29 / 32
28 結婚式
しおりを挟む
あとはお兄様に認めてもらうだけだ。今日のお兄様はまだ一言も言葉を発していない。
「……おい、レベッカのこと泣かせたら許さないからな」
お兄様はレオンさんを鋭い目でギロリと睨みつけた。泣かせたら許さない。つまり……それは泣かせなければ許すという意味なのだろうか。
「はい。もちろんです!」
「この前は……酷い態度をとって悪かったな。レベッカを救ってくれたこと感謝する」
お兄様のその言葉を聞いて、私はまた涙が溢れてきた。
「いえ、とんでもありません。認めていただきありがとうございます」
「お兄様、ありがとうございます。長い間ご心配をおかけして……すみませんでした」
「レベッカ、お前は昔からあの力のせいでしなくていい苦労を沢山してきた。だからこれから沢山幸せになりなさい」
「お兄様っ……!うっ……うっ……」
私はお兄様の胸に飛び込んでわんわんと子どものように泣いた。お兄様はあやすようにポンポンと背中を叩いてくれている。
「レベッカにも酷いことを言ってすまなかったな」
お兄様は小さな頃も、自分が家庭を持った後もずっと私の心配をしてくれていた。
「お兄様、私レオンさんと幸せになります」
「ああ、よかったな。こんな嬉しいことはない」
こうして私とレオンさんは正式な婚約者になり、その三ヶ月後には結婚式を挙げることに決まった。
貴族として本当は半年から一年の婚約期間を持つのが正しいが、レオンさんが一刻も早く一緒に暮らしたいと言い張ったのと……私の年齢のことも考えて短めの婚約期間になったのだ。
「時間は有限だから。一秒でも長くレベッカさんの傍にいたい」
レオンさんに潤んだ目でそうお願いされたら、否と言うことは難しかった。それに私も早く彼と一緒にいたかった。
「レベッカさん、愛しています。俺と人生を共にしてください」
彼は私の前にきちんと跪いて指輪を差し出し、改めてきちんと求婚をしてくれた。答えはわかっているはずなのに、レオンさんは緊張しているのか手が震えていた。
「はい、よろしくお願いします」
その時の彼のとても幸せで嬉しそうな顔は一生忘れられそうにない。
指に光り輝く指輪にドラゴン討伐の報奨金丸々使った……という恐ろしい話を知って私が悲鳴をあげるのは後になってからだ。
心配していた彼のご両親からの結婚の許可は、驚くほどあっさりとおりた。おりた……というよりはむしろ大歓迎された。
「レベッカさん、ずっと君を探していたんだ。会えて嬉しいよ」
「うっうっ……レベッカさん。レオンを助けてくれて本当にありがとう。感謝してもしきれないわ」
「レベッカ嬢、弟を助けてくれてありがとう。レオン、初恋が実って良かったな。お前は小さな頃から助けてくれた憧れの女性と結婚すると言っていたから」
彼のご両親やお兄様、それどころか使用人の皆さんからも大、大、大歓迎歓迎されそれはそれはすごいおもてなしを受けた。レオンさんは本当に十歳の頃からずっと私を探していて、彼が私を大好きなことは家中の人が知っている事実だったそうだ。
私はそれを聞いて流石に恥ずかしくてなって俯いてしまった。
「レオンを愛してくれてありがとう」
「私こそ……彼と出逢えて幸せです」
こうして私達にはなんの障害もなくなった。彼のご両親はどうしても昔のお礼が言いたいと、わざわざ離れた地にある我が家にもお二人で出向いてくださった。
それがきっかけで、いつの間にか私達抜きでやりとりをする程両親同士は仲良くなったらしい。
♢♢♢
――そして今日は結婚式。
「レベッカさん……すごく綺麗だ」
彼は頬を染めてうっとりと私を見つめている。ドレスは彼が私に一番似合うものを用意してくれた。
「ありがとう、レオンさんも素敵ですよ」
いつもより大人びて、キリッとしている彼は普段より何倍も男前だ。
「だめだ。もう泣きそう」
彼はウェディングドレスに身を包んだ私を見て、目頭を押さえている。
「ふふっ、晴れの席で泣くのはやめてくださいませ」
私はくすり、と笑った。奥様が泣いていることはあっても、旦那様が号泣している貴族の結婚式は見たことがない。
「だってこの日をずっと夢見てたから」
「夢じゃありませんよ。よろしくお願いしますね、旦那様」
「だ、旦那様っ!?」
彼は顔を真っ赤にして、照れている。私はぐいっと彼の腕に手を絡めて「さあ、行きましょう」と微笑んだ。
「は、はい」
私も緊張するけれど、ここは年上の奥様として大人の余裕を見せようではないか。
