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17ライバル①【ライナス(カール視点)】
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17 ライバル① 【ライナス】
食堂の片付けを終えて、家に戻ると何故かミーナがいなかった。
「ケイトさん、ミーナが居ませんがどこかへ行ったんですか?」
「ああ、あの子はダニーと晩御飯食べてくるって。この前微妙な感じになったから、仲直りできればいいんだけど」
なんだって?もしかして、あいつは店の前まで迎えに来ていたのか。チッ、ミーナと一緒に店を出ればよかった。
俺が顰めっ面をしているのを見て、ケイトさんはふふっと笑った。
「カールはミーナが好きなの?」
「はい」
「そっか。前に言っていたキャロラインさんのことはもう……いいの?」
ミーナがキャロラインの生まれ変わりだとは言えない。
「キャロラインは私の大事な人であることには、変わりありません。でも今の私はミーナだけが好きです」
「そう」
「母親としては嫌ですか?俺とミーナじゃ歳の差がだいぶありますから」
ケイトさんはふるふると横に首を振った。
「全然。お互いが想い合える人ならいいわ」
「残念ながら、絶賛片想い中ですよ」
「ふふ、それはそれは。うちの娘はなかなか手強いみたい」
「頑張ります。応援してくれますか?」
俺はずるいとわかっていながら、そんな質問をしてみる。
「んー、ダニーも昔から知ってるから私の息子みたいなものなの。私は中立の立場よ」
どうやら、ケイトさんは面白がっているようだ。
「向こうの味方でなければ、自力でなんとかします」
「あら、すごい自信ね」
「愛してますから」
「……あなたって意外と情熱的なタイプなのね?」
「ミーナにだけですよ」
そう言った俺をケイトさんはニヤリと笑った。その後、バッカスさんと三人で晩御飯を食べた。美味しいはずなのに、ミーナがいないだけで食事が味気なく思える。
「カール、お前怪我は治ったのか?」
バッカスさんの質問に、心臓がドクリと跳ねる。今まで聞かれなかったので言わなかったが、怪我が治ったなら『出て行け』って思うよな。
ミーナの傍に居たいから、怪我が治ってもここに住みたいなんて俺の我儘だ。むしろ今まで言われなかったことが奇跡だ。バッカスさんやケイトさん達からしたら俺は見ず知らずの怪しい男なのだから。もう、嘘をつくわけにもいかない。
「はい。おかげさまで」
「そっか。よかったな」
俺は意を決して、お願いをした。
「もう少しここに居候させてもらえませんか?料理もちゃんと覚えたいんです。怪我が治ったので、生活費を入れさせてください」
「生活費はいらねぇよ。しかしカール、蓄えは平気なのか?料理教えてやるのは構わないが、悪いがうちにもう一人雇って給料出せる程の余裕はなくてな」
この人は、そんなことを気にしてくれていたのか。こちらが教えてもらってるのに、給料なんて必要ない。それに、使いきれない程金は有り余っている。
「騎士時代の蓄えがあるので、金には困っていません。俺が教えてもらってるのに、給料なんて必要ないです」
「なら今まで通りだ。住まいと食べ物はこっちに任せな」
「ありがとうございます」
「だが、これはミーナが許可する間だけだ。あいつがカールと一緒に住むの嫌だって言ったら、すぐに出てってもらうからな」
「……はい」
「親バカですまねぇな」
「いいえ。当然です」
俺はもう彼女のいない生活は耐えられない。十五年……復讐という目的があったとはいえ、よく生きてこられたなと思う。
彼女と恋愛関係じゃなくてもいいなんて咄嗟についた嘘だ。昔は伝えることができなかったこの想いの全てを、全て伝えたい。ずっと傍に居て、死ぬまで愛し抜きたい。
