかかった。ようやくホテルに戻ると、差出人不明の手紙が届いていた。
お前の大事な女を預かった
一人で来なければ女を殺す
俺はこれを見て、手が震えた。俺の大事な女なんて……ミーナしかいない。彼女に手を出したヤツがいるということか!?
――お願いだ。無事でいてくれ!
急いでミーナの家に行き、ケイトさんに詰め寄った。あまりの俺の勢いに、彼女はびっくりしていた。
「ミーナは!?ミーナはどこにいますか」
「カ、カール。あなたどうしてここに」
「俺に変な手紙が届いたんです!彼女が無事か知りたい」
「ミーナはあなたと待ち合わせではなかったの?晩ご飯を食べに行くってお洒落して出て行ったけれど?」
「お洒落して?一体……誰と」
お洒落……どういうことだ?もしかして、王子と出掛けたのか?それなら彼女は無事……いや、もしかして王子がミーナを連れ去った?いや、あの男はこんな卑怯なことをする人ではない。わからない……俺がぐるぐると色々考えていると、ケイトさんに話しかけられる。
「あの子、カールから貰ったヘアゴムしてたの。だから、あなたと約束だと思ったのよ」
その一言で、俺は嫌な予感がした。もしかして、俺の名を語って呼び出されたのではないか?
「ちょっとミーナの部屋に入らせて下さい!」
俺は急いで部屋の中に手がかりがないか探す。勝手に悪いとは思ったが、机の引き出しも開けた。
すると一枚の手紙が入っていた。中身を見ると、書いた覚えがないのに差出人が俺になっている手紙だった。
「なんだ!?この手紙……」
やはり俺に呼ばれたと思ってミーナは出掛けたのか!?俺のせいで危ない目に遭っている。彼女に何かあったら……どうしたらいいのか。怒りで手紙を握りつぶした。指定された店の地図は残っていないため、きっと彼女が持って行ったのだろう。
――俺が絶対に助ける。彼女を傷付けるやつは許さない。すぐに行くから待っていてくれ。
俺は彼女を必ず連れて帰ると、ミーナの両親に伝え家を飛び出た。場所は隣町だ。詳しい場所はわからないが、店名を頼りに探そう。
お願いだ……無事でいてくれ。
俺は馬車を待つ時間がある無駄だと、全速力で走り隣町へ着いた。通行人に手紙に書いてあった店を訪ねたところ「この店は裏通りだ。しかし、もう数年前にこの店は潰れたよ」と教えてもらった。
潰れた店……人を呼び出すのにぴったりだ。俺は礼を言って店に急いだ。
ミーナ!ミーナ!!なんで俺は君から離れてしまったんだ。怒られても、嫌われても……君の傍にいれば良かった。
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何か手がかりがないかと、キョロキョロと周囲を見渡すと足にコツンと何かが当たった。
「……っ!」
これは俺がプレゼントしたヘアゴムだ。やはりここにミーナが居たんだ……彼女は俺に足跡を残そうとしてくれたのだ。間違いなく、助けてという合図。
奥の隠し扉を開けると、地下の階段があった。そこから話し声が聞こえる。まさか……ここにいるのか?
俺はゆっくりと下に降りて様子を伺った。その時、ミーナの大きな声が聞こえてきた。
「助けて、カール!怖い!!助けて!!」
ミーナ!ミーナの声だ。その瞬間に俺は地下へ踏み込んだ。扉の前に立っていた男が俺の存在に気がつく前に、蹴り上げて剣を振り抜く。
「ぐっ」
一瞬の呻き声を上げただけで、ドサっと倒れた。何人いるかわからないが、ミーナを誘拐したことを後悔させてやる。
そしてその勢いのまま、扉を思いっきり蹴飛ばした。するとそこにはワンピースが肌けており胸元が大きく見えた状態で、手足を拘束され涙目で震えているミーナの姿があった。
怒りでカッと頭に血がのぼる。こんなことをした奴を生かしてはおけない。
犯人の男は、ミーナにナイフを首に突き立てて後ろから抱きかかえた。つくづく卑怯な男だ。
「今すぐその汚い手を離せ。切り落とすぞ」
俺は地を這うような低く恐ろしい声で、ギロリと睨みつけた。ビリビリと空気が張り詰める。
「ふっ……お前がこの女にご執心なことは本当らしいな。もう少し遅く来てくれたら、俺が女にしてやったのに」
「……よほど殺されたいようだな」
「へえ?そんなこと言っていいのか?大好きな女が傷付いても」
犯人は挑発する様にミーナのワンピースをさらに大きくナイフで切った。パラリと布がめくれて、下着まで見える。
下衆め……ふざけるな、絶対に許せない!ミーナを見ていいのは俺だけだ。彼女の叫び声で俺は踏み込もうとしたが「動くとミーナを刺す」と犯人が大声をあげた。確かにこの距離なら、不意をつかない限り犯人が彼女に手をかけるほうが早くなってしまうだろう。
「カール、取り乱してごめんなさい。私は大丈夫だから」
「ミーナ……!」
俺はギリッと唇を噛み締めた。こんな恐ろしい状況なのに、気丈に振る舞う彼女は強い人だ。
犯人が俺を挑発するようにミーナの頬にキスをした。彼女は、とても嫌そうに顔を背けてギュッと目を閉じている。