教会の扉が開くと、たくさんの人達から祝福を受ける。ギシギシとぎこちなく歩くレオンさんは、団長や同僚から笑われていたが……その揶揄いにも愛が込められているのがわかる。
「レオン・セルヴァンは妻レベッカを一生愛することを誓いますか?」
「はい」
「レベッカ・シャレットは夫レオンを一生愛することを誓いますか?」
「はい」
「では、誓いのキスを」
レオンさんが私の頬を優しく包み「愛してる」と呟いた後、そっと口付けた。
その瞬間にわぁっ、と大きな歓声と拍手が鳴り響いた。少し照れてしまうが、幸せだ。
レオンさんも緊張が解けたのか、いつも通りの明るい表情に戻った。
「おめでとう!幸せになれよ」
「レベッカさん、お綺麗です」
「レオンしっかりしろよ!」
私達は「ありがとうございます」と皆に手を振りながら、教会を後にした。その後は魔法省の皆を中心に、披露宴を行った。
「ついに……よかったなぁ。レオンずっとレベッカ嬢のこと好きだったもんな」
「先輩、ありがとうございます」
レオンさんは何故か号泣している先輩達に抱き締められて、お祝いの言葉を受けている。
「レオン、レベッカ様ご結婚おめでとうございます」
「お二人ともおめでとうございます」
今日はカトリーナ様もお祝いに来てくださっていた。そしてカトリーナ様の隣には……ライナー様が優しく寄り添うように立っている。小物はお互いの色を入れており明らかに恋人同士だ。なるほど、そういうことなのか。
「おー!同期二人で来てくれたのか。ありがとう」
その親密な様子を見ても、レオンさんは特に何も感じていないようで呑気にそんなことを言っている。
「ありがとうございます。お二人もどうかお幸せになってくださいませ」
私がそう伝えると、お互い見つめ合って照れたようにはにかんだ二人がとても可愛らしかった。
「うっ……うぅ。レベッカさん、おめでとうございます」
「アリシアさん、来てくれてありがとう」
「そりゃあ来ますよ。めちゃくちゃお綺麗です」
アリシアさんも泣きながら、私に抱き着いてきた。私はとても可愛い後輩を持ったものだ。
「おめでとうございます。二人とも皆に愛されていますね。まあ、魔法省で有名なカップルですから当然といえば当然ですが」
「事務長も……ありがとうございます」
私が頭を下げると、彼はふんわりと優しく微笑んでくれた。
「お幸せに」
それだけ言って事務長は「また」と軽く手を上げてその場を去っていった。すると入れ替わりでニタニタと意味深な笑顔の団長がこちらに来るのが見えた。うん……なんだか嫌な予感がする。
「レオンおめでとう。お前……祝いとはいえ、浮かれてそんなに酒飲んで大丈夫なのか?」
「団長、俺はもう大人ですから大丈夫です」
レオンさんは何でもない、という風にプイッと顔を背けながらグイッとグラスの酒を飲み干した。
「ほお。流石……男だねえ」
バシバシと彼の肩を叩きながら、ゲラゲラと笑っていた。
「本物の大人で大先輩の俺から、大事なこと教えてやるよ」
そう言ってレオンさんの耳の近くで、団長はボソボソと何かを囁いた。するとレオンさんは真っ赤になったと思ったら、すぐに真っ青になった。
――なに、あの百面相は。
絶対に碌でもないことを教えたに違いない。私がギロリと睨むと、団長はくすりと笑った。
「ど、どうすればいいんですか!?」
レオンさんは団長の肩をガクガクと揺らしながら必死にそんなことを言っている。
「さあ?まあ、若いから大丈夫なんじゃねぇの?自分を信じろ」
カカカ、と笑って「健闘を祈る」とレオンさんに向けて色っぽくウィンクをした後に「レベッカ嬢もおめでとう。こいつのことよろしく」と言ってヒラヒラと手を振って去っていった。
横ではグビグビと勢いよく水を飲むレオンさんがいて、私は首を傾げた。
「レオンさん、それ水ですよ?お酒取ってきますか?」
「い、い、い、いりません!あー……ちょっと酔ってしまったみたいで」
「大丈夫ですか?気持ち悪い時は言ってくださいね」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
それから披露宴が終わるまでレオンさんは一切お酒を飲まなくなかった。ちなみにザルの私は、グビグビとお酒を嗜んでいたがもちろん酔っていない。
若干の疑問を感じながらも、私達は来てくれた皆にお礼を言って新居に帰ることになった。
その時、晴天の青空にいきなり真っ赤な翼の鳥が現れた。あれは……不死鳥!