俺は一旦部屋に戻ったが、なかなか帰ってこないミーナが気になっていた。この辺で食べるならもう帰って来てもいいはずなのに。
――イライラする。
落ち着かなくて、リビングで水を飲む振りをしながら玄関が開くのを待った。彼女が目の届く範囲にいない、何処にいるのか場所がハッキリわからないというのは俺にとってストレスだった。これは護衛騎の時代の習性ともいえる。
今の彼女は十五歳の平民の少女。誰と何処に出掛けてもいい。誰と付き合ってもいい。全て自由だ。
昔の彼女のように庭に出るのも護衛が必要だったり、食べ物は毒見しないと食べれなかったり、政略結婚しないといけなかったり……そんな不自由さはない。
彼女はミーナを楽しんでいる。そして、今の人生が幸せだと感じている。それは嬉しいが、俺は少し取り残されたような複雑な気分だ。
危ない考えだとわかってはいるが、彼女が俺だけを見つめて俺だけを頼って俺だけを愛してくれるように檻の中に閉じ込めたいと思う時がある。俺なしでは生きていけないくらい甘やかすから、依存して欲しい。
でも、そんなことは間違っている。彼女が一番輝くのは沢山の人に囲まれている時だ。今も昔もみんなが彼女の温かい人柄に惹かれて好きになる。彼女は強くてしなやかだ。甘やかそうとしても、最後は結局自分で何とかしてしまう。俺に依存なんてしないだろう。
そんなところが好きだ。そしてもどかしい。
外から足音が聞こえ、やっと帰ってきたと心でホッとした。出迎えようと玄関に移動する。
ガチャッと扉が開いたその時、ダニーに横抱きにされた状態で目を閉じている彼女が見えた。
カッと頭に血がのぼる。彼の胸に顔を擦り寄せている彼女が、酔っているのは一目瞭然だった。キャロラインは酒が飲めなかった。だから、酔っている姿を見るのは初めてだ。
「女を眠らす程酔わすのは、男としてルール違反じゃないか」
怒りを込めてダニーを睨みつけた。大抵の男は俺のこの目を見れば怯むが、こいつは真っ直ぐ見つめ返してきた。
酔わせて女をどうこうしようという卑怯な男ではないのは、数回しか会っていなくてもわかる。こいつはミーナが大好きだ。彼女を『大事にしたい』という気持ちが溢れている。
ダニーは、少し男前な程度のごくごく普通の男だ。しかし真っ直ぐで仄暗いところがない。明るく、真面目で、おおらかだ。
だからこそ怖い。普通なのに彼女への想いは一直線で、純粋無垢な今の彼女にピッタリだからだ。初々しい二人が恋に落ちて、ゆっくりと関係を深めて幸せな結婚をする様子が簡単に想像できる。
自分で言うのは哀しいが、彼女は俺でなくてもそれなりに幸せになれるだろう。でも俺は彼女でないと幸せになれない。
だから、俺は彼女を譲る気はない。この三十二年間で彼女以上に好きな人に、出逢ったことがないのだから。
「盛り上がり過ぎて、酒がすすんだんだよ。ミーナは俺に心を許してるから安心してるのさ。一日二日の付き合いの誰かさんとは違うから」
本当は一日二日の付き合いじゃねぇけどな。
「ほお。安心ね……さすがはただの幼馴染くんだ」
俺も嫌味を返すが、ダニーはそれをするりとかわしてミーナの両親に話しかけていた。
あいつがずっとミーナを抱き上げているのに、腹が立つ。自分以外の男が彼女に触れてほしくない。だが、俺はまだそれを遮る関係ではないのが悔しい。
彼は当たり前のように、彼女の部屋に入って行った。しかもしばらく出てこない。一体寝ている彼女に何をしているのか……ドアを蹴破ってやろうかと思っていると、ダニーが出てきた。
扉の前で睨んでいた俺を無視して通り過ぎようとしたので、腕を取って足を止めさせた。
「君は鍛冶屋だったな」
「そうだけど」
「仕事を頼みたい。明日店に行ってもいいか」
「……どんな奴でも客なら対応するさ」
「交渉成立だな」