――触れるんじゃねえ。ミーナはお前なんかが触れていい女じゃねぇんだよ。
「ああ、その顔いいなぁ。嫌そうな女を無理矢理自分の物にするのが快感ってもんだ」
その気持ち悪い発言に、俺は近くにあった椅子を蹴り上げた。
「おい……テメェの性癖なんて興味ねぇんだよ!お前の望みはなんだ。言う通りしてやるから、彼女に指一本触れるんじゃねぇ!!」
ニヤリと笑った男は、彼女を後ろに突き飛ばした。怒りで我を忘れそうになる自分を、なんとか制する。
「剣を置け。少しでも抵抗したら女を殺す」
俺は剣を置いて犯人の後ろにカランと蹴り飛ばした。同時に隠し持っていた小刀も一緒に蹴った。ミーナ……お願いだ、気が付いてくれ。君なら気付けるはずだ。その小刀で手の拘束を解いてくれ。
犯人はダラム帝国の残党だった。アレクシアにミーナの誘拐を依頼され、その後俺の暗殺と引き換えに大金をやるというのに目が眩んだらしい。
これはやはりレッドフォード公爵が絡んでいる。俺が秘密を知っているとわかり、娘には秘密でこれに便乗して俺の暗殺を企てたのだろう。あの女がここまで大それたことをするはずがないから。
何度も俺は殴られるが、こんなパンチはミーナを助けるためなら全く問題はない。ペッと血を吐き捨て、ジロリと睨んだ。
「効かねぇな。そんなパンチじゃ」
ポタポタと床に血が垂れていく俺の姿に、優しいミーナが耐えられなくなった。そうだよな、こんな場面見たくないよな。
「もうやめて!私のことは好きにしなさいよ!!カールを……もう殴らないで!」
彼女の泣き叫ぶ声が聞こえる。男はいやらしく笑った後にミーナを好きにしていいなら、俺への攻撃をやめてやると言ってきた。馬鹿なことを言うんじゃねぇ。
「ふざ……けんな。彼女に触れたら殺す」
俺は殺気を込めてギロリと男を睨みつけた。
「ミーナ……黙ってろ。大丈夫……だ」
俺は彼女を見つめた後にわざと目線を下げて床を眺め、再度ミーナにアイコンタクトを送った。聡明な彼女はその視線の先の小刀に気が付つき、小さく頷いた。
もう大丈夫だ。俺はミーナを安心させるように、少しだけ微笑んだ。
「あの貴族の女にしとけば、金もあるし美人だし……こんな目にも遭わなかったのにテメェも馬鹿だな」
殴りながら、そんな意味のわからぬことを言ってきた。こいうは本当に馬鹿なようだ。
「お前みたいな愛を知らない男には……一生わからないだろうな」
ミーナがどれだけいい女か。地位も金も見た目も関係ない。彼女の近くにいると心が温まるし、その優しさに包まれると幸せだ。愛おしいという気持ちを知らない男に同情をしてしまう。
「うるせえんだよ。いい加減黙れ」
男が振りかぶった瞬間に、ミーナの拘束がとれた。
「カール!」
名前を呼ばれ、ミーナが投げた剣を受け取った。俺はこいつの腹を一瞬で切りつけ体を薙ぎ倒した。
「ゔっ……」
「貰った分は倍にしてきちんと返さねぇとな」
「ひっ……!」
俺の怒りを込めた重い一撃で犯人は意識を失った。本当のパンチはこういうものなんだよ。弱すぎる。なんなんだ、この男は。
俺はミーナにかけより、足の拘束を外して破れたワンピースを隠すように自分のシャツを脱いで被せた。そして彼女をギュッと抱きしめる。
「ごめん。怖い思いさせて……本当にごめん」
「私は大丈夫。あなたが助けに来てくれたから。カールこそ……沢山痛い思いさせてごめんなさい。あなたの意図に気付くのが遅かったの」
ミーナは泣いてしまった。俺は私の頬をゆっくり撫でた。ああ、愛おしい。無事でよかった。
「これくらい平気だ。ミーナなら……言葉で伝えなくてもわかってくれると信じていた」
カールはフッと笑って、私をさらに強く抱きしめた。
「それに、あなたは呼び出された店にこれを残してくれた。それで君に何かあったとわかった」
俺はポケットから、あのヘアゴムを取り出した。
「これ、気が付いてくれたのね」
「ええ。昔、私達の中で決めた約束でしたから。あなたが覚えていてくれてよかった」
それは十五年前、キャロラインとライナスの約束だった。何かあった時は、大事な物を落として足跡を残すこと。そうすれば、俺が必ず助けると誓った。
「昔も今も……私を見つけて助けてくれるのはあなただけだわ」
「当たり前です。私は生涯あなただけの騎士ですから」
そうだ。初めて出逢ったその日から、俺は君だけの騎士になりたかった。生涯君を護りぬきたい。
「私だけの……?」
「ええ」
「アレクシア様とのことは?彼女は……あなたの婚約者だと言っていたわ。お互い愛し合っているって」
――は?
アレクシアと……俺が愛し合ってる!?婚約者!?なんだその誤解は?冗談じゃない。
「誤解です。絶対にあり得ません!あの女が私の婚約者だなんて!!この誘拐もあの女の差金ですから。恨むことはあれど、好意を持つことなどありえません」
俺はこの世の終わりのような顔をして、大声で否定を続けた。
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