【お前達、やっと番になったんだな】
「わざわざ来てくれたの?あの時はありがとうございました。あなたのおかげで……私達は幸せです」
「俺にも火の魔法を返してくれてありがとうございました!」
【くっくっく、レオンの緩みきった面白い顔を見に来ただけだ】
「面白いって……!そりゃ緩みっぱなしにもなるでしょ。大好きな人との結婚式なんだから」
レオンさんはムッと唇を尖らせて拗ねている。フェニックスは、そんな彼を見てなんだか楽しそうだ。
【お前達人間の寿命は短い。限りある人生を後悔なく生きろ】
「はい。本当にありがとう」
【お前らの様子をたまに確認しに来よう。今日は祝いとしてあえて現れてやったのだ。人間達が作ったただの迷信だが、私を一目見たものは幸せになれるそうだからな】
バッサバッサと羽音を立てて飛び立つ姿は、私達の結婚式の参列者達も目撃していた。あえて皆に隠さずに姿を見せてくれたようだ。
「すごい、本物の不死鳥」
「初めて見た」
「幸せの象徴っていうよね。結婚式にこんなことがあるなんて……奇跡だわ」
わーわーと周囲が騒がしくなる。最後の大物すぎるゲストのおかげで、私達の結婚式はずっと語り継がれるくらい有名なものになった。
私達はお互いを見つめて、不死鳥が来てくれたことを感謝した。
「……おい、レベッカのこと泣かせたら許さないからな」
お兄様はレオンさんを鋭い目でギロリと睨みつけた。泣かせたら許さない。つまり……それは泣かせなければ許すという意味なのだろうか。
「はい。もちろんです!」
「この前は……酷い態度をとって悪かったな。レベッカを救ってくれたこと感謝する」
お兄様のその言葉を聞いて、私はまた涙が溢れてきた。
「いえ、とんでもありません。認めていただきありがとうございます」
「お兄様、ありがとうございます。長い間ご心配をおかけして……すみませんでした」
「レベッカ、お前は昔からあの力のせいでしなくていい苦労を沢山してきた。だからこれから沢山幸せになりなさい」
「お兄様っ……!うっ……うっ……」
私はお兄様の胸に飛び込んでわんわんと子どものように泣いた。お兄様はあやすようにポンポンと背中を叩いてくれている。
「レベッカにも酷いことを言ってすまなかったな」
お兄様は小さな頃も、自分が家庭を持った後もずっと私の心配をしてくれていた。
「お兄様、私レオンさんと幸せになります」
「ああ、よかったな。こんな嬉しいことはない」
こうして私とレオンさんは正式な婚約者になり、その三ヶ月後には結婚式を挙げることに決まった。
貴族として本当は半年から一年の婚約期間を持つのが正しいが、レオンさんが一刻も早く一緒に暮らしたいと言い張ったのと……私の年齢のことも考えて短めの婚約期間になったのだ。
「時間は有限だから。一秒でも長くレベッカさんの傍にいたい」
レオンさんに潤んだ目でそうお願いされたら、否と言うことは難しかった。それに私も早く彼と一緒にいたかった。
「レベッカさん、愛しています。俺と人生を共にしてください」
彼は私の前にきちんと跪いて指輪を差し出し、改めてきちんと求婚をしてくれた。答えはわかっているはずなのに、レオンさんは緊張しているのか手が震えていた。
「はい、よろしくお願いします」
その時の彼のとても幸せで嬉しそうな顔は一生忘れられそうにない。
指に光り輝く指輪にドラゴン討伐の報奨金丸々使った……という恐ろしい話を知って私が悲鳴をあげるのは後になってからだ。
心配していた彼のご両親からの結婚の許可は、驚くほどあっさりとおりた。おりた……というよりはむしろ大歓迎された。
「レベッカさん、ずっと君を探していたんだ。会えて嬉しいよ」
「うっうっ……レベッカさん。レオンを助けてくれて本当にありがとう。感謝してもしきれないわ」
「レベッカ嬢、弟を助けてくれてありがとう。レオン、初恋が実って良かったな。お前は小さな頃から助けてくれた憧れの女性と結婚すると言っていたから」