そう言うと、ふんっと顔を背けて帰って行った。俺も部屋に戻ったが、眠れなくて彼女の部屋を控えめにノックした。
一目……彼女の顔を見たかったから。
もちろん反応はない。起こさないようにそっと扉を開けた。アルコールのせいか頬が少し赤い。そっと撫でると、柔らかくてすべすべで気持ちがいい。
「心配した」
俺のいないところで、他の男と酒なんて飲まないで欲しい。そんな可愛い顔で寝ないで欲しい。
「愛してる」
髪をそっと撫でる。どうしてこんなに愛おしいのだろうか。どうしたらこの気持ちが君に全部伝わるんだろう。
「お願いだ。俺を選んでくれないか」
懇願するような声が出て、自分でも情けないなと思った。これ以上この部屋にいては気持ちが暴走してしまうと思い、すぐに外に出た。
♢♢♢
翌朝、二日酔い気味のミーナを甲斐甲斐しく世話をして甘やかせる。冷たいタオルを目に置くと「気持ちいい」なんて甘い声で際どい台詞を言うから、バッカスさんに変な誤解をされた。
くっくっく、これを自然にやっているから困ったものだ。できれば彼女の全身を隈なく愛している時に『気持ちいい』と言わせたいなと朝からよからぬ想像をしながら、顔には出さずに髪を撫でる。
頭が痛い上に、タオルで視界を塞がれている今の彼女はされるがままだ。膝枕も最初は嫌がっていたが、もう慣れたようで俺の足にすっぽりおさまっている。警戒して威嚇していた猫が擦り寄ってきてくれたようで、より愛おしい。
そして、彼女から昨日飲んだ酒を教えてもらう。彼女はカシスソーダであいつはモヒート。なるほど……なかなかロマンチストらしい。
カシスソーダは『あなたは魅力的』
モヒートは『心の渇きを癒やして』
――これは告白だ。魅力的なミーナに自分の心を満たして欲しいという意味。お酒に疎い彼女がカクテル言葉なんて知るはずがないけれど。もちろん教えてやる義理はない。
俺はバッカスさんに許可をもらい、約束通りダニーの店に行くことにした。彼とは、一度ゆっくり話したいと思っていた。
食堂の片付けを終えて、家に戻ると何故かミーナがいなかった。
「ケイトさん、ミーナが居ませんがどこかへ行ったんですか?」
「ああ、あの子はダニーと晩御飯食べてくるって。この前微妙な感じになったから、仲直りできればいいんだけど」
なんだって?もしかして、あいつは店の前まで迎えに来ていたのか。チッ、ミーナと一緒に店を出ればよかった。
俺が顰めっ面をしているのを見て、ケイトさんはふふっと笑った。
「カールはミーナが好きなの?」
「はい」
「そっか。前に言っていたキャロラインさんのことはもう……いいの?」
ミーナがキャロラインの生まれ変わりだとは言えない。
「キャロラインは私の大事な人であることには、変わりありません。でも今の私はミーナだけが好きです」
「そう」
「母親としては嫌ですか?俺とミーナじゃ歳の差がだいぶありますから」
ケイトさんはふるふると横に首を振った。
「全然。お互いが想い合える人ならいいわ」
「残念ながら、絶賛片想い中ですよ」
「ふふ、それはそれは。うちの娘はなかなか手強いみたい」
「頑張ります。応援してくれますか?」
俺はずるいとわかっていながら、そんな質問をしてみる。
「んー、ダニーも昔から知ってるから私の息子みたいなものなの。私は中立の立場よ」
どうやら、ケイトさんは面白がっているようだ。
「向こうの味方でなければ、自力でなんとかします」
「あら、すごい自信ね」
「愛してますから」
「……あなたって意外と情熱的なタイプなのね?」
「ミーナにだけですよ」
そう言った俺をケイトさんはニヤリと笑った。その後、バッカスさんと三人で晩御飯を食べた。美味しいはずなのに、ミーナがいないだけで食事が味気なく思える。
「カール、お前怪我は治ったのか?」
バッカスさんの質問に、心臓がドクリと跳ねる。今まで聞かれなかったので言わなかったが、怪我が治ったなら『出て行け』って思うよな。
ミーナの傍に居たいから、怪我が治ってもここに住みたいなんて俺の我儘だ。むしろ今まで言われなかったことが奇跡だ。バッカスさんやケイトさん達からしたら俺は見ず知らずの怪しい男なのだから。もう、嘘をつくわけにもいかない。
「はい。おかげさまで」
「そっか。よかったな」
俺は意を決して、お願いをした。
「もう少しここに居候させてもらえませんか?料理もちゃんと覚えたいんです。怪我が治ったので、生活費を入れさせてください」
「生活費はいらねぇよ。しかしカール、蓄えは平気なのか?料理教えてやるのは構わないが、悪いがうちにもう一人雇って給料出せる程の余裕はなくてな」
この人は、そんなことを気にしてくれていたのか。こちらが教えてもらってるのに、給料なんて必要ない。それに、使いきれない程金は有り余っている。
「騎士時代の蓄えがあるので、金には困っていません。俺が教えてもらってるのに、給料なんて必要ないです」
「なら今まで通りだ。住まいと食べ物はこっちに任せな」
「ありがとうございます」
「だが、これはミーナが許可する間だけだ。あいつがカールと一緒に住むの嫌だって言ったら、すぐに出てってもらうからな」
「……はい」
「親バカですまねぇな」
「いいえ。当然です」
俺はもう彼女のいない生活は耐えられない。十五年……復讐という目的があったとはいえ、よく生きてこられたなと思う。
彼女と恋愛関係じゃなくてもいいなんて咄嗟についた嘘だ。昔は伝えることができなかったこの想いの全てを、全て伝えたい。ずっと傍に居て、死ぬまで愛し抜きたい。
俺は一旦部屋に戻ったが、なかなか帰ってこないミーナが気になっていた。この辺で食べるならもう帰って来てもいいはずなのに。
――イライラする。
落ち着かなくて、リビングで水を飲む振りをしながら玄関が開くのを待った。彼女が目の届く範囲にいない、何処にいるのか場所がハッキリわからないというのは俺にとってストレスだった。これは護衛騎の時代の習性ともいえる。
今の彼女は十五歳の平民の少女。誰と何処に出掛けてもいい。誰と付き合ってもいい。全て自由だ。
昔の彼女のように庭に出るのも護衛が必要だったり、食べ物は毒見しないと食べれなかったり、政略結婚しないといけなかったり……そんな不自由さはない。
彼女はミーナを楽しんでいる。そして、今の人生が幸せだと感じている。それは嬉しいが、俺は少し取り残されたような複雑な気分だ。
危ない考えだとわかってはいるが、彼女が俺だけを見つめて俺だけを頼って俺だけを愛してくれるように檻の中に閉じ込めたいと思う時がある。俺なしでは生きていけないくらい甘やかすから、依存して欲しい。
でも、そんなことは間違っている。彼女が一番輝くのは沢山の人に囲まれている時だ。今も昔もみんなが彼女の温かい人柄に惹かれて好きになる。彼女は強くてしなやかだ。甘やかそうとしても、最後は結局自分で何とかしてしまう。俺に依存なんてしないだろう。
そんなところが好きだ。そしてもどかしい。
外から足音が聞こえ、やっと帰ってきたと心でホッとした。出迎えようと玄関に移動する。
ガチャッと扉が開いたその時、ダニーに横抱きにされた状態で目を閉じている彼女が見えた。
カッと頭に血がのぼる。彼の胸に顔を擦り寄せている彼女が、酔っているのは一目瞭然だった。キャロラインは酒が飲めなかった。だから、酔っている姿を見るのは初めてだ。
「女を眠らす程酔わすのは、男としてルール違反じゃないか」
怒りを込めてダニーを睨みつけた。大抵の男は俺のこの目を見れば怯むが、こいつは真っ直ぐ見つめ返してきた。
酔わせて女をどうこうしようという卑怯な男ではないのは、数回しか会っていなくてもわかる。こいつはミーナが大好きだ。彼女を『大事にしたい』という気持ちが溢れている。
ダニーは、少し男前な程度のごくごく普通の男だ。しかし真っ直ぐで仄暗いところがない。明るく、真面目で、おおらかだ。
だからこそ怖い。普通なのに彼女への想いは一直線で、純粋無垢な今の彼女にピッタリだからだ。初々しい二人が恋に落ちて、ゆっくりと関係を深めて幸せな結婚をする様子が簡単に想像できる。
自分で言うのは哀しいが、彼女は俺でなくてもそれなりに幸せになれるだろう。でも俺は彼女でないと幸せになれない。
だから、俺は彼女を譲る気はない。この三十二年間で彼女以上に好きな人に、出逢ったことがないのだから。
「盛り上がり過ぎて、酒がすすんだんだよ。ミーナは俺に心を許してるから安心してるのさ。一日二日の付き合いの誰かさんとは違うから」
本当は一日二日の付き合いじゃねぇけどな。
「ほお。安心ね……さすがはただの幼馴染くんだ」
俺も嫌味を返すが、ダニーはそれをするりとかわしてミーナの両親に話しかけていた。
あいつがずっとミーナを抱き上げているのに、腹が立つ。自分以外の男が彼女に触れてほしくない。だが、俺はまだそれを遮る関係ではないのが悔しい。
彼は当たり前のように、彼女の部屋に入って行った。しかもしばらく出てこない。一体寝ている彼女に何をしているのか……ドアを蹴破ってやろうかと思っていると、ダニーが出てきた。
扉の前で睨んでいた俺を無視して通り過ぎようとしたので、腕を取って足を止めさせた。
「君は鍛冶屋だったな」
「そうだけど」
「仕事を頼みたい。明日店に行ってもいいか」
「……どんな奴でも客なら対応するさ」
「交渉成立だな」
そう言うと、ふんっと顔を背けて帰って行った。俺も部屋に戻ったが、眠れなくて彼女の部屋を控えめにノックした。
一目……彼女の顔を見たかったから。
もちろん反応はない。起こさないようにそっと扉を開けた。アルコールのせいか頬が少し赤い。そっと撫でると、柔らかくてすべすべで気持ちがいい。
「心配した」
俺のいないところで、他の男と酒なんて飲まないで欲しい。そんな可愛い顔で寝ないで欲しい。
「愛してる」
髪をそっと撫でる。どうしてこんなに愛おしいのだろうか。どうしたらこの気持ちが君に全部伝わるんだろう。
「お願いだ。俺を選んでくれないか」
懇願するような声が出て、自分でも情けないなと思った。これ以上この部屋にいては気持ちが暴走してしまうと思い、すぐに外に出た。
♢♢♢
翌朝、二日酔い気味のミーナを甲斐甲斐しく世話をして甘やかせる。冷たいタオルを目に置くと「気持ちいい」なんて甘い声で際どい台詞を言うから、バッカスさんに変な誤解をされた。
くっくっく、これを自然にやっているから困ったものだ。できれば彼女の全身を隈なく愛している時に『気持ちいい』と言わせたいなと朝からよからぬ想像をしながら、顔には出さずに髪を撫でる。
頭が痛い上に、タオルで視界を塞がれている今の彼女はされるがままだ。膝枕も最初は嫌がっていたが、もう慣れたようで俺の足にすっぽりおさまっている。警戒して威嚇していた猫が擦り寄ってきてくれたようで、より愛おしい。
そして、彼女から昨日飲んだ酒を教えてもらう。彼女はカシスソーダであいつはモヒート。なるほど……なかなかロマンチストらしい。
カシスソーダは『あなたは魅力的』
モヒートは『心の渇きを癒やして』
――これは告白だ。魅力的なミーナに自分の心を満たして欲しいという意味。お酒に疎い彼女がカクテル言葉なんて知るはずがないけれど。もちろん教えてやる義理はない。
俺はバッカスさんに許可をもらい、約束通りダニーの店に行くことにした。彼とは、一度ゆっくり話したいと思っていた。
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