彼のご両親やお兄様、それどころか使用人の皆さんからも大、大、大歓迎歓迎されそれはそれはすごいおもてなしを受けた。レオンさんは本当に十歳の頃からずっと私を探していて、彼が私を大好きなことは家中の人が知っている事実だったそうだ。
私はそれを聞いて流石に恥ずかしくてなって俯いてしまった。
「レオンを愛してくれてありがとう」
「私こそ……彼と出逢えて幸せです」
こうして私達にはなんの障害もなくなった。彼のご両親はどうしても昔のお礼が言いたいと、わざわざ離れた地にある我が家にもお二人で出向いてくださった。
それがきっかけで、いつの間にか私達抜きでやりとりをする程両親同士は仲良くなったらしい。
♢♢♢
――そして今日は結婚式。
「レベッカさん……すごく綺麗だ」
彼は頬を染めてうっとりと私を見つめている。ドレスは彼が私に一番似合うものを用意してくれた。
「ありがとう、レオンさんも素敵ですよ」
いつもより大人びて、キリッとしている彼は普段より何倍も男前だ。
「だめだ。もう泣きそう」
彼はウェディングドレスに身を包んだ私を見て、目頭を押さえている。
「ふふっ、晴れの席で泣くのはやめてくださいませ」
私はくすり、と笑った。奥様が泣いていることはあっても、旦那様が号泣している貴族の結婚式は見たことがない。
「だってこの日をずっと夢見てたから」
「夢じゃありませんよ。よろしくお願いしますね、旦那様」
「だ、旦那様っ!?」
彼は顔を真っ赤にして、照れている。私はぐいっと彼の腕に手を絡めて「さあ、行きましょう」と微笑んだ。
「は、はい」
私も緊張するけれど、ここは年上の奥様として大人の余裕を見せようではないか。
教会の扉が開くと、たくさんの人達から祝福を受ける。ギシギシとぎこちなく歩くレオンさんは、団長や同僚から笑われていたが……その揶揄いにも愛が込められているのがわかる。
「レオン・セルヴァンは妻レベッカを一生愛することを誓いますか?」
「はい」
「レベッカ・シャレットは夫レオンを一生愛することを誓いますか?」
「はい」
「では、誓いのキスを」
レオンさんが私の頬を優しく包み「愛してる」と呟いた後、そっと口付けた。
その瞬間にわぁっ、と大きな歓声と拍手が鳴り響いた。少し照れてしまうが、幸せだ。
レオンさんも緊張が解けたのか、いつも通りの明るい表情に戻った。
「おめでとう!幸せになれよ」
「レベッカさん、お綺麗です」
「レオンしっかりしろよ!」
私達は「ありがとうございます」と皆に手を振りながら、教会を後にした。その後は魔法省の皆を中心に、披露宴を行った。
「ついに……よかったなぁ。レオンずっとレベッカ嬢のこと好きだったもんな」
「先輩、ありがとうございます」
レオンさんは何故か号泣している先輩達に抱き締められて、お祝いの言葉を受けている。
「レオン、レベッカ様ご結婚おめでとうございます」
「お二人ともおめでとうございます」
今日はカトリーナ様もお祝いに来てくださっていた。そしてカトリーナ様の隣には……ライナー様が優しく寄り添うように立っている。小物はお互いの色を入れており明らかに恋人同士だ。なるほど、そういうことなのか。
「おー!同期二人で来てくれたのか。ありがとう」
その親密な様子を見ても、レオンさんは特に何も感じていないようで呑気にそんなことを言っている。
「ありがとうございます。お二人もどうかお幸せになってくださいませ」
私がそう伝えると、お互い見つめ合って照れたようにはにかんだ二人がとても可愛らしかった。
「うっ……うぅ。レベッカさん、おめでとうございます」
「アリシアさん、来てくれてありがとう」
「そりゃあ来ますよ。めちゃくちゃお綺麗です」
アリシアさんも泣きながら、私に抱き着いてきた。私はとても可愛い後輩を持ったものだ。
「おめでとうございます。二人とも皆に愛されていますね。まあ、魔法省で有名なカップルですから当然といえば当然ですが」
「事務長も……ありがとうございます」
私が頭を下げると、彼はふんわりと優しく微笑んでくれた。
「お幸せに」
それだけ言って事務長は「また」と軽く手を上げてその場を去っていった。すると入れ替わりでニタニタと意味深な笑顔の団長がこちらに来るのが見えた。うん……なんだか嫌な予感がする。
「レオンおめでとう。お前……祝いとはいえ、浮かれてそんなに酒飲んで大丈夫なのか?」
「団長、俺はもう大人ですから大丈夫です」
レオンさんは何でもない、という風にプイッと顔を背けながらグイッとグラスの酒を飲み干した。
「ほお。流石……男だねえ」
バシバシと彼の肩を叩きながら、ゲラゲラと笑っていた。
「本物の大人で大先輩の俺から、大事なこと教えてやるよ」
そう言ってレオンさんの耳の近くで、団長はボソボソと何かを囁いた。するとレオンさんは真っ赤になったと思ったら、すぐに真っ青になった。
――なに、あの百面相は。
絶対に碌でもないことを教えたに違いない。私がギロリと睨むと、団長はくすりと笑った。
「ど、どうすればいいんですか!?」
レオンさんは団長の肩をガクガクと揺らしながら必死にそんなことを言っている。
「さあ?まあ、若いから大丈夫なんじゃねぇの?自分を信じろ」
カカカ、と笑って「健闘を祈る」とレオンさんに向けて色っぽくウィンクをした後に「レベッカ嬢もおめでとう。こいつのことよろしく」と言ってヒラヒラと手を振って去っていった。
横ではグビグビと勢いよく水を飲むレオンさんがいて、私は首を傾げた。
「レオンさん、それ水ですよ?お酒取ってきますか?」
「い、い、い、いりません!あー……ちょっと酔ってしまったみたいで」
「大丈夫ですか?気持ち悪い時は言ってくださいね」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
それから披露宴が終わるまでレオンさんは一切お酒を飲まなくなかった。ちなみにザルの私は、グビグビとお酒を嗜んでいたがもちろん酔っていない。
若干の疑問を感じながらも、私達は来てくれた皆にお礼を言って新居に帰ることになった。
その時、晴天の青空にいきなり真っ赤な翼の鳥が現れた。あれは……不死鳥!
【お前達、やっと番になったんだな】
「わざわざ来てくれたの?あの時はありがとうございました。あなたのおかげで……私達は幸せです」
「俺にも火の魔法を返してくれてありがとうございました!」
【くっくっく、レオンの緩みきった面白い顔を見に来ただけだ】
「面白いって……!そりゃ緩みっぱなしにもなるでしょ。大好きな人との結婚式なんだから」
レオンさんはムッと唇を尖らせて拗ねている。フェニックスは、そんな彼を見てなんだか楽しそうだ。
【お前達人間の寿命は短い。限りある人生を後悔なく生きろ】
「はい。本当にありがとう」
【お前らの様子をたまに確認しに来よう。今日は祝いとしてあえて現れてやったのだ。人間達が作ったただの迷信だが、私を一目見たものは幸せになれるそうだからな】
バッサバッサと羽音を立てて飛び立つ姿は、私達の結婚式の参列者達も目撃していた。あえて皆に隠さずに姿を見せてくれたようだ。
「すごい、本物の不死鳥」
「初めて見た」
「幸せの象徴っていうよね。結婚式にこんなことがあるなんて……奇跡だわ」
わーわーと周囲が騒がしくなる。最後の大物すぎるゲストのおかげで、私達の結婚式はずっと語り継がれるくらい有名なものになった。
私達はお互いを見つめて、不死鳥が来てくれたことを感謝した。
2
お気に入りに追加
400
あなたにおすすめの小説
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる